メリーさん。
『もしもし、わたしメリーさん、今、羽田にいるの。』
そんな電話が竹倉 学のもとにかかってきたのは休日の朝の事だった。
メリーさんって都市伝説のあのメリーさんか?少なくとも学の知り合いにメリー何て言うやつはいない。ついでに言うと人形を買った覚えも捨てた覚えもない。スマートフォンの画面を確認すると非通知になっている。
「あの、すみません。人違いではないでしょうか?」
そう思い確認して見る。
『竹倉 学さんですよね?』
どうやら間違い電話ではないようだ。
「 はい、確かに俺が竹倉 学ですけど。『では今日中にそちらへ行きます。』えっ!?……『ピッ!』」
話聞けよ………。とりあえずジイさんに聞いてみるか親戚の可能性もあるし。
学は自室を出て居間へと向かう。
「なあ、ジイさんメリーって言う人から電話が来たんだけど………」
新聞を読んでいたジイさんは顔をあげるとズレていたメガネをかけ直す。
「メリー?はて、そんな知り合いおったかな?」
ジイさんにも心当たりはないようだ。ちょうどその時、持っていたスマートフォンが震える。画面をタップして通話を始める。
「もしもし………。」
『もしもし、わたしメリーさん。今、秋田にいるの。』
いや、まて。最初の電話で羽田にいるって言ったよな。10分も立ってねぇぞ!?
俺がツッコミを入れる前に電話は切れた。
時計の針が一時を指す頃。俺とジイさんはおそめの昼食をレストランでとっていた。注文したジンギスカン定食を食べ終え。ジイさんの運転する車に乗って帰宅する途中メリーから連絡が入る。
『もしもし、わたしメリーさん。あなたのお家の前にいるの。お腹がすいたから何か食べ物を恵んでくれると嬉しいの。』
ヤバい………忘れてた!殺されたりしないよな……?
途中で弁当を買って急いで家に向かった。
玄関の鍵はかかったままだったが家の前にはメリーさんの姿はなかった。背後を取られないように背中を壁に預けながら家中を探したが見つからない。
もしかしたらイタズラだったのかもしれない。そう思い壁から放れて自室へ向かう。ドアを開けようと手を伸ばした所で電話がかかってくる。
『もしもし、わたしメリーさん。今、あなたのーーー』
背後に気配を感じ振り向く。そこにはジイさんがいた。
脅かすなよっ!
『ーーーあなたのおじいさんの後ろにいるの。』
バカな………!?
ジイさんの背中に隠れるようにして金髪碧眼の美少女がいた。その白く小さな手に持っていたスマートフォンをリュックのポッケトにしまうとこちらに顔を向ける。
「今日から家の家族になったメリーだ。」
ジイさんがそう言うとメリーが自己紹介を始める。
「はじめましてメリーです。お義兄さん。」
あれ………?お兄さんの発音がおかしかったような?
ジイさんに目で問いかけるとどこか疲れたような顔を見せる。
「学君。この子の父親は隼人だ。」
竹倉 隼人、俺の父親の名前だった。




