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『皇国再興:宇宙人と茶の湯編』

 俺が始祖の船に到着して二日が経過した。

 一日目はほとんどベッドの中にいて、ロランがむいたリンゴに似た果実をかじっていた。

 その間に、ロランに続き、十人あまりが時間凍結から目覚めた。技術者や軍人、役人など、このソル星系にネロスの植民地建設をするにあたり、必要とされる人々だ。小マゼランに聞いたところ、時空凍結を行うには、さほどのエネルギー消費がないが、解除には膨大なエネルギーを必要とするとのこと。

 始祖の船は現在、三億人を収容するための空間の拡張維持にエネルギーのほとんどを費やしているので、この十人を目覚めさせるだけで、ずいぶん無理をしているらしい。

 二日目は、この十人の名前や経歴など、簡単なプロフィールについて大マゼランから説明を受けることにした。

「ヨネス・カービー。三十三才。一万五千年続く老舗建設会社カービー・スターホームの若社長です。あの日は軌道上の建設現場にいたところ、ワールのクーデターに遭遇し、始祖の船に回収されました」

「家族は?」

「基礎学校に通っていた息子さんが始祖の船に転送されています。離婚した奥さんや、ご両親をはじめとする他の家族は消息不明です」

「仕事熱心なタイプのようだな。一年の大半を建設現場で過ごしている」

「職人肌ですね。そのせいで奥さんとは不仲になって離婚しています」

「ん……時空凍結解除で選ばれたのは、月面地下の再生センターを設計できるスキルと、組織運営の経験を買ってのことか」

 ネロス語で書かれた資料に目を通していると、脳の中が過熱する感覚があった。今の俺は、ある程度のネロス語を理解できるようになっている。もちろん、一ヶ月でネロス語をマスターしたわけではなく、俺の脳内にネロス語を無理くりにインストールしたのだ。

 たとえば、今の『離婚』も、ネロス語的に正しい言い回しをすると『結婚の契約期間の更新を打ち切った』となる。五万年の歴史を持つ古い星間国家の言語は、日本語にはそもそもない単語や、地球とはまったく違う由来の故事成語が多く含まれている。

 それらを正しく理解するには、思考そのものを日本語にコンバートせず、ネロス語で考えられるようにする必要がある。しかし、そこまで脳に手を加えてしまうと、一星銀河という人格をねじ曲げる危険があった。なので、食い違う部分は自分で考え、不正確でも自分なりに落としどころを見つけつつ読み進めるしかない。

「私がまとめた方が早いし正確ですよ、一星銀河」

「鍛錬も兼ねてるからね。自分でやれる限りは、やってみるさ。ダメだったら、その時にはお願いするよ」

 俺は凡人なので、自分で思考を重ねて咀嚼していない情報を使いこなせるほど器用な脳みそはしていない。もし、咀嚼しても使いこなせないなら丸投げするだけだ。

 十人のプロフィールを把握した次は、個別に面談である。

「メシエ様が来られてからでよろしいのでは?」

 大マゼランはイヤそうな顔をしたが、俺が頼むとため息をついて言う通りにしてくれた。

「それと、小マゼランを呼んでくれ。用意してもらいたいものがある」


 茶筅を手に、ロランが首をひねる。

「銀河兄様、これはどういうモノなんですか?」

「茶道具だ。こっちの粉末になった抹茶を茶碗に入れてかき混ぜる時に使う」

「へー」

 始祖の船の庭園の一角に、小マゼランに頼んで作ってもらったのがこの茶室だ。

 三畳に満たない狭い部屋の中で、俺とロランは向き合っていた。

「これって、地球のお茶会なんですよね」

「地球というか、日本だな」

 こういう形でネロス人と面談しようとした理由はふたつあった。

 ひとつは、俺が簡単ではあるが、茶の作法を知っているため。

 大学時代の話である。同じアパートの住人にして留学生のマンマ・バンバ氏が、日本の戦国時代に――正しくは、戦国時代を扱ったゲームにドはまりした。そして、戦国時代の風習について、俺やチョー先輩に根掘り葉掘り聞いてきたのである。

