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時計塔の管理をするホーキンス一族の最後の生き残り。

少女クレアは、刻調べの歌姫として異世界ファーブラで、生きていた。


カチコチと規則正しい音が鳴る。

大掛かりな歯車を組み上げた、機械仕掛けの時調べの時計塔内部。

その一角に、小部屋がある。

いや、正しくは家が内装されているのだ。

防音設備と防音魔法で、本来地響きのように煩い時計塔の歯車の音は。

遠くの小鳥のさえずりめいて静かだった。

そこに、一人の少女が住んでいる。

天涯孤独な少女は、代々この時計塔を管理する一族に産まれた。

名前はクレア。

クレア・ホーキンス。

ホーキンス一族は創造神パニマの信託によって、選ばれた時計塔管理の一族である。

貴族ではないが、国への貢献から準貴族のような扱いの家系で、代々続いてきたのだが。

彼女の四代前辺りから、パニマ神を敬わなくなり。

時計塔管理に必要な加護持ちが減っていき。

災厄に見舞われるようになった。

彼女の両親が気づいた時にはすでに遅く。

加護のあるクレアを残し、病気や怪我や事故など。

両親と祖父祖母、加護の無かった幼い兄弟が次々と亡くなってしまった。

加護の有った父の死因は。

パニマ神を恨んでしまい。

その加護を喪失して、儚く亡くなったと噂されて居た。

クレアはいくらなんでも、パニマ神様が見限ったくらいで人が死ぬとは思えなかった。

敬虔なパニマ神信者の父は、悲しみはしても恨むような人とも思えなかったのだ。

だから、何か別の何かがあっのではないか。

今でもそう思っている。

クレア自身も、パニマ神様を恨むこともなかったからだ。

それにもう一つ、クレアには加護があった。

戦女神ヤファ様の加護で、本来の戦に関わる能力ではなく。

呪いをはじき、邪悪で邪な何かを浄化する破邪の力だ。

これによって、クレアには呪いが効かない。

本来なら、家族にも呪いが効かないはずなのだ。

だから、不審に感じられた。

作為的な、なにかを。

もう一つ追加すると、加護持ちは何らかの前世持ちだ。

ファーブラと言う異世界は、比較的新しく。

他の異世界からの魂の譲渡などをされ、そちらの魂の輪廻から外れてしまうが、特典で神々から加護を与えられる。

らしい。

何故らしいと言うと。

加護持ちの父や、一族代々の加護持ちは、こことは違う異世界の前世を覚えて居たらしいのだ。

時計塔を作れたのも、異世界の知識と言うものらしい。

だが、クレアは前世を覚えていないのだ。

父曰く。

「前世の記憶を覚醒しないまま、一生過ごす者も稀に居るから。

気にしてはいけないよ?

