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―4―

――週が明けた夕方。




そろそろ翼くんのお迎えが来る時間だ。


でも、今日はおばあちゃんじゃなくて翼くんママが迎えにくるらしい。


……と言うのは、今日は翼くんの誕生日でママがお迎えに来た後、


レストランで一緒に食事をして帰るんだと、朝から超ハイテンションで翼くんが話していた。




翼くんは、いつもはおばあちゃんと二人で食事をしているらしく、


ママと食事できるのが余程嬉しいのか、今か今かとお迎えを待っていた。






しかし……、




翼くんママは午後七時を回ってもなかなか迎えに来なかった――。




他の園児達はもうみんなお迎えが来て帰っていった。


幼稚園に残っているのはもう翼くんだけだ。




(もしかして、来られなくなったのかな?)




「……」


翼くんも俺と同じ事を思っているのか段々と不安そうな顔になり、


とうとう喋らなくなってしまった。




こういう園児の表情を見るのはなんとも辛い。


それぞれの家庭の事情があって、それは俺達保育士ではどうにもできない事。




わかってはいるけれど……




やっぱり、お迎えを待つこの時間だけでもなんとか楽しく過ごさせてあげたい。




「翼くん、先生とお絵描きしようか」




「……うん……」


そう返事をしたものの、翼くんは待ちくたびれたのか眠そうだ。




翼くんの家はお母さんもおばあちゃんも働いている。


おじいちゃんは翼くんが生まれる前に亡くなったと聞いた事がある。


だから、朝も夕方も預かり保育で一日の半分近くを幼稚園で過ごしていて


眠たくなってお迎えが来る頃に眠ってしまう事もよくあるのだ。




今日はママがお迎えに来るまで頑張っていたみたいだけど、


翼くんはとうとうお絵描きを始める前に眠ってしまった。




「やっぱ、寝ちゃったか……」




「スゥ……スゥ……」


小さな寝息を立てて眠っている翼くんを抱きかかえて別室に連れて行き、


布団に寝かせると時計の針は、もうすぐ八時を指そうとしていた。




(翼くんママ、どうしたんだろう?)




確か以前、おばあちゃんが入院した時、少しの間だけど送り迎えをしていた。


その時も頑張れば午後七時くらいには迎えに来られるんだと言っていたから、


今日もそのくらいに来るんだと思っていたけれど……。




(翼くん、おなかも空いているだろうに……)

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