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「先生が抱きしめてくれた時、なんだかすごく安心して……でも、
どうしてあの時キスしたんですか?」
私は本多先生の本当の気持ちが知りたかった。
「それは……」
先生は少し俯いて私から目を逸らした。
(やっぱり……ただの同情?)
「ただ……そうしたかったから」
本多先生はしばらく考えた後、そう言った。
「なんていうか……その……上手く言えないんですけど、
泣いてる朱里さんの事を守りたいって思ったんです」
そして、先生は私を真っ直ぐに見つめた。
「すいません……なんか、意味わかんないですよね?」
先生は苦笑いしてすぐにまた視線を外した。
「そんな事ないです」
私がそう答えると先生は意外そうな顔をした。
「私、キスされた時驚いたし、先生はみゆきさんとって、思ったらなんか……、
悲しくなっちゃって……それで、思わず……、でも、その後ずっと考えてたんです」
「?」
私がそこまで話すと先生は何を? と言った顔をした。
「自分自身の気持ちを」
「朱里さんの気持ち……ですか?」
「はい。先生がみゆきさんとは、なんでもないんだってわかってから、
今まで……ずっと。なんで悲しくなっちゃったのかなー? とか」
「それで……答えは見つかりました?」
「はい、ずっと考えてて、ようやく気付いたんです。私……、先生の事が好きだって……」
「……っ!?」
「先生が私にキスしたのはただの同情だったとか言われたら、このまま帰るつもりでした」
「朱里さん……」
「私の事……、守って、くれますか?」
人生で初めての告白。
心臓が口から飛び出そうだった。
本多先生は困ったような顔をした。
(やっぱり……迷惑……?)
でも、次の瞬間……
「僕から告白しようと思ってたのに……」
そう言って苦笑いした。
「っ!」
今度は私が驚いた。
「僕も朱里さんの事、好きです。多分……朱里さん以上に僕の方が好きだと思います」
「そ、そんな事ないですよ。私だって、先生には負けませんっ」
すごく嬉しかったけど、私は照れ隠しについ、言ってしまった。
「もー、先に告白したんだから僕にも少しはカッコつけさせてください」
すると、先生は少しだけ頬を膨らませた――。