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18トイとリイのお父さん

やっとこさ本編再開です。

「とりあえずキミの話をまとめると、キミは今アライド学園の卒業試験を仲間と受けている真っ最中で、森で迷っていたらうちのトイとリイに出会い、流れで泊まっているってことだね?」

 ▽男の話にうなずくカザマ。

「そんでそっちはトイとリイの親父さんでいつもは出張ばかりだけど、久しぶりに休みが入ったんで家族に内緒で帰ってきた。――ちなみにお土産はおれに全部くれると」

「え、いやそんなこと言ってないよ? なんでいたって真面目な顔で言ってるの」

「キシシ、冗談っすよ、冗談。でも親父さんも運が悪いっすねー。今はみんな出かけてておれ以外誰もいないんすよ」

「そうだろうね、さっきから誰一人出てこないし」

「まぁイサノさんならもうちょいで帰ってくるんじゃないかなって感じっす。ただ買い物に行っただけだし」

「……そうか、みんな元気みたいだね」

 ▽そう言って男はほっとしたような顔で目を細める。

「……そういえば親父さんの名前は?」

「あぁ、まだ言ってなかったね。トアキって言うんだ、よろしくね、カザマくん」

「どーも」

「でも、あれだね。久しぶりに家に帰ってきて一番最初に会ったのが初めての人だなんて変な感じがするよ」

 ▽トアキのまわりに花がホワホワとちらばっているようにカザマは見える。

「(そりゃめったにないだろうなからな)……トアキさんってどれくらいぶりに帰ってきたんすか?」

「うーん、2年……いや、3年ぶりかな」

「はぁ……。大変な仕事なんすね」

「アハハ、そうでもないよ、なんていうか、その、ぼくがノロマって言うかさ」

「職場で花畑なんてあだ名でもついてるんすか?」

「えっ」

 ▽トアキは驚いたように目を見開く。

「すごいね、なんでわかったの?」

「あんたの周りに咲きまくってるからだよ」

 ▽なんて言うわけにもいかずカザマは「なんとなくっす」と笑ってごまかす。

 ▽正直なところ、カザマは困っていた。

 ▽今までこんなほわっとした癒し系の人物と関わったことがなかったのだ。

 ▽テンポがうまい具合に取ることができず油断をするとトアキの独特の雰囲気に飲まれてしまいそうになる。

「(何か……何か手はないのか!)」

 ▽心の中でイサノたちが早く帰ってくることを叫んで願っていると、カザマにふと名案が舞い降りてくる。

 ▽相手と会話をしようとするからしんどいのだ。

 ▽かと言ってカザマは無言の空気を耐えれるほどカザマは人間ができていない。

 ▽ならば相手に話させておけばいいのだ。

 ▽多分きっとおそらく確実に寝てしまうけど!

「えーと、トアキさんって……そう、この村出身なんすか?」

「え、うん。そうだね、ぼくは生まれも育ちもこの村だよ。イサノはぼくと結婚するときにこっちへ来たんだけど」

「へーじゃあトアキさんはこの村に詳しいんだろうなぁ。せっかくだし、この村の話でもなんでもいいから聞いてみたいなぁ」

 ▽カザマは誰が聞いても棒読みにしか聞こえない言い方でトアキに頼む。

 ▽しかし頭お花畑のトアキはそんなことに全く気付かない。

「え、なんでもかまわないの?」

 ▽カザマはゴマすりをしてうんうんと首を動かす。

「うーん、そうだなぁ。この村ならではのこと……。普通はこの村が産業に富んでいるってことなんだろうけど、ぼくにとっては『離れずの鐘』かなぁ」

「え?」

「あぁ、この呼び方をしているのはぼくらの世代くらいか。きみはまだ聞いたことない? 夕方くらいに鳴っているはずなんだけど……」

 ▽そうトアキに言われカザマは思い出す。

 ▽きっとトイとリイが帰らなくてはならないと言っていたあの鐘のことだ。

「それなら多分ありますよ、それ聞いてトイとリイが『帰らなきゃ~』って言ってましたけど」

 ▽カザマがそう言うとトアキはふっと安心したように笑う。

「あれはそういうもののためにあるものだから、きっとサカイも喜ぶな」

 ▽「それは誰だ?」というふうにカザマは首をかしげる。

「あぁ、サカイっていうのはぼくの古い友人でね、あそこの鐘つきをやっているんだ」

「へー」

「話は変わるけどきみたちは今日も泊まっていくんだろう?」

「え、いや、う~ん。でもトアキさんが帰ってきたんならおれらはもういらない気もするんだけど……」

「そんなことないよ。それにきみの友達が帰ってくるのは鐘がなってからだろう? ここをたつにしても昼にしたほうがいい」

「どうしてっすか?」

 ▽カザマは少し疑っているような顔で尋ねる。

 ▽トアキはまるで「夜に出てはいけない」と言っているような気がしたからだ。

「……危ないからだよ。単純にね」

 ▽しかしトアキはそんなカザマの目には全く気にしていない。

「あら」

 ▽ドアの開く音とともにイサノの驚いた声が二人の耳に入る。

「あなた……帰ってきたの?」

「そうだよ。やっと休みがとれ――」

「おかえりなさい!!」

 ▽トアキが言い終わる前にイサノがトアキに抱きつく。

「!?」

「おかえりなさい、おかえりなさい、あなた!!」

 ▽トアキに抱きつくイサノはカザマたちが会った時よりも顔色がよく、その顔は二児の大人しくきれいな母というより愛しい人にやっと会えたことを素直に喜ぶとてもかわいらしい女性のものだった。

「うん。……ただいま」

 ▽トアキも優しく微笑みイサノを抱きしめ返す。

 ▽まさに幸せオーラ全開である。

 ▽さぁ、そんな様子をまじまじと見せつけられていたカザマは日頃から他人の不幸は蜜の味以上にうまくそれがないと死んでしまうような性格だったがため一瞬にしてライフ0状態に陥ったわけなのだが、互いに夢中な2人がそんなカザマの様子に気づくはずもなく、カザマは自分の仲間(非リア充)の大切さを改めて感じ取ったのであった。


セーブ:18 カザマ トイとリイの家

ここまでご覧いただきありがとうございますm( __ __ )m

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