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「“今度飲みに行こうね♪”って、アフターとか同伴でそのまま店まで
連れて行かれそうな気がするな」
“チームキャバ嬢”の方をちらりと横目で見ながら晴樹はまた苦笑いをした。
「てか、今の人って本多先生にキスしてましたけど、そういう関係の人なんですか?」
そして浅田くんもみゆきをちらっと見た後、興味深そうに俺に視線を向けた。
「まぁ……俗に言う元カノ」
「えーっ、意外です」
浅田くんが驚くのも無理はない。
“今の”俺は見た目、好青年そのものだ。
とてもキャバ嬢と付き合っていたようには見えないだろう。
それにしても……目の前の“チームOL”はすっかりドン引きしている。
(やっぱ“奇襲攻撃”が効いてるよな……)
「いつ頃付き合ってたんですか? さっきの“愛”さんと」
しかし、中川さんが興味津々な様子で身を乗り出してきた。
「高校生の時です」
俺とみゆきは高一の時から卒業してからも、しばらく付き合っていた。
俺が保育士になってなんとなくお互い離れていってしまったけれど……。
「今は? 本多先生、彼女とかいるんですか?」
中川さんはさらに突っ込んで来た。
「いませんよ」
「じゃあ、私、立候補しちゃおっかな♪」
そして中川さんはさらりと言ってのけた。
「「ちょ……倖っ」」
朱里さんと嘉川さんは慌てて中川さんに視線を向けた。
中川さんはにんまりと笑っている。
「中川さん、結構飲んでるみたいですね?」
だって、顔もちょっと赤いし。
「俺じゃダメなの?」
すると晴樹が自分を指差しながら言った。
「んー……」
「じゃ、俺は?」
今度は浅田くんがニカっと笑った。
「んー、やっぱ本多先生が一番かなー?」
中川さんはそう言うと再び俺の方に向き、にこっと笑った。
(俺は朱里さんがいいんだけどな……)
しかし、当の朱里さんはと言うと……
中川さんの“プチ暴走”に苦笑いしているだけだった。
そうだよなぁー。
朱里さんにとって俺は可愛い甥っ子の“幼稚園の先生”ってだけだし。
……その後。
中川さんの怒涛の攻撃は続き、
「本多先生、携帯の番号交換しましょう~♪」
「後でお風呂一緒に入りましょう♪ あっちに混浴ありましたよ」
「今度、本多先生の家に遊びに行ってもいいですか?」
「来週、飲みに行きましょうよ♪」
俺はただひたすら上手く誤魔化す事だけに頭をフル回転させた。