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―33―

「あなたの事を蒼空くんが“恋人”だなんて言ってるのは、麗子から逃げたいだけなのよ」




(そんな……)




「蒼空くんがなんと言おうと麗子と結婚させて会社を継いでもらう事は


 もう親族会議で決まった事なんです。


 ですから、もうこれ以上、麗子と蒼空くんの邪魔はしないで下さい」


本多先生の叔母さんからそうハッキリ言われ、私は頭が真っ白になった。




(“親族会議で決まった事”って……先生、本当なの――?)






     ◆  ◆  ◆






自分の部屋に帰り、直接本多先生に確かめてみたくて私は先生の携帯にかけてみた。


しかし、コール音もしない。


感情のない音声が聞こえてきただけで留守番電話に切り替わることもなかった――。






     ◆  ◆  ◆






――それからさらに一ヶ月が過ぎた。


その間、本多先生から一度もメールも電話もない。




(やっぱり、先生は本当に私を利用しただけだったんだ……)


そう思うと溜め息と一緒に涙まで出てきそうだった。




仕事中、自分でも気付かないうちに本多先生の事を考えていると不意に倖の声がした。


「ねぇ、朱里。今日の夜、時間ある?」




「え? あ、うん……あるよ」




「ちょっと付き合って欲しい所があるんだけど」




「うん、いいけど?」


時間はまだ始業したばかりの午前九時過ぎ。


しかも、いつも昼休憩に一緒にご飯を食べているから、わざわざ私の席まで来なくても


後で話せるし、社内メールでもいいはずだ。




(なんだろう?)






不思議に思っているうちに時間が経ち、午後六時――、




私は倖に連れられ会社を出た。




「どこに行くの?」


てっきりご飯でも一緒に食べようという話なのかと思っていた。


しかし、暎子は誘っていないようだ。


行き先も何も言わないで歩く倖に聞いてみるけれど、


「まぁまぁ、行けばわかるから」としか答えない。




そして、駅で永沢先生と合流した。




(一体、何?)




永沢先生は「こんばんは」となんでもない挨拶を交わして私の隣に並んだ。


だが、どうにも並びがおかしい。


永沢先生、私、倖の順に並んでいて何故か私を間にしているのだ。




(???)






それから三人で電車に乗り、とある駅で降りて五分程歩いた。


そして着いた場所は本多先生が入院していた病院だった。


一ヶ月ぶりの景色が少し懐かしくも感じる。


しかし、ここに何の用があるのだろうか?


本多先生は一ヶ月前に退院しているはずだし、誰かのお見舞い?


だけど、それならどうして私を連れて来たのだろう?




不思議に思いながら二人に付いていくと、以前本多先生が使っていた病室の前で足を止めた。




(え……っ!?)


病室のネームプレートの名前に私は目を疑った。




“本多蒼空”




(嘘……っ)

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