15トイとリイの気遣い
「あー疲れた……」
▽ナナギが布団に倒れこむ。
「なっさけねーな、ただガキと遊んだだけじゃねーか」
「ただじゃないだろ……」
「何したの……?」
『鬼ごっこ』
▽二人の声が綺麗にハモる。
「(一体何がどうなってそうなったんだろう……)」
▽三人は晩御飯を食べ終わり、イサノとルチアが用意した部屋に布団を敷き詰めゴロゴロしていた。
「あー、明日もまた走り回ることになるのかな……。ルチア、明日は絶対お前も入れよ」
「えー……」
▽ルチアは明らか嫌そうな声を出す。
「あ、そうだ……」
▽ルチアは部屋で見つけた紙のことを思い出し、ポケットから出した。
「なんだそれ? なんかボロっちい紙だな」
▽カザマが紙の感想を素直に言う。
「ん? なんか書いてあるのか?」
▽ナナギに尋ねられルチアはうなずく。
▽ルチアから紙を渡されその文を読むカザマとナナギ。
「何かの詩? 暗号っぽい気がしなくもないけど……。誰かが他の人にバレないように書いたメモか何かかな?」
「お前こんなもんどこから拾ってきたんだよ」
「この部屋……」
「この部屋ァ? てことはこの家の誰かのもんだろ、どうせここに書いてある宝ってのもきっとおかしとかなんじゃねぇの?」
「イサノさんは……自分でも子どもたちのものでもないって……」
「ふーん」
「それで……少しは子どもたちの遊び道具にならないかなって……」
「その紙がどうやって遊び道具になるんだ?」
「そうか!」
▽首をかしげるナナギと対照的にカザマはルチアの言わんとしていることを理解する。
「宝探しだなっ」
「うん……」
「宝探しって、宝はおかしとかじゃなかったのか?」
「バッカだなー。宝探しなんて探してる道中が一番楽しいんだって。宝なんぞおまけだ、おまけ。それにトイは好奇心旺盛でリイは金好きだろ? 宝なんて言葉にゃぜってー食いつくよな」
▽カザマが自信ありと言わんばかりにナナギに説明する。
「そういうもんかなぁ。ルチアもそう思ったのか?」
「……ボクはただ、動きたくないなって思って」
「デスヨネー。」
▽ナナギは自分がした質問は愚問だったと思いながら流した。
「じゃあ明日からは宝探しってことで寝るかー」
▽カザマがその場に寝転んだ。
▽次の日の朝。
『おはよー!!』
「ぐえぇ!」
▽ドアを開いたトイとリイがそのまま寝ているカザマにダイブした。
「カザマ兄ちゃんいつまで寝てるの? 早く遊ぼうよ!」
「寝坊だぞ、寝坊だぞ♪」
▽二人は朝からご機嫌なようだ。
「ちょ……。待てわかったから……起きるからとりあえずどけ……」
▽カザマが声を絞り出すようにして言う。
「おっ、カザマやっと起きたのか」
▽廊下からひょこっとナナギが顔を出す。
「ルチアももう起きてるし、お前が一番最後だぞー」
「普通引きこもりって朝起きねぇもんじゃねぇの……」
▽てっきりルチアは朝が弱いタイプだと勝手に思っていたカザマはぐちゃぐちゃの髪の頭をかく。
「おれが起きたときにはもうリビングで一人茶飲んでくつろいでたからな」
「じじいかよ!」
「ほらとりあえず起きろよ、布団片付けるからさ」
▽ナナギにそう言われカザマは立ち上がろうとするがその動きをすぐさま止める。
「どうかしたのか?」
「ちょっとタンマ」
「?」
▽そう言ってカザマはゆっくりと立ち上がろうとするが足を伸ばす体制になったときまた動きを止める。
「お兄ちゃん早く遊ぼうよー!」
▽そんなカザマにトイとリイがしびれを切らしてカザマに抱きつく。
「いってー!!」
▽カザマが悲鳴を上げる。
「……」
「……」
『……』
「別に……筋肉痛とかじゃねぇし?」
「筋肉痛かよ!!」
▽目をそらすカザマにルチアがツッこむ。
「昨日散々『自分は余裕ですよー』みたいな風に言っておきながら次の日になったら筋肉痛かよ!」
「しょうがないだろ、年には勝てねぇんだよ!!」
「お前が一番じじいだわ!! もういいや、おれイサノさんの手伝いしてくるからカザマその布団自分で片付けろよ」
「えっ、ちょ待てこの状態で一人は無理……っ」
▽カザマはナナギに手を伸ばすがナナギはさっさと下に降りてしまいその手は虚しく空を握る。
「白状物ぉー!!」
▽カザマはその場で叫ぶ。
「兄ちゃん、おれらが手伝うよ……」
「そうだよお兄ちゃん元気出して……」
「ありがと……」
▽ついにカザマは年下に哀れみの目で見られるようになった。
▽トイとリイの家一階。
「白状物ぉー!!」
▽カザマの叫びは一階にまで響き渡る。
「ナナギ……上で何があったの……」
「ただのおじいちゃんのわがままだから気にしなくていいよ」
「……はぁ」
▽ルチアはわかりもしてないけどうなずいた。
セーブ:15 ナナギ・ルチア トイとリイの家一階
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