―18―
――翌朝。
朝一番で俺は露天風呂に向かった。
ちなみに晴樹も浅田くんもまだ寝ている。
露天風呂には俺以外、誰もいなかった。
朝一のお湯と早朝の絶景を独り占めだ。
そして、露天風呂を出てラウンジに行くとみゆきがいた。
みゆきは一人でいた。
あのお姉さん達はいない。
「みゆき」
俺が名前を呼ぶとコーヒー牛乳をストローで飲みながら振り向いた。
「おはよう、つーか、相変わらずコーヒー牛乳が好きなんだな」
俺がそう言うとみゆきは、うんうんと笑いながら頷いた。
みゆきは高校の頃からいつも喉が渇くとコーヒー牛乳を飲んでいた。
キャバ嬢なんてやっているからコーヒー牛乳なんて甘い飲み物は
もう卒業したのかと思っていたけれど。
「そういう蒼空は相変わらず100%ジュースしか飲まないんだね」
銜えていたストローから口を離し、みゆきは俺が持っている果汁100%の
オレンジジュースが目に入るとにやりと笑った。
「……ねぇ、昨夜キスしたのマズかった?」
「なんで?」
「うーん……もしかして、彼女がいたりして晴樹にチクられるかなぁー? って」
「別にそんなのいないけど。てか、今さら遅い。あんな大胆にキスしておいて」
「えへへ、ごめん。だって久しぶりだったから、つい嬉しくって」
「まぁ、いいけど。でも今度からテンション上がったからってあんな事するなよ?
後、酔った勢いもなしな?」
俺がツンとおでこを指で軽く弾くとみゆきは「うん」と、
ちょっとばつが悪そうに返事をし、「蒼空……話したい事があるんだけど……」と言った。
「うん?」
「あのね……近いうちに二人だけでゆっくり会いたいんだけど……ダメ?」
みゆきは意外にも真剣な顔だった。
(話……?)
「いいけど、明日と明後日は幼稚園の入園式の準備があるから、ちょっと難しいけど」
「じゃあ、その次の日は?」
「いいよ。夜?」
「うん」
「あ、でも、おまえ店はどうするんだ?」
「休む」
「そっか、わかった」
みゆきが店を休んでまで俺に話したい事って……
さっぱり見当はつかないが、とりあえず俺は明々後日、みゆきと会う約束をして部屋に戻った。