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カチコチカチコチカチコチカチコチ

リンゴーンリンゴーンリンゴーンリンゴーンリンゴーン

隠し扉の前で、丁度五時の鐘が鳴る。

部屋に入れば、街の喧騒も、時計の音すら聞こえ無くなった。

靴を脱ぎ、部屋履を履き荷物を台に置く。

両親に心の中でただいまを告げると、室内着にガサゴソ着替え。

買い足した物をしまっていく。

物悲しい程に静かな作業には、初めのうちこそ泣きべそかきながら。

もそもそと気怠げに。

生きる為だけの作業として無理矢理動いていたが、流石にもう慣れた。

ただただ惰性にならないように、死んだ両親に顔向け出来無い事をし無い事だけは気を付けて居たが。

何せこの時計塔管理以外やる事が余りない。

まるで自分もカラクリの一部みたいなこの状況には、何とも言え無い気分になるが。

そこは考え無い事にして居る。

多分、抗うより諦める事に慣れ過ぎたのだ。

思考を振り切るように、手洗いうがいをし。

台所で明日の朝ご飯の下拵えと、夕食の支度を始める。

それと、タンスの上の小さなファーブラの神々の人形(フィギュア)の飾り棚にお供えを置く。

異世界の日本で言う雛壇と神棚と仏壇のような物だ、と亡き父が言っていた。

神々や、亡き家族などをセットで敬い祀るのだ。

金持ちになると、飾り棚も人形もかなり豪華な物になるのだが。

我が家は庶民なので、一般的な物が設置してあった。

因みに人形は、異世界からの迷い人がもたらした技術で、布製や木製や金属製や陶器製など、様々な物が有る。

流石に異世界のプラスチックと言う物は再現できなかったそうだ。

ただ、その異世界の迷い人は、相当手先が器用だったそうで。

編みぐるみや粘土で基礎は簡単に作り上げてしまう為。

魔法で型取りなどして、技術を沢山広めたそうだ。

うん、さっぱり分かりません。

父も前世はオタクだったとかで、人形には喜んでました。

こっそり母の人形を作って、プロポーズしたらしいけれど。

母はプロポーズは受けたけれど、満面の笑顔でバッキバキに人形粉砕したそうです。

…多分、あまり出来がよろしく無かったのかと推察します。

そんな、部屋の備品は思い出だらけなので、普段は考え無い事にしてます。

ちょっと落ち込んだ時に、とどめになるのがたまにきずですけどね。

溜息一つ吐いて、スープと野菜の漬物と、焼いたパンに、お手製のハムを添えてプレート皿に乗せる。

それをテーブルに置いて、ふと私のベッドの方を向いた。

「だ…れ?」

見知らぬ青年が、ベッドに腰掛けてこちらをジッと眺めて居たのだ。

何時の間に居たのか、何時からそこに佇んで居たのか皆目検討もつかない。

硬直して、クレアは動けなくなった。

深淵の様な漆黒の瞳と髪の毛。

年の頃は16.7位。

背丈は175位。

細身の身体に魔導師みたいな真黒なマントと法衣を身に纏う。

何よりその青年は、異国風だかとても美しい顔立ちをして居た。

そう、不思議な懐かしさと美しさで、ぼうっと見惚れてしまった。

「不躾な訪問で申し訳ない。

パニマ神からの指示で、俺はこちらに飛ばされてきたんだ。

これからこの地が戦に巻き込まれる。

速やかにこの塔を破壊し、パニマ神の加護下にある者の地へと君を避難させなくてはなら無いのだ。」

「え?ここが…戦地?

