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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ごめんなさい、ヒロインさん。どうしてこうなったのか私にも分かりません!

作者: 春日野 梛
掲載日:2026/05/22

何番煎じの悪役令嬢物です。

一度は書いてみたかったけど、春日野に書かせるとこうなってしまいました(笑)

楽しんで頂けると幸いです。




私は公爵令嬢ベルローズ・バルガラルド。王太子殿下と婚約者候補達の顔合わせの茶会で殿下の顔を見た瞬間、突然前世の記憶とやらを思い出したのだ。


大量の記憶が流れ込んで来て、あまりの情報量に脳が処理出来ず倒れてしまったらしい。目を覚ました時『見知らぬ天井だ…』と言ってしまったのは前世の習性だ。


王城の一室で休ませて貰っていた私。もう、体調も回復したし屋敷に帰りたい。


そう思っていると扉がノックされ、侍女が部屋に入って来た。その侍女に回復したから屋敷に帰りたいと意思を伝える。

 

暫くすると、お母様が部屋に飛び込んで来た。


「ローズ、大丈夫なの?お医者様は過労だろうって言っていたけれど」

「お母様、ご心配をかけました。もう大丈夫です。早く屋敷に帰りたいわ」


「そうね、帰りましょう」



そして、馬車に乗り屋敷に帰る道中、お母様が今日のお茶会の話をしてくれた。


「貴女が倒れた後、お茶会はお開きになったの。婚約者候補筆頭の貴女が倒れたから、後日もう一度顔合わせをする事になったわ」

「別に他の候補者から婚約者を決めれば良いのに」


お母様がびっくりした顔をする。


「ローズ、貴女良いの?王太子妃になる為に努力してきたじゃない」

「他のご令嬢方を見て、私じゃ王太子妃は務まらないと思っただけよ」


「そんな事はないわ。貴女がどれだけ努力して来たか知っているもの」


「王太子妃になるって言うのは私の意思ではないわ。お父様から『お前は王太子妃になるんだ』って言われ続けてきたからだもの」


少しの沈黙の中、馬車の走る音だけが響いている。


「そう…私は貴女も王太子妃になりたいのだと思っていたわ」

「お母様…」

「だから、貴女が無理をして勉強しているのを止めなかった」



お母様は私の頬を撫でる。


「今日、倒れた理由が『王太子妃が貴女にとって重責』であるなら無理に王太子妃にならなくても良いわ。我が家は無理に王家と縁を結ばなくても大丈夫なのだから」


「ありがとう、お母様。でも、お父様が何と言うか…」

「大丈夫よ。その時はお母様に任せなさいな」

「はい、お母様」


馬車はゆっくりと屋敷に向かって走る。屋敷に着くまで馬車の中でお母様と色々な話をした。長い間、お母様と話す時間さえ無かった事に気が付いた。お母様が私の事を大切に思ってくれているのが分かって嬉しかった。




自室に戻った私は紙とペンを用意した。


さて、改めて状況を整理してみよう。どうやら私は元の世界で何某かの事で死んで、こちらの世界に転生したようだ。


今の私は前世と今世の記憶を上手く混ぜ合わせた状態だ。若干、前世の性格が強めに出ているかも知れないが。だから、この世界で生きていくのに不自由はない。私は間違いなくベルローズ・バルガラルドだ。



この世界は乙女ゲーム『鳥籠の乙女〜貴方に囚われて〜』の世界だ。残念な事に私はこのゲームをプレイしていない。



ヒロインは、とある男爵家の亡くなった娘に似ていると言う理由で引き取られた元孤児だ。自由奔放で表情豊かな彼女に学園で出会った攻略対象者達は心惹かれていく。


攻略対象は王太子、宰相子息、騎士団団長子息、学園教師(実は王弟)の四人。そして、私は悪役令嬢。ざまぁされる側の人間だ。


前世、私はOLで高校生だった妹から『お姉ちゃん、これやってみて絶対面白いから』と、渡されたのがこのゲームだ。


だが、あまり好みで無かった為、頭だけプレイして放置だった。妹から聞いた内容は攻略対象者は恋愛エンドなら溺愛だが、それ以外はヤンデレになり監禁エンドらしい。


ヤンデレに監禁って最悪じゃない?



