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「ねぇ、蒼空」




「ん?」




「あの女の子って、蒼空が受け持ってる園児の……」


みゆきを店まで迎えに行った後、一緒に歩いているとみゆきが何かを指差した。




「……?」


その方向に目を向けると、ホテルの前で何やら揉めているカップルがいた。




女の子の方は……朱里さん?




「何やってんだろ?」




「なんか、男の方が無理矢理ホテルに連れ込もうとしてるように見えるのはあたしだけ?」




「いや、俺もそう見える」




俺とみゆきはそのカップルに近づいた。




「いいじゃん、別に。少し休むだけだって」


「やだ、やめてっ」




「嫌がってんだから、放してあげて下さい」


俺は明らかに嫌がっている朱里さんと、彼女の手首を掴み肩を抱いて


ホテルに連れ込もうとしている男の間に割って入った。




「なんだよ?」


男は軽く舌打ちして、邪魔が入ったと言わんばかりの顔で俺を睨みつけた。


それは以前、社内旅行の旅館で酔いつぶれて朱里さん達が部屋に運んでいた三田とか言う奴だった。


今日もまた随分と酔っているみたいだ。




「あんたには関係ないだろ? 退けよ」


やや呂律が回っていない口調で俺の肩を掴む。




「朱里さん、嫌がってるじゃないですか」


俺がそう言うと朱里さんはハッと顔をあげ「本多先生っ!?」と驚き、口元に手を当てた。




「いいから、そこ退けよっ!」


三田は眉根を寄せ、声を荒げた。


しかし「ハイ、わかりました」と、おとなしく朱里さんを渡すわけにもいかない。




そして三田は動こうとしない俺に苛立ち、「……このっ」と殴り掛かって来た。


三田の右ストレートを軽くかわした俺はその拳を掌で受け止めた。




「先生っ!」




「みゆき、朱里さんと一緒に下がってろ」




「え……蒼空、やるの?」


そんな会話をしている間にも三田は酔っているからなのか、


へろへろでとても避けやすいパンチを打ってきた。


今度はみゆきも朱里さんも下がったから避けても問題なさそうだ。




「大丈夫、手は出さない」


(だって、こんなに酔ってる奴をまともに相手してもなー。


 フェアじゃないだろ)






そして、五分程が過ぎ――、


「蒼空~、もう面倒くさいから一発殴って黙らせちゃえば?」


三田の拳を延々と避け続けている俺にみゆきが苦笑いしながら言った。




「そうかと言って怪我させると後々面倒だからなー」




「じゃー、どうすんの?」




「どうしようかー?」


警察を呼ぶのが一番いいのだろうけれど、朱里さんの同僚だし出来れば穏便に


済ませたいところだ。

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