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ノロトキ!  作者: 汐多硫黄
第十二戒 「追憶。怪物少女の日記帳」
84/107

12-5

 DATE:B 曇り。

 ボクのお部屋にやってくるのは、決まってオトナたちばかりだけれど。今日は変わったお客さんがやって来た。

 小さな「ジッケンネズミ」だ。どこからか逃げ出してきたらしく、何だか弱っていた。

 たぶん、そのせいでボクに対しておびえているヒマが無かったんだと思う。

 ボクを見ても怖がらない動物。

 それに気を良くしたボクは、少しだけそいつをかくまってやる事にした。


          ◇


 DATE:N 晴れ。

 「ネズミ」はすっかり元気になった。あれだけ適当に世話していたのに、本当に回復してしまうとは驚きだった。 

 元気になった後も、「ネズミ」はボクを怖がったりしない。ふしぎなやつだ。すっかりなつかれてしまったらしい。

 仕方が無いのでボクは、そいつを飼うことにした。手始めにボクは、昔の「アラヤ」にならって「ネズミ」に名前をつけることにした。

 命名「ササキさん」

 ちなみに「さん」までが名前だ。ボクは一度も使った事が無いけれど、「さん」は敬称というらしくらしく、

 尊敬する相手の名前の後ろにつけるものだと「はいいろ」に教わった事がある。だから「ササキさん」だ。

 ササキというのは、ササの木の事で、何でもこのササという木とか葉っぱに願いをこめるとその願が叶うなんて風習があるとかないとか。

 これも「はいいろ」からの受け売り。「ササキさん」がいつまでもボクを怖がらないでいてくれれば、良いと思うんだ。


          ◇


 DATE:M 晴れ。

 これから任務というものをしなければならないらしい。働かざる者ナントヤラってやつ。

 組織としてはボク一人ではまだ不安らしく、しばらくは「しはん」と一緒にその任務をするらしい。

 遠出をすることもあるのだろうか? 

 別に、心配とかそういうんじゃないけど、「ササキさん」をお部屋に残しておくのはなんとなくイヤだった。

 何故イヤなのかは、自分でも良く分からない。 

 任務の直前、「アラヤ」がボクの部屋にやってきて、「センベツだ」と言い、仕込み刀を内蔵した真っ赤な日傘をくれた。

 何をどう勘違いしたのか。「アラヤ」はボクに日傘ばかりくれる。そういうのを馬鹿の一つ覚えというのだろう。

 でもボクは、真っ赤な日傘が凄く好きなので素直に礼を言って受け取る。仕込みの細工は「アラヤ」のお手製らしい。

 意外と手先が器用なのかもしれない。別に、今更知りたくもない事実だ。

 でも、折角なので「ササキさん」を持ち歩けるような、カゴをつくれないかどうか相談してみることにした。

 「アラヤ」は、ボクが無事に生きて任務から帰ってきたら作ってやると言ってくれた。

 だったら絶対生きて帰ってくると告げると、「アラヤ」は何ともいえない泣きそうな顔をしていたのがインショーに残っている。


          ◇


 DATE:$ 曇り。

 このごろは「ササキさん」と二人での任務がもっぱらになってきた。といっても、ササキさんはなにもしない。

 ボクが闘って、ボクが切り裂いて、ボクが命を奪って。ササキさんはだまってボクの話を聞く。

 ボクがエサをあげて、ボクがケージを掃除して、ボクがいつも持ち歩いて。ササキさんはボクの掌の上で丸くなる。

 相変らず、ツギハギは増えるばかりだけれど。今も昔も、恐らくこれから先も。ボクには、これしか出来ないんだ。


          ◇


 DATE:% 晴れ。

 今までで一番の遠出をした。たくさんのオトナたちと一緒に、どらごんという生き物を捕まえるためだ。

 最も、今回のターゲットはそのどらごんの子供という話だった。けど、実物は本当に大きくて。おまけに目が血走っていて。

 その時になってようやく、そいつが呪いに掛かってるんだってことを知った。「アラヤ」が大嫌いな呪いだ。 

 子供の癖にこんなに凶悪で、強くて、手に負えない。何だか妙なシンキンカンを感じた。

 確かに、これまでボクが闘った中でも上位に入るレベルだったけど、一番じゃない。動きがどこかワンパターンだからだ。 

 なんて油断していたら、左腕の骨を粉々にへし折られてしまった。

 いつもササキさんのケージを持つ方の腕だったから、ボクは思わず怒ってしまい、ちょっとだけ本気を出して殴ってしまった。

 凄い音がして、もしかしたら殺しちゃったかと思ったけど、どらごんは流石に頑丈で助かった。

 正直、殺しちゃったとしてもなにも感じないけど、「アラヤ」に怒られるのはちょっとだけ嫌だったから。 

 ぶらんぶらんだった左腕は、気が付いたときにはもう治っていた。こういう時は、こんな体で良かったと思う。

 だって、日傘と「ササキさん」のケージの両方を一つの腕で持つのは絶対疲れそうだから。



END

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