第29話 教室内を徘徊する者……(5)
「へぇ、そうなんだ」
「何か、怖いよね」
「うん」
と、また他の女子たちが顔色を青ざめながら、他人の摩訶不思議体験、恐怖体験を感心したり、畏怖したり、頷いたりすれば。
「私も昨日の体育の時間に、体育館への移動の最中に忘れ物を思い出して、慌てて教室へと忘れ物をとりに帰り、教室の扉に手をかけたら、誰かが教室内を歩き回っている足音が聞こえたの。だから私は『あれ? まだ教室に誰か残っていたんだ』と思いながら教室の扉を開けたのよね。そして教室の中を覗くと人の姿は無いのよね。だから私は『あれ、可笑しいな?』と思い。『今の私の空耳や勘違いだったのかな?』と思いながら。自分の机へと向かい、忘れ物の巾着をカバンの中から取り出して踵を返して教室の机へと向けて歩きだせば、パタパタと足音がまた私の後ろから、気のせいや空耳ではなくちゃんと聞こえてきたの。だから私の身体から血の気が一瞬で引き、顔が蒼白。──私急に恐ろしくなり、慌てて教室中から駆け足で体育館へと怖いから逃げたの。そして皆へと合流した。だから私は直ぐに、誰かに自分が教室で不思議な体験をして怖い思いをしたのだと告げようとしたけれど。ふと私、もしもそんな事を誰かに告げたら。皆が私の事を可笑しな娘。気の触れた娘だと思うかもしれないから。昨日は誰にも話さずに、自分の胸の奥にしまったのだけれど。私のような不思議な恐怖体験をした人が他にも居たから助かったよ……」
女子達の中からほっとした声……。
まあ、安堵した声が漏れればね。僕たちの教室内で起きた摩訶不思議な、自分たちの瞳には映らないけれど。自分たちの耳には聞こえることがある恐怖体験を他にもして、己の心の奥底へと忍ばせ、隠していた者たちが他にも、自分の恐怖体験を告げていくのだ。
それはこんな感じの恐怖体験だったのだ。
◇◇◇




