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ノロトキ!  作者: 汐多硫黄
第十二戒 「追憶。怪物少女の日記帳」
86/107

12-7

 DATE:† 曇り。

 世界が混乱してる。

 石化、星の無い空、空飛ぶ暗黒。

 まだ限られた一部の地域だけの現象だけど。皆おびえてる。

 「アラヤ」が言うには、あのお節介解呪師がこの件に関与してるとか。

 それってつまり… ボクのせい?

 やっぱり、あの場で殺しておくべきだったの?

 この状況は「アラヤ」が望んだ結果なのか、そうじゃないのか。

 ボクには、見守る事しかできないんだ。


          ◇


 DATE:! 雨。

 世界がどうなろうと、ボクの任務は続く。

 相変わらず、ボクと「ササキさん」との二人旅。

 二人での旅は、慣れている筈なのに。それなのに少しだけ、ほんの少しだけ。

 どこか寂しいと思ってしまったのはここだけの内緒だ。 


          ◇


 DATE:( 晴れ。

 この頃「ササキさん」の食欲が無い。ボクの胸は、不安でいっぱいになる。もう、何も手につかない。


          ◇


 DATE:) 曇り。

 「ササキさん」の毛並みが悪くなってきたようだ。僕に出来る事は何か?

 件の反応は薄い。このまま、観察と看護を続けることだろうか。 


          ◇


 DATE:= 雨。

 「ササキさん」が凄く痩せてしまった。見た目にも弱ってきていることが良く分かる。

 僕の声は、もはや届くことも無い。そんな事実が、どこか悲しい。


          ◇


 DATE:0 雨。

 「ササキさん」の目は、もう見えていないのかもしれない。物を噛む力も、殆ど残っていない。動きも緩慢だ。

 残念ながら、やはり間違いはないらしい。ここから先は、互いに覚悟が必要になって来る。


          ◇


 DATE:+ 晴れ。

 「ササキさん」は1日中寝ていることが多くなった。起き上がる気力がないのだろう。 

 それは誰にとっても言える事で、僕にとっての辛く長い時間は、続く。


          ◇


 DATE:2 晴れ。

 「ササキさん」が突然痙攣をおこした。

 見ていてとても辛くなる光景だ。けれど、最後まで目を逸らしてはいけない。僕は、必死にそう訴える。



 ― 《以降。ページが滲んでいて読めそうに無い。読み取れるワードはたった一行》 ―


       

     ありがとう「ササキさん」



        ◆ ◆ ◆


 

 結論から言えば。ササキさんは死んだ。寿命だったんだ。

 この頃のボクはと言えば、すっかりショックを受けてしまって。途中から任務を放棄して閉じこもってしまっていた。

 世界がどうなろうと、ボクに対する評価がどうなろうと、そんな事はは心底どうでも良かったんだ。ボクの世界の中心には常にササキさんが居て、それがボクを構成する殆どの要素だったから。だからこそ。きっと今頃のボクは、廃人同然になっている筈だったし、事実そうなるべきだった。

 けど、そうはならなかった。そうはならなかったんだ。

 《彼》は、いつの間にかボクの隣に居て、ずっとずっとボクを励ましてくれていた。ボクだけじゃない。彼は、ボクとササキさんの両方を励まし、看護してくれた。代わりに日記の続きまで書いてくれたのはどうかと思うけど。今、この日記を読み返しても涙が止まらなくなるのは何故だろう。

 そういう感情を抱けるようになったのは、ササキさんのおかげであり、ボク自身が変わったからだって、彼は言う。

 だから、だからこそ、この日記の最後はありがとうで締めくくられているんだ。

 

 世界が変わって、ササキさんが死んで、彼と再会した。


 何の目的で、彼は組織へとやって来たのか?

 彼とアラヤは、これから一体何を成し遂げようとしているのか?

 そして、何故、彼は独りなのか?


 正直言って、ボクには良く分からない。

 ボクに分かる事があるとすれば、それはいつも通りたった一つだけ。

 ボクはこれからも彼の《監視役》であり、これからは《ボディーガード役》でもあるって事。


 お節介解呪師が、本当に《星の白夜》の原因なのか? この世界の混乱の原因なのか? 

 そんな事は、ボクにとってどうでも良い事。

 だって。

 目まぐるしくも変わるボクの人生は、ササキさんに変えてもらったこの人生は、まだまだ続いていくのだから。

 これから先、ボク達の未来は、きっとどうしょうもないくらいに闇の中。


 だからこそ。ボクの明日は、まだまだ戒かれないんだ。



第十二戒《了》

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