もしかしたら、思い出すのが辛い記憶なら、無理に覚醒しないほうが私は良いと思うけれどね。」

と頭を撫でられながら言われた。

思い出の父は、とても優しい人だった。


「あふっ、うにゅう〜ん、朝かぁ。

おはよう、パパ、ママ。」

むくっと起き上がってのびをする。

そして、ベッドの上の壁に飾っている両親の絵姿を眺め、へらりと笑い朝の挨拶をした。

歯を磨いて顔を洗うと、冷たい水で目が覚める。

「さあこの心の鍵よ、刻調べの扉を開きたまえ。」

歌うように呪文を詠唱すると、何もない空間に扉が現れる。

それは、この世界の言語ではなく、一族の元々居た地球の日本と言う異世界の言葉。

何故かクレアは、詠唱を紡ぐとき甘やかに歌う。

記憶にない異世界の音楽もBGMにしてしまう。

クレアが詠唱すると、音楽と幾重に重なる魔法陣がその身を纏う。

後に、彼女は時計塔の刻調べの歌姫と二つ名を付けられるのだが、それは少し先の話。

時計塔の上に大きな風車が風で回り。

地下水を組み上げる。

その力で大量の穀物を脱穀したり、すり潰したり出来る。

時計塔の地下の水路をうごかし、下水上水を動かしているのだ。

時計塔以外にも、大きな風車は等間隔で配置されている。

金持ちや貴族など、専用風車を庭に設置したりして居るが。

故にこの街は、魔法以外の電気と言う物が発達して居る。

電気と言う物は万能ではないので、魔法や魔石などと併用してしていた。

それも加護持ちの作り出した技術らしいが、再現が難しいのだそうだ。

ここアクアミューズは海辺に近い水上都市なので、移動手段は馬車よりも小舟が早い。

パンとチーズと野菜スープと言うシンプルな朝ごはんを食べて。

支度してから時計塔内部の点検をする。

最上階は小窓の様な扉から外に出る。

街が一望出来る大変良い景色なのだが、風に煽られそうな恐怖があると動けないだろう。

まあ、結界魔法で風も雨もここには入ら無いのだけれど。

命綱を腰に巻きつけ、手摺に掴まって針の確認。

針の裏側に通路が有って、地上からはそこは見え無い。

「世界の刻が動き出す

夢を運び恋を紡ぐ朝

青い空に流れる綿雲に

太陽が舞い踊るように登る

月は夜の帳に舞い降りて

安らぎを誘い愛の調べを奏でよう

さあ世界の刻を紡ごう

さあ世界に刻調べきざむ。」

この世界の吟遊詩人風ではなく、まるで日本のアイドルソングのような軽やかな音程で紡ぐ歌声は、刻調べの毎朝の詠唱だ。

天気の部分は、その日事に変わるが。

だいたい似たような内容である。

天気が悪いときは、バラード風だったり。

ノリノリのロック風だったりと、かなりバラエティー豊富なのだが。

その実詠唱の音楽は、スキルのひとつだ。

なので、クレアの意志で歌っている訳ではない為、吟遊詩人のようには詠唱後に歌え無かったりする。


時の調べが九か三を指す頃に作業を終わらせるのが移動に楽だった。

時計塔の鐘がゴーンゴーンと九つ鳴って。

時計の下の仕掛け窓が開く。

オルゴールの音と、小さな人形(パペット)が愛らしく楽器を奏で、カタカタ動き出した。

耳に防音具をつけていても、流石に間近なのでかなり大音量だ。

流石に慣れたが、幼い頃は驚いて泣いたものだった。

動きが止まった後、音の軋みや仕掛け部分の故障を点検してクレアは部屋へ戻った。

そして、仕事着から普段着に着替えて、街へと出かけるのだ。

専用の小舟を慣れた手付きで操り。

目当ての商店街の裏側に有る船着場に小舟を停める。

そこから階段を上がって、商店街へと入って行く。

食料品や日用品で、足ら無いものを買い足しに足を運ぶのは。

週に一度位だ。

大食いでも無いし。

贅沢をしなければ。

両親の遺産金と時計塔管理の国からのお給料で、クレアは生活に困る事はなかった。

大量に日持ちする物を仕入れて置けば。

一人だけだし、最悪一ヶ月位は凌げるかもしれ無い。

まあ、年頃なので高価なアクセサリーや甘い物などは確かに魅力的なのだが。

流石に滅多に買わない。

気まぐれに手元の材料で、簡単なクッキーやホットケーキを作るくらいだろうか?

噂を間に受けたのか、率先して関わりたがる同年代は居無いから。

オシャレをする必要も無かった。

うん、世知辛い。

「クレアちゃん、これ内緒ね。」

そう言って八百屋のおばさんが、買った野菜にオマケとして、旬の高い果物を一つ付けてくれた。

「あ、ありがとうございます。」

はにかんで笑うと、頭を撫でられる。

商店街のおばさんやおじさん達は、何故か私に好意的だ。

こうやって、オマケの物をつけてくれたり。

時々頭を撫でられる。

と言うか、両親の死んだ私をいつも気遣ってくれるのだ。

本当有難い方々です。


不意に視線を感じる。

嫌悪とも同情とも違う、何処か不思議な感覚だった。

視線を感じた方を向くと、身なりの良さそうな青年が、ジッと此方を眺めて居た。

私が気付いたタイミングで視線を外し、街へと消えて行った。

「何?」

首を捻る。

「どうしたんだいクレアちゃん?」

「いや、何か知らない人がこっちを見ていた様な気がして、気のせい…かな?」

するとおばさんは、何か思い出した様に言い出した。

「碧い髪の身分の高そうなカッコいいあんちゃんが、時計塔の話を聞いてたね。」

「え?そうなんですか?」

「時計塔の怪異は、もう起こって居ないか?って言ってたんだよ。」

「か、怪異?」

「そっさね、そんで、あたしゃ生き残った娘さんは元気にしとるよって言ったらさ。

あのあんちゃん、凄く安心したように微笑んだのさ。

知り合いが心配してクレアちゃんの所にでも来てたのかと思ったけど、違ったんかね?」

「さぁ?少なくても、同年代で知り合い居ないから…。」

私が表情を曇らせると、おばさんは慌てた。

同年代の子供達の、クレアへの腫れ物扱いを思い出したのだろう。

ごめんねと謝るおばさんに誤魔化し笑いして、その場を後にした。

「誰なんだろ?」

小さく呟いても、思いつかなかったので、クレアは考えるのをやめた。

そのまま小舟に乗り、時計塔に戻る。

無詠唱で何も扉のない時計塔の裏口から、壁抜けのように入る。

そこは一族直通で、もしもクレアに掴まったとしても。

クレアの許可無くば、弾かれて中には入れないだろう。

又異世界ファーブラのお話です。

時系列的には、ラ波動と似たような時期です。

クレアちゃんは、転生組特有の加護持ちではあるのですが。

他の異世界転生組とは違い、前世の記憶が今の所無いです。

彼女の詠唱のイメージは、歯車みたいなエフェクト魔法陣体に巻き付け、歌って詠唱。

急に歌う

アイドル魔法少女みたい感じですかね。

魔法少女なので、増える予定です。

誰が増えるんですかね?

パニマ神様は知ってそうデスネ(棒)

それでは又

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