 その中に、戦国時代に流行した茶の湯があった。俺が茶の作法を学んだのも、その時だ。

 ――茶道を教えてくれた卯積うづみ女史が俺やチョー先輩に衆道を再現させようとしたのは辟易したがな。あの人、今も立派に腐ってるんだろうなー。残念ながら俺はおっぱい正義党の党員で、衆道とは無縁な人生なのだが。

「銀河兄様……あの、ボク足が……」

「おっといかん。正座は無理にしなくていいから」

 俺はモジモジしているロランに、足を崩させてやろうと手を伸ばした。

「兄様、ダメ! 触っちゃダメっ!」

「我慢してても、いいことはないぞ。ほら」

「ああっ! 兄様っ! ダメっ!」

 ロランの痺れた足を動かして崩すと、顔を真っ赤にして涙目になったロランが――(フヒヒヒヒヒー!)――俺にぎゅっ、としがみついて悲鳴をあげた。

「……?」

 どこからともなく、卯積女史の声が聞こえた気がした。幻聴だろうか。

「うう……ダメって言ったのに、銀河兄様の意地悪……」

「すまない。慣れない人間に正座は難しい。あらかじめ言っておくべきだったな」

「むー」

 横座りになったロランが、恨みがましい目を俺に向ける。俺はロランの頭を撫でてやり、自分の分の茶菓子を差し出した。

 甘く透明感のある和菓子は、見た目も含めて姉のメシエお気に入りの品で、ロランも気に入ったようだ。

 湯を沸かし、茶を点てて、ふるまう。

 ロランは、茶室や俺の仕草を興味深そうに見てあれこれと聞いてきた。俺も、卯積女史やチョー先輩からの受け売りの知識を披露する。

 これが、ネロス人の面談で茶室を利用する理由のふたつめである。

 茶室というのは、ネロス人にとって未知の空間だ。なぜこんな狭い場所で茶会をするのか。茶器や作法にはどういう意味があるのか。未知のものに好奇心と警戒心を刺激されるのは地球人もネロス人も同じだ。

 そして、茶室に入ったゲストは、茶をふるまうためあれこれ準備をする亭主ホストを観察する時間がある。

 そう――

 茶の湯を利用したのは、俺に興味を持ってもらって、観察してもらうためだ。

 この俺、一星銀河という男は、ごく平凡な日本人で地球人である。人間的な魅力はたいしてない。普通に挨拶したのでは、相手の記憶にはほとんど残らないだろう。

 だから、茶の湯を利用して強制的に好奇心を呼び起こし、茶をふるまう間を利用して、俺という人間を観察してもらうのだ。そうすれば、狭い空間や、苦い茶と甘い菓子という五感を刺激する情報と結びついて、一星銀河という男が、相手の記憶に刻まれる。

 今後、俺は地球代官という形で、太陽系にネロス植民地を建設する彼らと接することになる。仕事がうまくいっている間は、互いの肩書きだけで付き合って問題ない。

 しかし、トラブルが起きればそうはいかない。ある程度、突っ込んだ話をして利害や問題点をすりあわせるためには、相手という人間を理解しておくか、そのとっかかりが必要になる。何もなければ、勝手に相手のことを、自分の想像で補って「あいつはこういう人間だから、こんな風に反応し、行動するだろう」と考える。

 その点で、俺という人間の立場は、たいへんよろしくない。

 目覚めたネロス人の立場で考えてみよう。

 突然のクーデターで故郷を失って目覚めてみれば、家族や知人のほとんどが消息不明で、おそらく死んでいて、辺境の未開惑星で何もないところからスタートだ。

 これを不幸と言わずして、何という。俺が同じ立場なら、運命を呪う。

 それでも仕事があって忙しく、順調にいっている間はいい。

 トラブルが起き、不満が募れば押し殺していた運命への呪いが吹き出てくる。

 それをぶつけるのに最適の相手は誰か?

