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ノロトキ!  作者: 汐多硫黄
第十四戒 「魔道。焔の咲く丘」
98/107

14-5


「おっ! さっすが巫女! その血はやっぱり伊達じゃないよね~。こればっかりは努力や鍛錬じゃどーにもならないからさ、これって立派な才能だよ。はい偉い偉い」

「それって褒められているのかしら、それともけなされているのかしら… まぁいいわ。サイユー、どうやら出番みたいよ。って、サイユー! いつまで寝ているつもりなのかしら!? いい加減起きなさい、このお間抜けちゃん! under7の抜刀準備よ!!」

『アー、アー、キコエネー。ナニモキコエネー。ヤレヤレ、オレニハアンミンスルケンリモネーノカヨッ』

「そうね。サイユーはこのカエデちゃんに叩き起こされ続ける運命なのかもしれないわね」

『ヒデージンセイダ、ゼッ!』

 そんな棄て台詞を履きつつ、暫しの間ぷるぷると震えた後、件の鞘はその身からカエデの愛刀under7を吐き出す。

「ふん。鞘なら鞘らしく最初からそうやって素直に従っていれば良いのよ、うん」

 ごほん。咳払いをし、妖刀を構え、改めて炎の祭壇の前にて静かに呼吸を整えるカエデ。

「もうどうなっても知らないんだから。それじゃ、行くわよ… 《居合い黒七閃》!」


 彼女の黒刀から居合い抜きの如く高速で放たれる7連の太刀筋は、件の祭壇をその噴水ごと7つの断片へと粉砕する。

 町民達の憩いの場、町の平和の象徴。そのシンボルであった噴水の姿は、もはや、見る影も無い。


「ぶらぼぉ~、おおぶらぼぉ~。うんうん、相変わらず良い切れ味だよ。パンプキンパイを切り分けるには便利そうな技だNE♪」

「馬鹿にしたわよね、今、完全に馬鹿にしたわよね!?」

「さーってと。こっからは天才魔法使いこと、カンナさんの出番ですよーってね。はーいはい、シロウサちんと鞘ちんは危ないから後ろに下がっててね」

「は? はぁ? はぁ~!? 年増ちゃん、あなた。まさか一人でやるつもり?」


 砕かれた祭壇と捧げられた供物とが相互に反応し、やがて、彼女達の周囲に蒼色の炎の柱が燻り始める。


「当然だよ、言いだしっぺだし。責任は取るよ。それが魔女の矜持ってもんさ… あっ、やべぇ、自分で魔女って言っちった」

「大概にしておきなさいよ、このお馬鹿ちゃん! そして思い上がりも甚だしい! 一人で勝てると本気でそう思っているの?」


 ごうごうと次々立ち昇る五本の蒼炎の焔は、やがて一本へと収束し… 渦巻き、徐々に巨影を形成してゆく。


「おふこーす。それに私は死なないよ。セツリと再び巡り合うまでは、セツリをこの手に収めるまでは、私、絶対に、ぜーーーったいに死なないから。にゃはは」


 だからこそ。 ― その時まで、きっと私を護ってね、ベル ―


 そう誰に唱えるでもなく、胸に手を当て静かに呟いたカンナは、懐から杖を取り出し。腕を組む。


「さっ。幽霊以外なら、精霊でも悪魔でもどんとこいってんだ!!!」

「………。はぁ、ったく。本当に仕方のない人ね。良い? 危ないと思ったらすぐに割って入るから。一先ずは、その根拠の無い自信に免じてお任せしますわ、年増ちゃん」

 そう言って彼女から適度に距離を置き、遠巻きから死合を見守ることにしたカエデ。1対1の対人戦ならいざしらず、相手は得体の知れぬ悪魔染みた精霊の類。総合的な戦闘力殲滅力では、今のカンナの魔力に、自分は遠く及ばない。認めたくは無いものの、そう心のどこかで理解してしまっている自分に自己嫌悪を感じながらも、カエデは、腰の鞘をぎゅっと握り締める。

 そして、そんなカエデに対し、最も身近な人物が… 否、最も身近な鞘が意外な事を語りかける。

『カエデ。イマカラメノマエデオコルセントウ。ヨーク、キオクニキザンデオクトイイ』

「えっ? サイユー?」



 火炎、紅炎、蒼炎、光炎、迦楼羅炎。

 立ち昇る五柱の火柱の中から、陽炎の揺らめきと共に姿を現すは… 異形の悪魔。


 右手には剣状の大勺。左手には大槌。黒き翼と漆黒の大角を携え、その全身から紅蓮の炎を燻らせし巨鬼。


 炎の理から生まれし炎魔。ヴァル・ロッグの登場である。



END

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