妹談。


『だって、好きな人とずっと一緒に居られて三食昼寝付き。逃げようとだけしなければ、存分に甘やかしてくれるんだよ。ヤンデレ最高じゃん』


妹よ、何故そんなにヤンデレが好きなんだよ。お姉ちゃんには理解できないよ。



さて、問題はざまぁ回避だ。攻略対象者それぞれに婚約者がいて、ヒロインとの仲を邪魔する悪役令嬢になる。私を含む悪役令嬢の最後は全て斬首だ。


罪と言っても精々、教科書を破っただの、階段から突き落としただの些細な事ばかり。階段から落ちてもヒロインはかすり傷程度なのに、悪役令嬢は斬首なのはあんまりではないか。


 

折角、転生したのに十六歳や十七歳で斬首なんて悲しすぎる。何とかざまぁを回避しなければ。


ああ、ゲームをプレイしておけば作戦を立てられたのに。後悔しても仕方がない。幸いにして、この乙女ゲームに逆ハーレムは無い。



まずは定石な逃げ方を考えてみよう。


一、ヒロインが自分の婚約者以外を攻略してくれるのを期待する。


私が公爵令嬢である以上、婚約者は王太子の可能性が高い。ヒロインもきっと王太子は一番に狙ってくるだろうから、絶対に避けたい案件だ。


でも、どうやって?記憶が戻る前も優秀な令嬢である事は知られている。今更、お馬鹿な令嬢の振りも嫌だ。


婚約者に選ばれるのを避けるのは難しいだろう。これは絶対駄目だ。



二、攻略対象者及びヒロインに関わらないようにする。


問題は強制力と言うものがどのくらい働くかだ。攻略対象とヒロインに関わらなくても冤罪を着せられる可能性大。不確実すぎて駄目。



三、攻略対象者以外を婚約者に選ぶ。


これが一番効果あるかも知れない。婚約どころか、さっさと結婚してしまえば良いのでは?手近なところで、相手を探して結婚してしまう。これを最有力候補にしよう。



四、貴族から平民になる。


平民になってもヒロインを虐げた罪で断罪されないとも限らない。でも可能性は低いだろうから、この手もありだろう。



五、他国へ逃走。


これは全て駄目な場合の最後の手段に取っておく事にする。


こんなところかしら?



色々と考察した結果、手近な所で結婚相手を探す事にする。お父様に相談しても、分かってくれないだろうから自力で相手を探さなければ。

 


と、思ったが居るじゃないかすぐ側に。


私の護衛騎士のジークだ。小さい頃から側にいてくれて気心も知れている。少し年齢は離れているが許容範囲だ。


整った顔立ちで背は高く、騎士だけに筋肉質。年は二十七歳。婚約者、恋人の話は聞かない。騎士爵は持っていたはず。優良物件では?