 この場にいない、クーデターを起こしたワール人や、すでに死んでしまったネロス皇主ら政府の代表者に怒りを向けるのは難しい。

 となれば、俺だ。

 辺境の未開惑星に住む蛮族のくせに、ネロス皇家の十五才の姫を娶って地球代官になった男である。薄い本的には間違いなくゲスな悪党だし、正直、メシエにやってることを思うと、俺的にもあまり否定できない。

 俺は、ネロス人三億が怒りのはけ口にするのにもってこいの人間なのだ。

 仕事のトラブルがなかったにせよ、何かをきっかけに、俺を地球代官から追い落とそうという動きが起きるのは確実だった。

 もちろん、メシエは俺を守ろうとしてくれるだろうが、それはまずい。

 これから先、多くの困難を迎えるであろうネロス皇国にとって、メシエは希望の星だ。身内の反発から来るゴタゴタに関わらせてその輝きを曇らせることは、誰にとっても不幸になる。

 だからその手の問題を、自分で処理できるだけの力や如才なさを、俺自身が身につけておく必要がある。

 具体的には、ネロス人の中での派閥作りだ。

 派閥作りのためには、まずは人脈作りである。

 人間関係は双方向性だ。こっちだけ相手に興味を抱いてもしかたがない。相手にもこちらに興味を抱いてもらう必要がある。友人関係は、その先にある。

「銀河兄様」

 俺が、そうしたことを考えてぼんやりとしていたら、ロランが俺の太ももに手を触れてきた。

「昨日はごめんね。ポラリスにはきつく言っておいたから」

「いや、いいんだ。ポラリスは、ロランを守ろうとしただけだ。俺の方こそ、水浴びをのぞく形になってすまない」

「ううん。気にしないで」

 ロランがはにかんだ笑みを浮かべる。

 狭い茶室にふたりっきりになる利点が、心理的な距離も詰められることだ。

 俺はこの機会に、出会った時から抱いている疑問を解消することとした。

「ロラン。俺のことは好きか?」

「うん。どうして?」

 疑問というのはこれだ。

 ロランが、俺に向ける好意である。出会って一日にしては、妙に懐かれている。

 姉のメシエと出会って一日で結婚の約束を交わした俺が言うのも妙な話だが、メシエとの間には、その一日でいろいろあった。

 ロランとの間に、関係を進ませる何かあるとしたら、思いつくのはひとつだけ。

「ロラン。メシエから君の超能力については聞いている。泉で出会ったあの時、何か泡のようなイメージが広がった。あれが君の超能力か?」

 こくん、とロランがうなずく。

「未来予知だと聞いている。あの中に、俺や君がいたような気がするが……ロラン?」

 ロランが顔を伏せた。耳たぶが赤くなっていく。

 やはりそうだ。あの時にロランは何かを見て、それが俺への好意につながっている。

「えと……ボクの超能力は、厳密な意味では未来予知ではないんです。時間の流れは幾本もあり、実在しない時間の流れもボクは感知できます」

「じゃあ、あの泡になっていたイメージは、こことは違う時間の流れなのか」

「はい」

 俺は自分の胸に手を当てた。俺の中には、大量のナノマシンの素となる素材、ナノマテリアルが入っている。これは未来から来たポンコツ戦闘ドロイドから譲り受けたものだ。地球のこのあたりの時間の流れはかなり複雑になってそうだ。

