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――翌日。




会社の帰りに本多先生のお見舞いに行くと、麗子さんも来ていた。




「こんばんは」


先生は昨日と同じ様に本を読んでいた。


私の顔を見ると少しだけ表情を柔らかくしてくれたけれど、麗子さんがいるからか、


あまり機嫌が良さそうじゃない。




「麗子さん、もういい加減帰って貰えませんか?


 “恋人”とゆっくり二人きりで話がしたいんです」


先生は溜め息交じりの少し冷たい言い方で麗子さんに言った。




すると麗子さんは、私を一瞥して「また、明日来ます」と言って病室を出て行った。






「ハァー……、来なくていいっつーの」


病室の窓から麗子さんが病院の敷地内から出て行くのが見えると、


先生が疲れた様子で溜め息をついた。




「もしかして、結構前から来てたんですか?」




「えぇ、結構前どころか朝からずっとですよ。疲れた……これじゃあ、


 逆にストレスで今度は胃炎とかで入院しそうです」


先生はうんざりした顔をした。






そして翌日も、その翌日も麗子さんは先生の病室に来ていて、


私がお見舞いに来ると同時に帰って行った――。






     ◆  ◆  ◆






そんな状態が二週間程続いたある日の夜、いつものように仕事の帰りに


先生の病院へ行くとロビーの前で「あの……」と誰かに呼び止められた。




「?」


振り返ってみると本多先生の叔母さん、つまり麗子さんのお母さんだった。




「あなたを待っていたんです」




「私を……ですか?」




「お話があるんです。一緒に来て頂けます?」


先生の叔母さんは真っ直ぐに私を見据えた。




「は、い……」


(……話?)




私が返事をすると先生の叔母さんは病院の外へ向かって歩き始めた。


私はその後を追って歩いた。






「あの……それで、お話ってなんでしょうか?」


病院の駐車場に停めていた車に乗せられ、連れて来られたのは


病院から車で十分ほど走った場所にある静かな喫茶店だった。




「蒼空くんの事なんですけど、今日のお昼に退院しましたから」




(え? 先生、昨日は何も言ってなかったのに……)




「それで退院した後もしばらく安静が必要ですので、うちでお世話をする事になったんですけど、


 あなたに言っておきたい事があるんです。あなた、蒼空くんと


 お付き合いしていたつもりでしょうけれど、本気でそう思ってらっしゃるの?」




「えっ?」




それって……どういう意味――?

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