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お姉ちゃん。


 話は戻って、

 時は今年の十二月。

 場所は私の部屋。

 向かいにはすっかり良いお歳を迎えた姉。


「ってか、お姉ちゃんクリスマスどっか出かけたりしないの?」


「どっか出かけたいの?」


「そうじゃなくって」


 私は親指をグッと立てて見せる。


「そういう下品なジェスチャーやめてよ」


「じゃあ男」


「彼氏って言いなさいよ」


「じゃあそれ」


「いないわよ」


「じゃあ作りなよ」


「いらないわよ」


「お姉ちゃん、いくらなんでもその気配なさ過ぎだよ。不毛だよ。不法だよ。不詳だよ。もう二十八でしょ?」


「二十七よ」


「出たよ。時空魔法」


 すぱんと頭をはたかれる。


「第一そんなこと、あんたに気遣われるようなことじゃないわよ」


「遣うよ。私とお兄ちゃんの世話してたせいで婚期逃したとか言われたら後味悪いもん」


「じゃあ、私が結婚してあんた達どうすんのよ」


「それは……まあなんとかなるよ」


「なんとかって?」


 そんなの考えたこともない……けど。


「あの日のクリスマスの約束だったら忘れていいから。お姉ちゃんは、お父さんでもお母さんでもないんだから」


「セリカたん」


「な、何急に……」


「あんたも案外かわいいこと言うわね」


「何が?」


「そんな昔のこと気にして私があんた達と一緒に住んでると思ってたの? そんなわけないじゃない。仕事も楽しいし、モデルは二人がやってくれるし、家いると楽だし、いいことずくめなのよ。それともここから私を追いだしたい?」


「そんなことないけど……」


「それに私、将来セイラにお嫁にもらってもらうし。いや、もらうのか?」


「おっと、こども110番」 


 そこでお姉ちゃんは二人の間に置かれたお盆をすっと横にずらすと、両手を広げる。


「なに?」


「おいで」


「い、いや、いいよ。お兄ちゃんじゃないんだから」


「かわいいよセリカ。ツンデレセリカ」


「べ、別にツンデレじゃ」


「いいから早く抱かせろって」


「その発言ってどうなの……?」


 仕方なくお姉ちゃんの方に少しだけにじり寄ったところで、

 私はガバッと頭を抱えこまれた。


「んー。やっぱいいわ。ナマ女児サイコー……」


「おっと、リアル110番」


 私を抱える腕に、ギュッと力がこもる。


「あんた達がもう少し大きくなって、この家を出たいって思ったらそう言って。でもね、それまではもう少しこうしてよ」


「……うん」


 久し振りに抱きしめられたお姉ちゃんの胸は、昔感じたほど大きくはなかった。

 私が大きくなったのか、お姉ちゃんのがしぼんだのか。


 ただ、その安心感は昔のままだった。


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