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第十二戒「追憶。怪物少女の日記帳」
DATE:Q はれ。
「ぼうし」から《日記》をかくようにメーレーされた。ジョーソーキョーイクのイッカンだそうだ。
そもそもジョーソーキョーイクってなんだろう。ボクには、ムツカシイしいことはよくわからない。
なにをかけばいいのかもわからない。
◇
DATE:W はれ。
「ぼうし」がいうには、まいにちのことやおもったことをかけばいいらしい。
まいにちのこと?
きのうも、そのまえも、そのまえも、そのまえも、そのまえも、そのまえも、そのまえも。
そのまえも。そのまえも。そのまえも。そのまえも。そのまえも。そのまえも。そのまえも。そのまえも。
きょうも。きっとあしたも。ボクは、シンサツダイの上にねかされる。
目がさめると、ボクのからだにキズアトが一つふえるんだ。
◇
DATE:1 あめ。
いたい。いたい。つらい。いたい。いやだ。いたい。かなしい。つらい。
いたい。いたい。いやだ。いたい。いたい。つらい。いたい。かなしい。
きょうのジッケンは、とてもいたかった。ボクは、とてもにげたくなった。
でも、ボクのいるばしょはここしかない。きっと、うまれたときからここにいる。
ずっとずっと、おなじことをくりかえしている。
きょうは、キズアトがたくさんたくさんふえた。
◇
DATE:E くもり。
「ぼうし」におこられた。ジッケンがうまくいかないらしい。
それってボクのせいなの? キズアトがたくさんたくさんたくさんふえた。
◇
DATE:R あめ。
チュートハンパなシッパイサク。まわりのオトナたちが、がっかりした目でそういう。
どうぶつをみるのとおんなじ目だ。みんなおんなじ目をしている。
ボクはもうヨーズミだそうだ。どういういみだろう。
ボクには、なにもわからない。
◇
DATE:T はれ。
シンサツダイの上でねるかずが少なくなった。かわりに、一日さむいおへやでじっとしてばかり。
つまらない。でも、キズアトがふえないのは、すこしだけうれしい。
◇
DATE:Y くもり。
「ぼうし」がオトナたちとけんかしたそうだ。
ゲンインはわからないけれど、くらいかおでとつぜんボクに「すまない」とあやまってきた。
ボクは、ムツカシイことがわからない。でも、なんだか少しだけかなしいきがした。
◇
DATE:U あめ。
ボクのハイキがきまったらしい。
オトナたちから、こんなもの、もうかくひつようがないといわれた。
べつにボクは、もともとかきたくてかいていたわけじゃない。
ハイキということばのいみはよくわからないけれど。たぶん、よくないことばなんだろうな。
だから、もう、いいんだ。
あめのおとが、やけにおおきくきこえた。
END