と言うか、何で塔を破壊?」

混乱するクレアの手をそっと掴むと、青年は言葉を続ける。

「人族史上主義者達、彼らが巻き起こす戦乱にこの地が確定した。

かれらのトップは異世界からの転生集団。

しかも、神殺しを歌いこの世界を掌握しようとして居る。

時計塔の技術を、彼らに渡せば兵器として利用するだろう。

時計塔の管理のスキルを持つ君は、確実に狙われる。」

「…父の、父のようにですか?」

「そうだ、彼は抵抗し殺された。

君は幼いが女性だ、最悪心を消され遺伝の為に子供を作る道具にされかね無い。

パニマ神様は、それを心配なさって俺を派遣したんだ。

折角異世界から預かった魂たちを、これ以上好きにさせ無い為にね。

まあ、俺達の世界とは又違った異世界転生集団らしいから。

たいした事はないんだけど。

なにせ陽動とか、数揃えて洗脳とかが上手いんだよやつら。

だからパニマ様達も、色々苦労なさってるみたいだぜ。」

そう言って、涙ぐんだ私の頭を優しく撫でてくれた。

「この異空間の部屋は、時空魔法に仕舞う。

安定した場所に時計塔を再建するから。

そこに出す事にするよ。

後は破壊するが…良いかい?」

「は、はい…あの貴方のお名前は?

私は、クレア・ホーキングと言います。」

「あー、焦ってたから自己紹介もまだだったね。

本名は、異世界人で異界渡りの時空魔導師だから色々明かせないが、俺は政宗。

とでも呼んでくれ。

心配なら君の加護神の二人に祈って確認しても構わないよ。」

「マサムネ…様ですか?」

「様はいらないよ?庶民だしね。」

「マサムネさん、よろしくお願します。」

「疑わ無いの?」

「パニマ様の加護持ちか関係者以外ここに入れないのですよ?

入れる時点で、疑い様も無いです。」

ふわっと微笑むと、マサムネさんも微笑んでくれた。

深夜、音も無く時計塔を破壊し。

まるで最初からそこに何も無かったかのように、時計塔の残骸すら残って居なかった。

そして、そのまま私を連れてマサムネさんはいずこかへと転移した。

初転移の衝撃で、身体に負荷がかかったらしく私は気絶してしまい。

翌朝、森の中でマサムネさんに抱きかかえられて目覚め、あわあわしてしまうのだが。

「うん、可愛いい寝顔だったよ?」

と、トンチンカンな答えを貰い、真っ赤になってさらにあわあわするクレアの頭を、笑いながら撫でるマサムネさんは、ちょっと意地悪だと思った。

「俺の転移は高速次元移動だから、別の異世界にも行けちゃうんだけど。

耐性無いときついの忘れてたよ。

まああれだ、船酔いみたいな物だよ。

慣れれば何とかなるさ。」

それ先に言って欲しかった。

頭がフラフラする間、マサムネさんの腕に抱かれて移動した。

歩けると主張して降ろされたら、ガッツリよろけたので今だ腕の中だ。

超恥ずかしい。

ふと、かなり遠くの空の色が赤く染まって居る事に気付く。

「夕焼け…?まだ昼前よね?」

「ああ、始まったみたいだな。」

神妙な顔で空を見上げた。

「みんな…逃げられたかな…。」

「宣戦布告は伏せられていかなったし、クレアさんの所に来る前に、念の為人族史上主義が攻めて来るっ!て言うチラシをばら撒いたんだが。

少しは逃げた連中も居たと思うが…うーん、どうかなぁ。」

「え?チラシをあのギリギリに配ったんですか?」

「うん、流石に焼け石に水だろうけど、何もしないよりはって思ってさ。」

「マサムネさんは優しいんですね。

私は自分の事ばかりで、そんな余裕も全然無くて、思い付きもしませんでした。

襲撃から少しは逃げられたらいいですね。」

ほわっとそんな事を呟くと、マサムネさんはふいっと顔を私から剃らせた。

耳がほんのり赤くなって居る。

照れたらしい。

「さ、さぁ次の所に急ごう。

この大陸から離れる前に、合流して置きたい加護持ちが三人居るんだ。」

無理矢理話を切り替えたマサムネさんは、私をお姫様抱っこしたままで、先を急いだ。

動揺し過ぎです、下ろしてください。

揺れてさらに酔いそうです。

これから始まる戦乱からの逃避行は、時計塔に居た頃には想像出来無い位、とってもとっても大冒険だった。

この時、どう酔い止めの魔法を掛けようかと考える私には想像すら出来なかった。

新キャラ、政宗君登場です。

日本人なので童顔だから若く見えるけど、実は23歳です。

異界渡りの家康君の後輩ですね。

尚、政宗君は、クレアちゃんの動揺を抑える為に少しやんちゃしてます。

本来のクレアちゃんなら、もう少し狼狽えるし泣きますが今は気付いてません。

それでは又。

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