記憶が混ざる前の私、ベルローズも護衛騎士の彼を憎からず思っていたらしいし。


王太子の婚約者になるべく育てられたから、諦めざるを得なかったみたいだ。だから相手が決まったら行動あるのみ。




淑女としては端ないがジークを一人で部屋に来るようにと呼び出す。扉がノックされ、開けるとジークが立っていた。


「お呼びと伺いました」

「来てくれてありがとう。中へ入ってくれる?」


部屋に入ろうとして中に侍女やメイドの姿が無く、私一人だと知ると入ろうとしたのを止めた。


「お嬢様、お一人ですか?侍女の方は?」


油断していたジークの腕を引っ張り、中に入れると扉を閉めた。


「お嬢様!」


あら、焦ってるジークが可愛いわ。


「ジーク、ちょっといいかな?」

「そんな事より、男の私と二人きりはいけません。すぐに部屋を出ます!」


私は扉の前に立ってジークが出られない様にした。


「お嬢様!」


私の目の前でオタオタしているジークの手を取り懇願する。


「私、貴方が好きなの。王太子殿下の婚約者になりたくないわ。だから、私と結婚して?お願い」

「お嬢様、ご冗談を。貴女は公爵令嬢、私は騎士爵です。お嬢様とは釣り合いません」


やっぱり断られるよね。でも、ここで諦める訳には行かない。


「身分なんてどうでもいいわ。貴方といられる事が大切なの。貴方は私を嫌い?」

「そんな事は…」

「じゃあ好き?」 


「仕えるべき主としてお慕いしております」

「そんな事を聞いてるんじゃないわ!」



断られ続けていると段々と胸の奥から悲しみが上がってくる。これは私と言うより、元のベルローズの感情だろう。ベルローズは本気でジークを好きだったみたいだ。


「お願いよ…。貴方と一緒にいたいの。貴方さえいれば他に何も要らないわ」



ジークの手を取っていた私の手を、今度はジークが両手で包み込み跪く。


「本当に私がいれば何も要りませんか?」

「うん。ジークがいればいい。貴方が好きなの」


ジークが私に微笑みかけてくれる。


「分かりました。では、お嬢様こちらにサインを」


私の手を離し、立ち上がったジークがテーブルの上に一枚の紙を置く。


「なに?」

「婚姻誓約書です」


「……展開早すぎない?それに何故そんな物を持ち歩いているのか疑問なんだけど」



あああ…どうしよう、ジークの笑みが怖い。ジークは攻略対象じゃないわよね。地雷踏み抜いた感が半端ないんだけど!


「さあ、お嬢様お早く」


ペンを持って誓約書にサインする。すでにジークのサインは入っていた。準備良すぎない?


「これでいい?」


サインした誓約書をジークに渡す。


「ええ、これでお嬢様は私の妻です。今すぐ神殿に提出してきます」


本当に今すぐにでも神殿に走って行きそうなジークの腕を掴んで止める。


「ま、待って!一応、お父様達にも報告しないと」



くるりと身を翻したジークは私を抱きしめてキスをした。



「そうですね、旦那様にもお知らせしなければ。全て私に任せて下さい」

「反対されるかも知れないわよ」

「大丈夫です。旦那様の弱味は色々と握っていますから、サクッと片付けてきます」


お父様の弱味って何?それにサクッとって怖いんだけど。


「お嬢様はここでお待ち下さい、旦那様に了承を得て参ります」

「私も一緒に行くわ。これは私の問題でもあるんだもの」



二人でお父様がいる執務室に向かう。ジークに手を恋人つなぎにされて。


ノックし返事を待って中に入る。私達の姿を見たお父様は苦虫を噛み潰した様な顔をした。


「おそらく二人が話したい事は想像が付くが、まず座りなさい」


お父様に座るように言われソファに腰掛ける。隣にジークも腰を下ろす。


「旦那様、お嬢様との結婚をお認め頂きたく」

「それはローズも承知しているのだね」

「はい、勿論です。お嬢様からのお申し出でしたので」


ジークの言葉を聞いたお父様は、ショックを受けた様な顔をした。


「ローズ、お前は本当にこの男で良いのかね?今ならまだ間に合うぞ」

「いいえお父様、ジークが良いのです」 

「だが、お前は王太子妃になる為に頑張って来たではないか。その努力を無駄にして良いのか?」


「お父様、私の幸せは王太子妃になる事ではありません。ジークといられるのなら平民になっても構いません」


お父様は盛大なため息をついた。


「…分かった。認めよう」 

「旦那様、ありがとうございます。では早速神殿に婚姻誓約書を提出して来ましょう」


ジークの言葉にお父様も慌てる。


「これ、ジーク待ちなさい。まず婚約だろう。急ぎすぎだ!結婚はローズが学園を卒業してからだ」

「いえ、旦那様。もうお嬢様から婚姻誓約書に署名を頂いております。私としましては、もうお嬢様とは夫婦のつもりです」


お父様の顔がますます青くなって行く。なんかゴメンお父様。


「だがジーク、私とて娘には幸せになって貰いたい。騎士爵だけでは…」

「分かっております。その件に関しましては私の実家の件を解決すれば済む問題かと。すぐにでも処理してまいります」


ジークの実家?何の事だろう?お父様は知っているのかしら?


「分かった。幸せにしてやってくれ、大切な娘なんだ」

「お父様…」


「旦那様、私は婚姻誓約書を神殿に提出した後、実家に向かい爵位継承権を奪って参ります。では!」


ジークは素早く立ち上がり扉に向かう。


「ジーク!」


私が呼び止めると振り返って、私の顎を持ち上げキスをする。


「いい子で待ってて。すぐ帰るから」


真っ赤な顔の私を残し、ジークは出ていった。

 

