表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボッチの僕、イケメンの俺  作者: リディア


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/39

第22話 真琴の部屋で女子会

 私たちは、真琴の部屋にいた。


  金曜の夜。

  テストお疲れ会。


  布団を敷いて、お菓子を広げて——


  いつもの女子会。


「で、美咲」


  真琴が、ニヤニヤしながら言う。


「バイト先、どうだった?」

「どうって……」


  私は、視線を逸らす。


「普通だったよ」

「はい。う・そ〜」


  菜月が、静かに言う。


「顔、赤いよ」

「赤くない」

「赤い」


  真琴が笑う。


「白石くん、めっちゃかっこよかったよね」


  その言葉を聞いて、私は——


  何も言えなくなった。


  確かに、かっこよかった。


  眼鏡を外して、前髪を上げた白石くん。


  接客している姿が、自然で——


  見ているだけで、胸がドキドキした。


「お風呂入ってきなさーい」


  真琴のお母さんの声が、廊下から聞こえる。


「はーい」


  真琴が返事をする。


  それから、私たちは順番にお風呂に入った。


 


  夜、十一時。


  部屋の電気が消えて、私たちは布団に潜った。


  シーツの擦れる音。

  エアコンの音。

  遠くで、誰かの足音。


「ねえ、静かにしてね」


  真琴のお母さんが、ドアを少し開けて言う。


「うん、ごめん」


  真琴が答える。


  ドアが閉まって、足音が遠ざかっていく。


  私たちは、小声で話し始めた。


「ねえ美咲」


  真琴が、布団の中から囁く。


「白石くんに、電話してみたら?」


  その言葉に、私は——


  固まった。


「え?」

「電話だよ、電話」

「無理だよ」


  私は即答する。


「だって、こんな時間——」

「もう十一時だけど、まだ起きてるでしょ」


  真琴が笑う。


「それに、美咲の声聞いたら絶対嬉しいよ」

「そんなわけない」

「あるよ」


  菜月が、静かに言う。


「美咲、スマホ握りしめてるよ」


  その言葉に、私は——


  手元を見た。


  確かに——スマホを、握りしめていた。


「……別に」

「じゃあ、電話してみなよ」


  真琴が、ニヤニヤしながら言う。


「ほら」

「無理だって」


  私は首を振る。


  けれど——スマホは、手放さなかった。


  画面を開く。


  連絡先。


  白石くんの名前。


  通話ボタンが、目の前にある。


  押せば——繋がる。


  でも——


  出たら、なんて言えばいいんだろう。


  出なかったら、どうしよう。


  迷惑じゃないかな。


  今じゃない——


  でも、今しかない。


  指が、震える。


「……押すよ?」


  真琴が、私の肩を揺さぶる。


「やめてよ」

「押すよ?」

「押さないって」

「じゃあ美咲が押しな」


  真琴が笑う。


  私は——


  通話ボタンを、見つめた。


  心臓が、うるさい。


  呼吸が、浅い。


  押す——押さない——


  押す——


  指が、動いた。


  通話ボタンを、押してしまった。


  コール音が、鳴る。


  一回。


  二回。


  心臓が、止まりそうだった。


  三回——


「もしもし?」


  白石くんの声が、聞こえた。


  私は——息を呑んだ。


「あ……白石くん?」

「橘さん?」


  白石くんの声が、少しだけ驚いている。


「どうしたの?」

「あ、その……」


  言葉が、出てこない。


  真琴と菜月が、布団の中で息をひそめて聞いている。


「ごめん、こんな時間に」

「ううん、大丈夫」


  白石くんが、優しく言う。


「今、女子会で……」

「ああ、そうなんだ」


  白石くんが、少しだけ笑う。


「楽しんでる?」

「うん……」


  私は、小さく答えた。


  沈黙が落ちる。


  でも——それは、心地よかった。


「あのね、白石くん」

「うん?」

「この前、バイト先で……」


  言葉が途切れる。


「ごめんね、急に行って」

「いや、大丈夫」


  白石くんが答える。


「むしろ、嬉しかった」


  その言葉を聞いて、私は——


  胸が熱くなった。


「本当?」

「うん」


  白石くんが、また笑う。


「橘さんが来てくれて、嬉しかった」


  その言葉が、胸に刺さった。


「……ありがとう」


  私は、小さく呟いた。


「じゃあ、また明日」

「うん、おやすみ」

「おやすみ」


 電話が、切れた。


 ……プツ。


 その音だけが、やけに大きく聞こえた。


 私は、スマホを耳から離せないまま、

 しばらく動けなかった。


 布団の中が、暑い。


 さっきまで冷えていたはずなのに、

 頬も、首も、熱い。


 心臓の音が、

 布団越しに聞こえる気がした。


 トクン。

 トクン。


「……」


 声を出そうとして、

 やめた。


 出したら、

 何かがこぼれそうだったから。


 私は、ゆっくりスマホを胸に抱え込んで、

 そのまま布団に顔を埋めた。


「……っ」


 息が、変なところで止まる。


 シーツが、頬に擦れる。


 そのまま、動けない。


「……美咲」


 真琴の声が、すぐ近くで聞こえた。


 小さくて、

 でも、楽しそうな声。


 私は、答えなかった。


 答えられなかった。


 代わりに、

 布団の中で、指をきゅっと握った。


「……ね」


 菜月が、囁く。


「今、起きてるよね」


 私は、布団の中で、

 小さく頷いた。


 多分。


「……声」


 真琴が、にやっとした気配で言う。


「めっちゃ、違ってた」

「うん、可愛かった」

「……」

「電話出た瞬間から、もう」


 言葉を探して、

 途中でやめる。


 その間が、

 余計に恥ずかしい。


 私は、布団の中で、

 さらに顔を埋めた。


「……もう、やめて」


 声が、ちゃんと出てない。


「無理」


 真琴が即答する。


「今日、絶対寝れないでしょ」


 菜月が、静かに言った。


「……今の、美咲」


 少し間を置いて。


「目、閉じても、声出てくるでしょ」


 ……出てくる。


 白石くんの、

 さっきの声。


「橘さんが来てくれて、嬉しかった」


 その一言が、

 まだ、耳の奥に残ってる。


 私は、布団の中で、

 スマホをもう一度握った。


 画面は、暗い。


 通話履歴だけが、残っている。


 五分。


 たった、それだけ。


 なのに——


「……」


 胸の奥が、

 ずっと、落ち着かない。


「ねえ」


 真琴が、囁く。


「……寝る?」

「……無理」


 声が、かすれた。


 二人が、

 小さく笑う気配がした。


 エアコンの音だけが、

 部屋に流れている。


 私は、目を閉じた。


 閉じたけど——


 白石くんの声が、

 何度も、頭の中で再生される。


 今日、

 絶対。


 寝れない。


 そう、確信しながら——


 私は、布団の中で、

 スマホを離せないままだった。

 本日も読んでいただきありがとうございます。

 もし「続きが気になる」「面白かった」と思っていただけたら、ブックマークや評価をしていただけると執筆の励みになります!

 どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