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18〜分かるんだな!?〜

ちょっと短め……申し訳ない(;;)

 俺と七瀬が言葉を失ったまま、壁掛け時計の秒針だけがリズムを崩さず音を立てる。きっとこの音も二人にとってはごく僅かな音なのだろうが……今はそんなことどうでもいい。

 問題なのは、一連の流れから察するに仲島は『俺の言葉を理解している』可能性があることだ。

 思えば、仲島の俺が呟いた事柄を的確に応答していた。エクレールの件に然り、七瀬に襲い掛かったときの警告に然り。


「る、流花ちゃん……私には何を言ってるのかさっぱり――」

「だーかーら、このワンコは仁かって聞いてるのさ。……って、質問する相手を間違えたか。

 おいジン、お前は仁なのか?」


 動揺する七瀬を尻目に、迫真の表情で俺を見つめてくる仲島。その様子はまるで……いや、どう見ても怒っているような。

 あまりの威勢にたじろいだものの、よくよく考えたらこれは七瀬と意思疎通するまたとないチャンスではないか。意を決した俺は静かに口を開く。


「くぅ……(あぁ……俺は乾仁だ)」

「……その証拠は?」

「くぅ~、わんっ!(七瀬の恥ずかしい過去を知ってる……って言ったら?)」

「そうか」


 短く返事をした仲島は、小さく息を吐くと共に思案顔になる。七瀬の死角になっているものの、俺から半分見える横顔は何かを企んでいるような表情だ。

 事の成り行きを固唾を呑んで見守っていると、ゆっくり立ち上がった仲島は七瀬の方へと向き直る。

 さぁ……どうする、仲島?


「……すまん、お騒がせしたわ。やっぱ私の勘違い。

 さっきまでの出来事はすっぱり忘れろ……さもなくばまた揉むぞEカップ」

「……うぅ」


 仲島はそう言うと、溜息をつきながら手をワキワキと動かす。その様子を見ていた七瀬は表情を引きつらせながら、いそいそと手に持っていたサマーセーターを着た。そういえば着替えの途中だったっけ。

 しかし……七瀬ってそんなに胸大きかったんだ。Eカップって――って、今はそんなことどうでもいいだろうが!

 本題から逸れまくる己の思考に叱咤しながら、改めて俺は現在の問題点を浮き彫りにする。

 まず初めに、『仲島は本当に俺の言葉を理解しているのか』という疑問が浮かび上がった。

 先ほどの流れを見ても分かるとおり、俺と仲島の会話はきちんと成立している。しかし、七瀬には俺が『乾仁』であることを伝えなかった。

 それは俺の言葉を理解出来なかったからか、はたまた理解しているもののあえて嘘をついたのか。

 そうして浮かび上がる次なる疑問こそ、『何故仲島は俺の正体を隠したのか』だ。


「私、なんでか分かんないけど昔から犬の言葉が分かるんだ。って、七瀬知ってるよね?」

「そういえばそんな事あったかもだけど――」

「ハイ質問しゅーりょー! それ以上蒸し返したら夜這いするぞ?」

「う……何でもないよ、何でも」


 女子二人の姦しいやり取りをぼーっと眺めながら、俺は七瀬に笑顔を向ける仲島に目を向けた。

 彼女の腹の内は分からない、だが現時点で頼りになる存在であることは偽らざる事実。ならばどうにかして、彼女の真意を聞きださねば。

 半ば諦めていた人間との意思疎通に、一縷の希望として現れた仲島。このチャンス、逃したらこの世に舞い戻ってきた意味がなくなってしまう。

 変な意味ではないが……今晩は少ーし付き合ってもらうぜ?


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