「それで、違う時間の流れの俺とロランはどういう関係なんだ?」

「その……メシエ姉様と銀河兄様と同じ関係になります」

「は?」

「結婚、するんです。ボクと銀河兄様が」

「はあ?」

 どこからともなく聞こえる、卯積女史の「フヒーヒヒヒヒヒ」という腐った笑い声。

 ロランが言うには、ワールのクーデターがあったあの日、メシエでなくロランが父皇主から始祖の腕輪を継承し、地球に来る時間の分岐があるのだという。

 そこで俺と出会い、なんやかやとあって、結婚するのだそうだ。

「ううむ」

 俺が調べた限り、ネロス皇国では男同士、女同士の結婚もそう珍しくないし、科学技術が発達しているので、性転換、人工子宮などで子供を作ることにも問題はない。

 しかし、自分が目の前の少年と、となると妙な気分にはなる。

「始祖の腕輪をロランが継承すると時間の流れがそんな風になるのか……ん?」

 俺は右手を見た。

 だとすると、『目を閉じておっぱいを揉む程度の異能』はどうなるのだろう?

「ロラン、その時間の流れで俺の手は……あー、なんかエッチなことしたりするのか?」

 何をバカなことを言ってるのだ、と口にした後で反省したが、驚いたことにロランはコクン、とうなずいた。

「えと……銀河兄様の左手が……その……ボクのお尻を……」

「……マジ?」

「はい」

 右手でおっぱい、左手で尻。

 これまで自分を聖人君子だと思ったことはないが、そこまで業が深い人間だったろうか。おっぱいは自覚があるが、尻だと? 本当にそれは俺か? それとも時間の流れが違うと、おっぱい派から尻派に転向したりするのか?

 いや、始祖の腕輪が人間の業を引き出すのかもしれない。メシエでもキス魔だし。

 では、ロランは?

「ロラン、俺が左手で尻を撫でるってことは、ロランも始祖の腕輪を持っていると、何かそういう力を得るのか?」

「ボクは……あの、聞いても軽蔑しないでくださいね?」

「しない。する権利もない」

「足です」

「足? 足でどうするんだ?」

 膝枕のことかしら。それならまともだよね、と思ったのだが、現実は非情だった。

「踏んじゃうんです。ボクが足で。銀河兄様を」

「……」

 おお、神よ。

 思春期の少年には、この手の宇宙の真実ってのは早すぎやしませんかね。

 がばっ。

「ごめんなさい! ボク、帰りますっ!」

 俺の沈黙を、軽蔑と取ったのか、ロランが立ち上がって茶室を出ていこうとして――

 ずべっ。

 足が痺れていたので、つまずいた。

 倒れる先に、湯を沸かす釜があった。

 がしっ。どたんっ。

「……危なかった」

「あ……」

 抱き止めるのが間に合って良かった。

 俺は茶室に仰向けに横たわり、自分の上に乗るロランの重さを感じていた。

 小柄だから、というのもあるのだろうがメシエよりも軽い。これなら踏まれてもそう悪くはない、と思ってしまうほどに。

 いや、それは気の迷いだ。悪魔の誘惑だ。消え去れ、悪魔よ。(フヒーヒヒヒヒ!)それと少し静かにしてくれませんかね、卯積女史。

「あまり気にするな。悪いのは、自分のエネルギー補充のために、人に妙な異能をくっつける始祖の腕輪だ」

 この場にいないヤツの悪口で誤魔化す。あまりよくない手だが、ここはロランの心のケアが優先である。

「はい、銀河兄様……あの……」

 俺の胸に顔をうずめてロランが何かもごもごと言う。息があたってくすぐったい。

「どうした?」

「いえ、なんでもないです」

 その後は、ごく普通に茶会は終わった。

 ロランが帰った後、俺は茶道具の手入れをした。

 これらはチョー先輩からの借り物である。チョー先輩は、実家から祖父の了承を得て持ってきたと言っていた。

 ――たぶん、お高いんだろうなぁ。

 俺はちょっと歪んだ形が妙な風情を出している茶碗をしげしげと眺めた。

 もちろん、俺にそういう目利きの力はない。いや、この場合は目利きは必要ない。茶器を入れていた箱に書いてある達筆な書を読めれば、これがどのくらいの価値か検索して調べられる。だが、俺にはこの書が読めない。