「こらジーク!!親の前で何をする!」


お父様が叫んだ時にはジークの姿は消えていた。


「今更だがローズ、アレで良かったのか?私は不安だよ…」 

「少し早まったかなとは思いますが、後悔はしていません」

「なら良い。だがあいつの愛は重いぞ。覚悟しておきなさい」

「はい」



ジークが隣国に行っている間に王太子妃候補を辞退し、無事婚約者になる事を回避したのだった。




それから数日後、ジークは帰って来てくれた。そして彼の過去、実家の事を私に話してくれて。


彼は隣国の公爵家の嫡男だったが、母親が亡くなり後妻に入った女が、自分の産んだ子供を跡取りにする為、ジークを刺客に襲わせる。


だが、護衛達の犠牲により生き延びる事が出来たジークは、家には戻れないからと私の住む国に逃げてきた。


それを見つけたのが三歳の時の私だ。避暑の為、滞在していた屋敷近くの森に倒れていたジークを見つけ、家人に助けさせたのだ。


私はジークが目を覚ますまで側を離れず、目を覚ましてからもずっとくっ付いたままだったらしい。


『私の可愛いローズに虫が付いた!』とお父様が嘆いていたとか。お母様は『反対でしょ?ジークに娘が付いたのよ』と言って、お父様を憤慨させたとか。



話がそれたから戻すけれど、ジークは我が家で体を癒し、いつか故国に戻れる日を望んでいたとの事。


でも、この国で過ごすうちに爵位も家の事もどうでも良くなってきたとか。


だけど今回、私との事で爵位を取り戻す必要が出来たから、さっさと故国に戻り自分の暗殺の件を訴え、後妻を排除し嫡男の地位を取り戻したのだ。


ジークの父は、後妻の話を信じ、血塗れの服を見せられ、ジークは盗賊に襲われ死んだものと思っていたとの事。だが、目の前にいる自分そっくりな男をジークと認めない訳にいかなかったそうだ。


ジークは私が学園を卒業次第、私を連れて故国に戻り爵位を継ぐ事になっている。


そして、ジークは無事私の元に帰って来たのであった。



しかし今、私は大変な事になっている。ジークが離してくれないのだ。ジークが帰国して、その日の夜にジークに食べられ名実共に夫婦になった。


「はいベル、あ〜ん」

「自分で食べられるから!」

「駄目だよ。ベルは俺の奥さんなんだから」


「ベル、どこへ行くの?俺も行く」

「ベル、可愛い」

「ベルが好きだよ」


一事が万事、この調子である。愛が重いとはこの事か…。


まあ、私も差し出されたスプーンをぱくっと食べちゃうし、一緒に居て嬉しいんだから重症だわ。



屋敷では仕方ないが学園では一人になれると思いきや、何故私はジークの膝の上に座って授業を受けているのでしょうか?


クラスの皆の視線が痛い。


昼休みになって、友人達が祝福をくれる。


「ベルローズ様、ご結婚されたとか。おめでとうございます」

「隣国の次期公爵でいらっしゃるのね。羨ましいわ」


大凡、好意的に受け止められてはいるようだが、笑顔が引きつっているのは見なかった事にしよう。




そんな時、廊下をバタバタと走る音が聞こえる。ピンク頭の少女が飛び込んで来て私を指差す。


「やっと見つけたわ!ベルローズ・バルガラルド!なんで悪役令嬢のあんたがジークの膝の上に座ってるのよ!そこはアタシの場所よ!退きなさいよ!」


ヒロインは元孤児だが今は男爵令嬢のはず。まったく淑女教育が身に付いていない様子。教室で騒がれると迷惑になるから、先生に許可を貰い空き教室で話をする事にした。



「ここでなら話を聞いてあげられるわ。私に何の用なの?」


「あんた間違いなくベルローズ・バルガラルドでしょ?悪役令嬢のクセに、大人しく悪役してなさいよ!何ジーク攻略してんのよ!」


「なんだお前は?俺の妻になんて口の利き方をする!それにベルはバルガラルドではない。ベルローズ・シュタイン次期公爵夫人だ」


そう、婚姻誓約書を神殿に提出した瞬間から『ベルローズ・シュタイン』なのよ。ジークの姓を名乗るのはまだ恥ずかしい。


「ベルローズ・シュタイン?嘘っ!結婚までしちゃってるなんて、もう駄目だ…」


ヒロインはその場に崩れ落ちた。


「ねえ、どうしたの?」


「だって、このゲームの攻略対象は簡単にヤンデレになるんだもん。一生、鳥籠の中に閉じ込められたり、鎖でベッドに繋がれたり、裸にされて部屋から出られないとか最悪じゃない!」


