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【12月】後日談

 ありがたいことに、私のスピーチは小春ちゃんのご家族に大変好評だった。お母さんには「個人的MVPよ!」と言ってもらえて、お兄さんからも丁寧なお礼の言葉を頂いた。あと、お兄さんの奥さんは私のスピーチで泣いてたらしい。全く面識ないんだけどな。でも、私を知らない人にも、私の言葉がちゃんと届いたってことだよね。

 

 そして、肝心の小春ちゃん。後日、LINEが届いた。小春ちゃんが私のスピーチをどう思ったのか、その感想を知るのは依然として怖いまま。しばらく既読を付けられずにいたが、やがて意を決し、内容を確認する。


『この間はありがとう!大学は違うけど、中高で過ごした時間が一番長くてお世話になっていて、その後もご飯に行って、今の私が色々話せるのはあなただったので、一番にスピーチをお願いしたいと思いました。』


 そんな、お世話になってるのは私の方だよ。ランチに行くのだって、私は大した話もできず、小春ちゃんの話を聞くばかりなんだから。


『スピーチは本当に断られると思ってたから、悩んで引き受けてくれて嬉しかった!内容考えるのも、話す練習するのも、きっと時間かけてくれたんだと思うし、実際にスピーチを聞いて、あなたに頼んでよかったなって思えました。』


 私は少し、思い違いをしていたようだ。

 友人スピーチを成功させること。私はそれこそが小春ちゃんの期待に応える術であり、小春ちゃんにとっての一番の友達、「本当の友達」になる方法だと考えていた。

 私は最初にスピーチを頼まれた時、「どうして私!?私が人前で話すのが苦手って知ってるでしょ!?」と思った。そんなの、もちろん小春ちゃんだって分かっていた。よく分かっていたからこそ、私が断るだろうと予想していた。それでも私に頼んだのは、小春ちゃんにとって、私が一番の友達だったから。


 私自身が分かっていなかっただけで、私はとっくに小春ちゃんの「本当の友達」だったのだ。

 そして、私は小春ちゃんの予想に反してスピーチを引き受けた。その時点で、小春ちゃんの期待に応えられていたのだ。


 良かった、引き受けて。

 私は改めて、心からそう思った。


 ***


 5月にスピーチを頼まれて、式があったのは11月。

 私の心に色濃く残る半年間だった。


 5月の、ひとり旅を通して抱いた覚悟。

 6月の、スピーチ作りが捗らない焦燥感。

 7月の、スピーチ作りが一歩前進した達成感。

 8月の、友達と思い出話で盛り上がった楽しさ。

 9月の、スピーチを成功させたい情熱。

 10月の、スピーチ練習に勤しんだ必死さ。

 11月の、一時の緊張。そして、永遠に続くかのような喜ばしい時間。


 あの苦悩も、この幸せも、全てが愛おしい。

 

 一連の記憶を小瓶に保管して、老後に見返して暮らしたいぐらいだ。

 しかし、こめかみから記憶を抽出できる魔法の杖は実在しない。

 だから私はこうして綴ることで、大切な思い出を丁寧に収めていくのだった。

読んで頂きありがとうございます!

至らぬ点があればすみません。

完結まで頑張ります!

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