12トイとリイの家
▽カザマたちはトイとリイの家である、小さなログハウスのドアの前に立つ。
『ただいまーっ!』
▽トイとリイはドアを開き元気よく中に入っていく。
『おじゃましまーす……』
▽カザマたちもトイとリイの後に続いて中に入った。
▽中も外と同様ログハウス調となっており、玄関から直結でリビングとなっている。
▽そのリビングにはテーブルやイス、冬には部屋を温めるために使われるであろう暖炉もあった。
▽そして、奥には二階へと続く階段が付けられている。
「お母さーん! お客さんだよー!」
▽トイが部屋の中で家全体に響かせようとしているのかと思うほどの大声で叫ぶ。
▽するとしばらくして二階からトイとリイの母であるイサノがゆっくりと階段から降りてきた。
▽体は小柄で雰囲気はとても優しそうなのだが体が弱いせいか、ほおが少しこけている。
▽長い髪はそのまま下ろし、質素なワンピースの上には少しレースのついた白い肩がけをかけていた。
『ただいま!』
▽イサノは子供たちに笑顔を向け、そして3人にも同じように笑顔を向けた。
「あ、えーと。おれナナギって言います」
▽とりあえずナナギは自己紹介をする。
「カザマでーす」
「ルチアントメウスボル――」
『ルチアです』
▽カザマとナナギが口をそろえる。
「私はこの子たちの母親でイサノと言います。あの、この子たちが何かご迷惑をおかけしませんでしたか?」
▽イサノの質問にナナギは慌てて首を振る。
「いいえ、こっちこそ2人には助けてもらって……」
「え? この子たちに?」
▽イサノは驚きの色を顔に見せる。
「そうだよ、おれたちこの兄ちゃんたちをここまで連れてきてやったんだ!」
「お兄ちゃんたち近くの森の中で道に迷ってたんだよ! ねー」
▽リイがナナギに同意を求める。
▽ナナギもそれにうなずく。
▽その隣でカザマもうなずく。
「ほんっと、誰のせいだろうなー」
「お前だよ。何他人事みたいに言ってんだ」
「そうなんですか、いえなんの自慢にもなりませんがこの子たちは村でよく皆さんにイタズラをして迷惑をかけているので……」
「(あぁ、それも事実だ)」
▽ナナギは遠い目をする。
「なぁなぁ、お母さん!」
▽トイがイサノの服をグイグイとひっぱる。
「おれたちいいことしたからお兄ちゃんたちしばらく家に泊まってってもいいよな?」
「え?」
▽トイの言葉にイサノは目を丸くして3人を見る。
「えぇっと……」
▽カザマたちはイサノから目をそらせた。
「なんだかお話が長くなりそうですね、どうぞそこのイスにでも腰を下ろしてください。トイ、リイ、あなたたちは自分の部屋に戻ってなさい」
『えぇーー』
▽2人は不満そうな声を出す。
「やだよ、おれ兄ちゃんたちと一緒にいたい」
「私も」
「いいから行きなさい。お話が終わったら出てきていいから」
▽イサノがそう優しくなだめるとトイとリイはしぶしぶうなずき二階へと上がっていった。
「すみません、じゃあくつろいでいてくださいね、私はお茶でも入れてきますから」
▽イサノはそう言ってカザマたちに少し頭を下げてから奥の部屋に行ってしまった。
▽カザマたちはなんとなくお互いの顔を見合わせて無言でイスに座る。
▽カザマとルチアが隣に座り、ナナギがカザマの前の席に座る。
▽無言。
▽なぜか誰も口を開こうとしない。
▽理由は簡単。
▽イサノに『くつろいで』と言われたからである。
▽人間というのはなぜか『○○しといてくださいね』と言われるほどその『○○』がやりにくくなってしまう生き物なのだ。
▽しかし会話の手段が全く尽きてしまったわけじゃない。
▽ナナギはリュックサックの中から紙とペンを取り出し、紙の上にペンを走らせる。
【とりあえず優しそうな人でよかったな】
「……」
▽その文を読んだカザマはナナギからペンと紙を受け取り紙上で返事をする。
【そうだな、それよりもさ】
▽そこでカザマはナナギに紙とペンを返す。
【それよりも?】
▽ナナギが首をかしげながら再びカザマに渡す。
【お前字汚いな】
▽ナナギが有無も言わさずテーブルの下でカザマの弁慶の泣き所を蹴る。
▽そして無言で苦しむカザマから紙をペンを奪い凄まじい勢いで殴り書きをする。
【うるっせぇ! お前だって女の子みたいな丸文字書いてるじゃねぇか!!】
▽それを見たカザマが今度はナナギから奪い取る。
【はぁぁああ? 全然ですけど? よくみんなに『らしくない字書くね』って言われるだけですけど!?】
【みんなに女の子みたいって思われてんじゃねーか!!】
▽それからナナギはさらに文字を書き今度はルチアに見せる。
【ルチアもなんか言ってやれよ!!】
▽そう書いてナナギはルチアに押し付け半分で紙とペンを渡す。
▽その渡された側であるルチアは少し悩んでからペンを動かした。
【どうでもいいと思う……】
『達筆ーーーーーーーー!!!!』
▽カザマとナナギは声を上げる。
「え、何? なんでお前そんな字ぃきれぇなんだよ!?」
「そうかな……?」
「え、自分が字書くの綺麗って今まで気づいてなかったのか?」
▽ナナギの質問にルチアはうなずく。
「あぁ、家にいた間暇でノートにずっと文字を書き続けてたからかな……」
「え、引きこもってまでそんなくだらないことしてたのか?」
「お待たせしました」
▽部屋にイサノが戻ってくる。
「あ、すみません」
▽ナナギが頭を下げる。
「今、こんなものしかなくて……ごめんなさいね」
▽イサノが手に持っていたおぼんをテーブルに置く。
▽そのおぼんの上には3人分のお茶とクッキーが乗せられていた。
「あぁいえ、ほんとお気遣いなくってお前らも少しは遠慮しろよ!」
▽遠慮するナナギの目の前でさっそくクッキーに手をのばすカザマとルチア。
「は? せっかく出してもらったんだから食べなきゃもったいねーだろうが」
▽カザマの言葉に隣でルチアがうんうんとうなずく。
「どうぞ召し上がってください。それよりも……それはなんですか?」
▽イサノは散々な筆談会話が書かれた紙に目を向ける。
「あぁあああ、いえ、なんでもないんです、気にしないでください!」
▽ナナギは慌てて紙を隠しイサノに引きつった笑顔を向ける。
「(そこまで隠すぐらい自分の字を気にしてるなら書かなきゃいいのに……)」
▽とルチアは思いながらも口には出さず代わりにクッキーを中に入れた。
セーブ:12 カザマ・ナナギ・ルチア トイとリイの家の中
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