しゃくりあげながら話すヒロインが可哀想になって来た。


「『鳥籠の乙女』に転生したって気付いた瞬間から、ヤンデレになっても一番束縛が少ない、隠しキャラのジークを狙っていたのに、王太子の婚約者の筈のベルローズはいないし。代わりにヴァネッサとか言う侯爵令嬢が婚約者で、側にジークはいないし」



涙が落ちそうだから、ハンカチを差し出したけど払い除けられて睨まれた。


「あんたのせいよ!攻略なんてしてないのに、王太子がヤンデレ化して付き纏ってくるし!見てよ!居場所が分かる魔道具を首に付けられて外せないのよぉぉぉ」


とうとうヒロインは踞って泣き出してしまった。


「一生、鳥籠の中なんて嫌だ…死んだ方がマシだ…うわぁーん」


「ねえジーク、何とかならない?」

「首の魔道具を外す事が出来れば国外に逃げる事も可能だろうな」


「外せる?」

「ベルのお願いなら、やってやらない事もない」

「じゃあお願い」

「お願い聞いたら、ベルからのご褒美が欲しいな」

「ご褒美って何?」

「夜の…」


怪しい事を言いそうだったのでジークの口を慌てて塞ぐ。



「人が困ってんのに、何いちゃついてんのよぉ!」


あ、ヒロインが切れた。


「ヒロインさん、その首の魔道具をジークが外す方法を知ってるみたいなの。それが外れたら国外に逃げる事になるけれど、それで良ければ助けてあげられるわ」


「本当に?」

「ええ」


ヒロインは私の手を取ってお願いして来た。


「お願い!助けて。国外でもなんでもヤンデレから逃げられるなら、どこへでも行くわ!」


私とヒロインが仲良く会話している事に、ちょっと苛つき気味のジークが彼女に向かって言う。


「その首の魔道具を外す準備に少し時間が掛かる。その間、いつも通りにしていろ。それからベルをあんた呼ばわりするな、触るな」

「分かっ…分かりました。よろしくお願いします」


ヒロインは私の手をパッと離し頭を下げた。


「ヒロインさん、準備が出来たら連絡するわね」

「ありがとう!ベルローズ様!」


ヒロインは笑顔で帰って行った。



ジークの故国には魔道具を研究している機関があるそうで、ジークは公爵家の権力を使ってヒロインの魔道具を外す魔道具を手に入れてくれた。



数日後、首の魔道具が外れたヒロインは私の手配した馬車でこの国を出た。なるべく、この国から離れた所に行ける様にそれなりのお金も持たせた。


「知らない国に行く事になるけど大丈夫?」


「ベルローズ様ありがとう。私は孤児で、この国に未練なんてないから大丈夫よ。本当にありがとう!」


いつまでも馬車の窓から手を振ってくれるヒロイン。無事逃げ切ってくれる事を願うばかりだ。




「ねえベル。俺、ちゃんと約束守ったよ。ご褒美欲しいな…」

「分かってるわよ」


この後、どんなご褒美を強請られたかは、ご想像にお任せしますね。まあ、愛が激重だった事は申し上げておきます…。



 

ヒロイン不在により卒業パーティーでの断罪劇は起こらず、平和の内に終了した。


王太子殿下はヒロインがいなくなって、相当探したらしいけど見つかる訳が無い。あの魔道具は世界中を飛び回る渡り鳥の首に着けさせて貰ったから。


王太子殿下の婚約者のヴァネッサ様には、こっそり殿下の性癖をバラし、ヒロインの様な被害者が出ない様にした。ヴァネッサ様は中々に苛烈な方なので、殿下が鳥籠に飼われないことを祈る。




でもまさか、ジークが隠しキャラだったなんて思いもしなかった。ジークはヤンデレと言うより、溺愛の度合いが激しいだけだと私は思う。


結局の所、何がジークの溺愛スイッチだったのかは分からないけれど。


学園卒業後、隣国に渡りジークは公爵になり私は公爵夫人になった。子供は男の子が四人、女の子が三人いる。まだまだ増えそうだ…。



ジークの愛は重いけれど、私は今幸せです!




Fin

最後まで読んで頂きありがとうございます。


ジークがベルローズとヒロインの会話に出てくる「ゲーム」や「ヤンデレ」等の言葉を気にしていないのは、ベルローズ以外の事はどうでも良いので『聞いてない』と言うのが本当の所です。


溺愛系は大好きです。でろんでろんに甘やかして欲しい。また、書きたいジャンルです。


ありがとうございました。

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