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―15―

そうして二時間くらい飲み倒した後――。


休憩がてら俺はまた大浴場を出た先のラウンジでまったりしていた。




「大丈夫ですか?」




(ん? 誰だ?)


結構な量の酒を飲み、へべれけとまではいかないが、少しだけ酔っていた俺は


この声の主がいまいち誰なのかピンと来なかった。




「……大丈夫、大丈夫」


目を閉じたままそう言うと声の主はクスクス笑いながら俺の隣に座った。




俺はその人物の顔を確認しようと視線を向けた。




「……っ!?」


てっきり幼稚園の職員の誰かだと思っていた俺はその声の主の顔を思わず二度見した。




隣に座ったのは……




朱里さんと一緒にいた女の子の一人だった。




(びっくりしたー)


一気に酔いが醒めた。




「先生、お一人ですか?」




「えぇ、他の人達はまだ中で飲んでます」


そして俺も『そっちは?』と言う顔をすると


「私も一人ですよ。朱里達は……あ……、あそこです」


と、廊下の方に視線を向けた。




俺も廊下の方に目をやると、朱里さんともう一人の女の子が男性に


肩を貸しながら歩いていた。




(あ?)




「朱里、どうしたの?」


俺の隣にいる女の子が朱里さんに訊ねると、


「三田くん、飲み過ぎちゃったみたい」


朱里さんが苦笑いしながら答えた。




それで二人で部屋まで連れて行こうとしているのか。




「手伝います」


二人掛かりといってもグデグデになった大の男を女の子だけで運ぶのはキツい。


俺は朱里さんと交代し、男性に肩を貸した。




(この人……朱里さんと居酒屋にいた……)


何気なく男性の顔をちらりと見るとさっきも朱里さんの事を


“朱里ちゃん”と呼んでいた男だった。






「すみません、本多先生。ありがとうございました」


男性を部屋まで連れて行き、再びラウンジに戻ろうと部屋を出たところで


朱里さんが頭を下げながら言った。




「いえいえ、たいした事じゃないですよ」


俺が笑って答えると、


「でも、助かりました。私達だけじゃ重くて……」


「先生って優しいんですね」


と、他の二人が俺の両側に並んだ。




(……あら?)


ぷちはーれむ?






「「あー、いたいた!」」


そして、ラウンジに戻ると晴樹と浅田くんがいた。


二人は俺の姿を見つけると、すぐに近寄って来た。




「本多先生、先に部屋に帰ったのかと思いましたよ」


浅田くんは安心したように笑った。


一応、心配してくれていたらしい。




それに比べ……




「どこ行ってたんだ?」


晴樹は三人も女の子を引き連れている俺を見て、にやりと笑った。




「まぁ、ちょっと……」


(別にお前が期待しているような事は何もねぇよ)




「ふぅ~ん」


晴樹は何か言いたげな顔だ。




「本多先生、抜け駆けなんてズルいですよー」


ラウンジのソファーに俺達“チーム保育士”と朱里さん達“チームOL”が


向かい合うように座ると浅田くんが俺の耳元に囁いた。




「バーカ、そんなんじゃないって」


(浅田くんも晴樹と同じ事思ってたのかよっ)




そして、晴樹は俺と浅田くんを横目に朱里さん達に自己紹介をしていた。


「俺は永沢晴樹。蒼空と同じく保育士、よろしくね♪」




(……ったく、コイツの方がよっぽど抜け駆けじゃないのか?)




「私、嘉川暎子。よろしくー」


「中川倖です、よろしくね♪」


「佐山朱里です。翼がいつもお世話になってます」




さっきまで俺の隣に座っていた人は中川さん、で、朱里さんと一緒にあの男性を


部屋に連れて行っていたのが嘉川さんと言って二人とも朱里さんとは同期なんだとか。




「俺、浅田武史っす」


「本多蒼空です」


そして、浅田くんが自己紹介した後、最後に俺の自己紹介すると


「……え? 蒼空?」と、後ろの方から聞こえた。




「ん?」


(まさか、また知り合い登場か?)


俺が振り向くと、俺と同い年くらいの女性と目が合った。




(……あ)

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