第13話 純白の竜騎士《ドラグナー》(2)
誤字や脱字などがあったらコメント等で報告していただけたら幸いです。
結果として私の願いは届かなかったらしい。
目を覚ますと自分の部屋だったという訳でもなく私の顔はゲームプレイヤーのキラの顔のままだった。
ついでに服は制服から外国映画などで見たことあるパジャマに着せ替えられていた。
私はこれからどうなるんだろう?そんな事をベランダで考えているとノック音が聞こえた。
私はノック音に返答する。
「どうぞ」
「失礼します」
ドアを開けて入ってきたのはリリーシャさんだった。
「ご気分はいかがですか?」
「さっきに比べるとだいぶ落ち着きました。でもまだ少し混乱しているみたいで・・・」
「そうですか。ミルクティーでもいかがですか?落ち着きますよ」
「ありがとうございます。いただきます」
私がそう返事をするとリリーシャさんはミルクティーを淹れてくれた。
「懐かしいですね」
何かを思い出したようにリリーシャさんが語りだした。
「ルシファー様とキラノ様の魔道の稽古が終わるとよくミルクティーをお作りさせていただいていました」
「魔道ですか?」
「はい。魔法のお稽古や魔法陣の描き方、魔法の歴史や魔法具の使い方などよく先代様に教わっていらっしゃれました。そこの戸棚に当時の教科書等がありますよ」
リリーシャさんは戸棚から何冊かの分厚い本を取り出してきた。
「この魔導書を教科書にされて、先代様は魔道を教えていらっしゃれました」
リリーシャさんは私に魔導書をみせてきた。
すごい。どのページも走り書きであるがメモがびっしり書いてある。
「何か思い出せたでしょうか?」
「いえ、すみません。何も思い出せないみたいです」
「そうですか。まぁそう簡単には思いだせませんよね」
リリーシャさんは苦笑いしながら言った。
「その、なんかごめんなさい」
反射的に私は謝った。
「そんなことで謝らないでください。仮にもあなたは魔王様の妹ですよ。それに私の方は気にしておりませんので」
リリーシャさんは少し悲しげにそう言い部屋を去っていった。
リリーシャさんが去ったあと私は部屋にある魔導書を読んでいた。
読んでいて気付いたことは二つ。
まず、魔導書に書かれている文字は全て日本語だということ。
これにより私ははある仮設を立てた。
私たちが住んでいた世界は科学が進歩してきた世界ならこの世界には魔法があり魔法が進歩してきた世界だということ。
実際に魔導書に書かれていたのだが火を使い湯を沸かすとき、私たちならばガスや電気を使う。
だが、この世界は違う。魔法具に魔力を流し魔法具で自分の魔力を火に変える。
つまり、科学が進歩しなくても魔力があればこちらの世界の生きていける。
道理で科学技術の事がどこにも載っていない訳だ。
そしてもう一つは、今更なんだがこの世界の言語は日本語だということ。
ほんと今更だよ。なんで魔王に言葉が通じることに気付かなかったのだろう。
以上のことから(まぁ仮説も含まれての話だが)
ここは私の世界の並列世界。
オカルト的にいうとパラレルワールドと呼ばれる空間。
こればかりは、私を召還した神メフィスに聞いてみるしかないだろう。
ドドドドドッ
すごい足音を立てて部屋に入ってきたのはルシファーさんだ。
「キラノ!!目を覚ましたのかい!?」
すごいテンションだ。
「ええまぁ」
私は返事をした時ルシファーさんは私を抱きしめた。
「ちょっ!?な」
私の言葉はそこで遮られた。
「よかった。目を覚ましてくれて」
ルシファーさんは半泣きだ。
「大丈夫ですか?」
私はつい心配になってしまい声をかける。
「ごめん。兄だからしっかりしないといけないのに。あの時のように僕の知らないところでキラノが逝ってしまうんじゃないかと思ったら・・・」
ルシファーさんはついに泣き出した。
私の目には彼が魔王にはみえなかっった。
私のイメージしていた魔王とはRPGゲームなんかで見る絶対的に強く、冷徹な存在だった。
だが私は彼が強そうにも冷たそうにも見えなかった。
むしろ、逆だ。
彼は弱い、そして優しい。すごく脆い存在なんだ。
だから、自分以外の人に涙を流すことができる。
「心配しなくても私はどこにも行きませんよ。だから心配しないでください兄さん」
私はルシファーさんを優しくでも力強く抱きしめた。
20分くらい後だろうかルシファーさんがようやく離してくれた。
その際に「キラノ、さっき言ったことは約束だよ」と私の耳元で呟いていたが彼は私のことを妹として見ているから仕方ないだろう。
「ねえ、キラノお腹空いてないかい?」
そういえば朝から何も食べていなかった。
「はい、とても空いています。ルシファーさん」
「あれ、兄さんとは呼んでくれないのかい?」
あの時はつい乗りで言ってしまっただけだ。思いだすだけで軽く死ねる。
「何のことでしょうかルシファーさん?」
「恥ずかしがらなくていいよ。キラノ、僕たちは兄妹なんだからね」
無邪気な笑顔でそう言う。でももう言うもんか。
「意味が分かりません。それよりも早く何か食べに行きましょうよ。私もうお腹がペコペコで」
「それもそうだね。ここの食べ物は新鮮さと安さが売りだからね。わざわざ朝ご飯をここで食べに来てくれる魔将もいるんだよ。あ、味は保証できるから安心してね」
「まぁそれはとても楽しみです」
私たちは魔王城にある食堂へ駆けていった。
次の話から漆黒に戻ります。