4-7
翌日。
宿。セツリ&カンナの部屋、そのドア前にて。
「…… あの、あのね。カエデちゃん、昨日一晩すごく、すんごーく良く考えてみましたの。そしたらね、どうしてもね、やっぱりね。あ、あ、あなたの力がカエデちゃんには必要なんじゃないかなーって、うん、そう思ったの。あなた解呪師ちゃんだし、カエデちゃんの呪いを解いてくれたし。鞘探しにも、うん、役立ちそうだし。なんなら、解呪してもらう変わりに、カエデちゃんが解呪師ちゃんの事、その、護ってあげても良いし。その方が、お互いの目的が上手くいくんじゃないかって。そう思ったの。だから、だからね? その、カエデちゃんも、あなた達の旅に」
そう言って僅かにはにかみながらドアを開けるカエデ。
… が、そこには既に二人の姿は無く。
変わりに、テーブルの上に置かれた手紙が、窓から入る風に揺られその存在を実直に主張していた。
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拝啓 カエデ様
やぁやぁどーも。ご機嫌うるわしゅー。天才魔法使いことカンナさんだよ☆
このままいくと、《カエデちゃんが仲間になりたそうな目でこちらを見ている》
的な展開になりそうだと、私の中の野性の嗅覚が告げているので、先手を打って一足先に出発させていただきます。
だってぇー、私とセツリの二人旅を邪魔されたくないしぃ~。私以外の余計なラブコメ展開はいらねーしぃー。お涙頂戴エピソードとか、キャラ立まくりなその見た目とかその一人称とか露骨にあざといしぃー。
… 真面目な話、あんたの存在はセツリにあまりいい影響を与えなそうなんだよねぇ… 色々と。テヘペロ♪
と言うわけで、ではでは、身体に気をつけて鞘探し頑張ってちょ☆
草々 《昨日の敵は、やっぱり昨日の敵だよね》カンナより
追伸 ツンデレなんて、きょうび流行んねーぜぃ。ぷぷっ。
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「あんの年増ぁああああああああ!!! もーーー頭にきたあの超お馬鹿ちゃん!! いいわ、絶対探し出して追いついてみせるんだから! 待ってなさい解呪師ちゃん!! カエデちゃんの口に指を突っこんだ責任、とってもらうんですからっ!!」
◆ ◆ ◆
「あのー、カンナさん?」
「ん? なにかにゃ、セツリ君」
「そろそろ下ろしてくださいませんか。ほら、人目とかもありますし。男の僕がお姫様抱っこされながら移動するというの、ちょっとどうかと」
「えぇー、だってさぁ、昨日セツリを一人にしちゃったのは私の監督不行届だったし。昨日の解呪で疲れてるだろうし」
「いや、それに関してはもう大丈夫ですから。自分一人で歩けますから」
「えぇー、でもさぁ、ほら、急がないとジャン」
「… 何故?」
「……… 一刻も早く、王都に着きたいでしょ? ライセンス取らなきゃジャン。他意ハナイヨ。本当ダヨ」
「まぁ。そう、なのかな? それに、良かったのでしょうか。カエデさんに挨拶とかしないまま出てしまって」
「だいじょうブイだよセツリ。超気の利く私が、置手紙残しておいたし。細かい事はイーンダヨ」
「はぁ。それはそうと本当に下ろしてくださいよ。冷静に考えるとこの格好、何だか恥ずかしさを通り越して屈辱的な気がしてきました」
「にゅふふふ、だ~め。おろしませーん。あいつを撒くま…ゲフンゲフン、此方、次の目的地までの特別急行となっておりまぁーす♪」
こうして、二人と一匹の旅はまだまだ続いていく。
彼らはライセンス取得のため王都を目指し、再びその路を歩み始める。
この先二人に待ちうけているもの、それはまだ闇の中。
彼らの進路は、まだ解かれない。
第四解《了》