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――数日後。




「朱里さん」


定時を過ぎて会社を出ると、本多先生が会社の前に来ていた。




「本多先生っ!?」




「朱里さんの事、待ってたんです」




「……病院は?」




「今日、退院したんですよ。それで、どうしても朱里さんと会って話がしたくて」


本多先生はそう言うと私を真っ直ぐに見つめた。






     ◆  ◆  ◆






「叔母から聞きました。朱里さんに何を言ったのか」


会社の近くの喫茶店に入り、オーダーしたコーヒーをウェイトレスが持って来ると、


先生は落ち着いた様子で口を開いた。




私と本多先生は数日前、一ヶ月ぶりに会った。


永沢先生と倖に訳もわからず連れられて着いた場所は本多先生の病室だった。


先生の叔母さんから「退院した」と聞いていたからてっきりもういないと思っていた。


しかし、本多先生はまだ入院していた。




結局、私や永沢先生や倖だけでなく、本多先生本人までも麗子さん親子に騙されていたのだ。


だけど、その日は本多先生とはまともに話が出来なかった。


ただ、「直接叔母に確かめて、それがはっきりしたら、その時にもう一度会って欲しい」


とだけ言われていた。




「僕、朱里さんの事好きです」




「先生……」




「麗子さんの事とは関係なく」




「……でも、それならどうしてずっと連絡くれなかったんですか?」


入院していたから携帯の電源を切っていたのはわかるけれど、普通恋人から突然


何の前触れもなく連絡もなくなってお見舞いにも来なくなったら、いくらなんでも


おかしいと思うはずだ。




それでも本多先生が私に何も連絡をくれなかったのはどうして……?




「それは……朱里さんに僕の家族の事とか昔の事を話したって叔母から言われて……、


 それで、朱里さんが僕と別れるって言ったって聞いたから……」




(先生のご家族の話? それに昔の話って……?)


「私……そんなの聞いてないです」




「えぇ、それも叔母を問い詰めたらデマだってわかりました。


 ……僕には母親が二人いるって言うのは以前、話しましたよね?」


本多先生は深呼吸をするように息を吸い込んで吐き出すと、再びゆっくりと話し始めた。




「でも、僕は生まれてからずっと一人ぼっちみたいなもんだったんです。


 僕が五歳の時に父が今の母と再婚したんですけれど、その母は元々父の秘書で


 結婚した後もずっと父に付いていたから家にはほとんどいなくてね。


 通いの家政婦さんがいるだけで、しかも僕は父親の跡を継ぐ為にいろんな習い事とか


 塾ばっかり通わされていた。で、そんなんだからとうとう高校に入ったぐらいから


 反抗と言うか反発と言うか……要するにグレちゃったんです」




「本多先生がですか?」




「えぇ。で、その頃に晴樹とみゆきに出会ったんです。


 いつも三人でつるんで結構やんちゃばっかりしてました」




そういえば、いつか三田くんから助けてもらった時、みゆきさんが


“蒼空にとってはあんなの朝飯前♪”と言っていた。




あれは喧嘩は慣れてるって意味だったの?

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