 ――宇宙人の文字は読めるのに、母国語の文字は読めないのもおかしな話だな。

 後でチョー先輩に何と書いてあるのか聞いておこう、とメモしておく。

 いろいろとトラブルはあったが、最初にロランを選んだことで、今後の予行練習にもなった。まずは良しである。

 ふと、ロランが茶室を出て行く時の表情を思い出す。

「何か言いたそうだったな」

 まさか、卯積女史が期待するような流れだろうか、と一瞬だけ思い、いやいや、いやいや、いやいやはすたーと首をふって否定する。

 つるり。

「うぉっ、たっ、とっ」

 そのはずみで手にしていた茶碗が滑り、冷や汗をかくこととなった。


 次の日。

 茶会の準備をしようと茶室に向かった俺は、ロランと出会った。

「あ、あの、銀河兄様。お手伝い、させてください」

 昨日言い出せなかったのは、このことだったか。

「んむむ……」

 俺はうなった。

 ロランの気持ちは素直にうれしい。

 しかし、ネロス人にとっては未開人である俺が、ネロス皇家の皇子、それも直系では唯一残った男子であろうロラン皇子を使っている様子は、果たしてどう見られるか。

「ダメ、でしょうか?」

「うーん。今日は、俺が亭主としてもてなす茶会だからな。ロランがいると、どっちが亭主か客の方が迷う」

「そうですか……」

 しょぼん、とうつむくロラン。

 ちくちくと罪悪感が胸を刺す。ちょっとはフォローした方がいいかもしれない。

「まあ、ロランだと気付かなければいいんだが、そうもいかな――」

「できます!」

「は?」

「見ててくださいね」

 しゅわわっ。

 ロランの体から湯気のようなものがあがった。

「どうですか?」

 湯気が消えた時、ロランは女の子になっていた。それも外見だけ女装したというレベルではない。背が少し伸び、骨格や皮膚の下の脂肪の付き方も違っていた。

「ロラン? え? これも超能力?」

「超能力と、ナノマシンの合わせ技です。超能力で、女の子になったボクの肉体情報を読み取ってナノマシンに教えて、復元させたんです」

 背が伸びているのは、ちょっと未来から持ってきたためだとか。

 姉以上に発育しすぎた胸の部分は、シャツのボタンが弾け飛びそうだ。

「えへへ……ちょっと重いですね」

 ロランが自分の胸を下から持ち上げる。ふおお。

 俺の視線がおっぱいに吸い寄せられているのを見て、ロランがクスっと笑う。

「銀河兄様、触ってみます?」

 ――これは罠だ。デストラップだ。

 笑顔で俺を見上げるロランの顔を見て、俺は確信した。

 どういう仕掛けの罠かはわからないが、手を触れた瞬間、あたりに合図のドラが鳴り響き、関羽が飛び出してくるほどの罠である。もみもみ。

 それに、ロランはこれで変装したつもりかもしれないが、女の子になっていることをのぞけば顔も声も仕草もロラン・N・ジェネラルそのものだ。むしろ、女の子になっている分、男の子モード以上に他のネロス人には見せられない。もみもみ。

 残念だが、ここは手を触れることなく、言い含めて帰ってもらおう。もみもみ。

「ん、銀河兄様……あ……んん……もう少し弱くして……」

 吐息をもらし、ロランが体をくねらせる。

 見下ろせば、俺の両手は、しっかりとロランの、たわわなおっぱいを揉んでいた。

 メシエに比べて少し硬いが、それが弾力につながっている。甲乙つけがたい。

 ――いや、待て。そうじゃない。

 背後から、うなり声と、強烈な殺意。

「グルルルッ!」

 振り返ると、一昨日と同じように、額に一本角が生えた、でかい犬がいた。

 ポラリスだ。さすがにこれは言い訳できない。合意の上でも有罪だ。

「ダメだよ! ポラリスっ!」

 犬の角が電撃を放ち――

 俺の意識は、そこで途絶えた。


 その日の茶会は、延期となった。


次回『皇国再興:欲望のありか編』

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