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入院直前、風邪を引く。



少々、想像力を刺激する発言がございます。


露骨な事は書いていないつもりですが、お気をつけ下さいますよう。




 手術後、まるまる二週間が経ちました。早い。


 だいたい二週間前後でほぼ手術前の生活に戻れるという話だったのですが、そうですね、概ね元に戻りました。


 腫れや浮腫みは無くなりましたし、痛みと違和感もだいぶ軽減されました。とは言いましても、今も両目頭とも『なんか居る』感はありますし、瞬きの際に微かに痛んだり、表皮が引っ張られるような気がしていますが、まあ実際チューブが入っている訳なので、これに関してはもう仕方無いんでしょうね。


 あと不自由な事と言えば、そうだなあ、チューブが留置されている間は目を擦ったり目の周囲を強く圧迫したりはしないが吉だそうなので、ずーっと洗顔・スキンケアがおっかなびっくりのままなことかなあ。


 手入れはしている筈なんですが、なんとなーく目元を中心にカサカサしてきたような気がしなくもない。季節的な問題もあるかも知れないですが。あとはあれかな、一日四回、二種類の目薬を点さなければならないのですが、これが大高ヘタクソも良い処でして、毎回ダラダラ溢れさせては慌ててティッシュで拭き取るを繰り返しているんですが、……そうね、これが一番目元のみならず周辺一帯の肌に良くないような気がしてきた。拭き取った後は、そういや何のケアもしてねーわ。




 ―――という気づきを得た処で、今回は、入院前に風邪を引き、余計な心労を得てしまった話をしようと思います。


 *


 COVID-19 が世界に猛威を振るって以降、入院するに当たりましては、誰であれ何処かしらでPCR検査を受け、感染していない事を証明してから、という流れになった事かと存じます。


 大高も勿論その例には漏れず、社畜時代は始発出社で己の仕事を片付けてまで指定の時間に当該病院に駆け込んでいたものですが、今回、St.M医科大学病院へ入院するに当たりましては、なんとPCR検査が必須ではありませんでした。


 へー、良いんだ今回は。じゃあもう入院当日まで医者に行かんで済む訳ね。


 ―――などと術前検査の全てをG先生に決断を迫られた初診の段階で終わらせていた大高、そんな長閑な気持ちで日々を過ごしていたのですが。


 いざ鎌倉の二日前。


 思い切り風邪の諸症状の発現を見まして、頭を抱えました。


 昼頃に何か変じゃね? と思ってからがあっと言う間で、その日の夕方には、熱こそ無いものの喉は腫れ洟はダラダラ。何なら若干腰が痛いような気すらする。この微妙な腰痛というのが曲者で、過去の経験上、これは翌日あたりに大熱を出す予兆だったりする。マジかこの後に及んで。


 ……いや、でもね、実はちょっと嫌な予感はしていたのです。何故って、数日前から連れ合いが明らかなる風邪をどうやら職場で貰って来た臭く、洟をかんでは躰のだるさを嘆いていたから。


 しかし彼も発熱には至らず仕舞いでしたので医者に掛かることも無く、市販薬を飲み飲み真面目に出社する姿を横目に見つつ共に暮らしておりまして、万が一にも貰っちゃったら面倒臭えなあと思っていたのは確かですが、―――まさか現実になってしまうとは。


 入院二日前の深夜。

 ほぼ平熱の体温計を片手に唸りましたね。


 九割タダの風邪だろうとは思いました。しかし、残る一割でコロナ、ではないまでもインフルである可能性を否定できない気がする。だって、この時点で既に都内でのインフルの流行状況は、注意基準を超えてましたから。


 そして連れ合いは正しく都内某所に通勤しており、日々、不特定多数の人々との接触を持っている。


 ―――いや、風邪だと思うよ、思うけれどもこの自己判断が間違っていた場合――――――最悪、院内感染からのパンデミックの発端になってしまう可能性が、ゼロではない。


 何せ眼科の入院患者は、お齢を召した方が圧倒的に多いのです。つまり、同室の患者さん全員の体力及び抵抗力が心許ないかも知れない、などと思ってしまったら、さしも楽天的な大高もそのまましれっと入院するのは怖気が付きまして、その場で掛かりつけの耳鼻科の予約を取りました。休診日だろうが深夜だろうがウェブ予約が可能な病院で、本当に良かった。


 で、翌日。


 止めどない洟に苦しみつつ訪れた耳鼻科で、大高は笑えない現実に気付かされることになりました。


 最初は何てこたぁ無かったんです。至って普通に、今日はどうしました、また眩暈? と尋ねられた処へ、『実は明日、入院手術が待っているんだけれども、どうやら風邪を引きました。熱は無いんだけどもこのまま行って良いもんですか?』などという胡乱な質問を返しまして、先生を苦笑させたくらいで。


「―――成程、喉は腫れてるね。でも熱は無い。あとは洟が止まらない、と。くしゃみは?」


「くしゃみは出ないですねえ」


「そっか。で、何処を何の手術するの? 全身麻酔?」


「いえ、目なので局麻と聞いてます」


「そうかぁ。―――ただの軽い風邪、だとは思いますけどねえ、でも事情が事情だしちゃんと検査しましょう。時間は大丈夫です?」


 という事で検体を取って貰い、隔離室に案内されて結果を待ちまして、みごと無罪放免を勝ち取ったまでは良かったのですが。


 この耳鼻科の先生がですね、最後に恐ろしいことを宣ったのです。


「コロナもインフルもマイナスですので、問題なく入院できますよ。でも、洟の事は執刀医に言っといたほうがいいかもね。あなたくらいの症状なら手術するのは問題ないだろうけど、局麻でしょう? もしも明日までにくしゃみが出るようになったらちょっと、て思うからさ」


 ―――何だと??


「……それは、真っ最中にくしゃみが出たら、て話です?」


「そうそう。手術するの、目なんだよね?」


「!!」


 ――――――なんちゅう事を想像させるのかこのセンセイは!!!


 身の毛がよだっている大高を余所に、先生は何処までも朗らかでした。


「喉の炎症を抑える薬と鼻通りを良くする薬を出しときますね。それではお大事に。行ってらっしゃい」


 ―――行ってらっしゃいじゃねーわ。それでなくとも厭だった手術がより一層イヤになったじゃねーか。どうしてくれる。


 その上、そんな暗澹たる心持で診察室を出た大高を待っていたのは、そりゃそうだの金額の会計でした。……そういや去年あたりから自費になってましたね、PCR検査も。いやあ追い打ち掛けてくれるわー。至れり尽くせりだわー。そう思いながら薬局で薬を出して貰い、ヨロヨロ帰宅するなり即座に服薬し。


 その後も一向に止まる気配を見せない洟に苦しみつつ入院仕度を整えながら、大高は祈り続けましたとも。何卒ここまでの症状で収まってくれますように。間違ってもくしゃみに進行しませんように。この際、洟は止まらなくても良いです。万が一にもくしゃみに進行するなら、ついでに発熱もお願いします。高熱が出ても文句は言いません。何なら両親の位牌をこの上なくピッカピカにしてから行きますんで、どうかどうか、くしゃみだけは勘弁してくれ!!!


 


 ―――というような間抜けな前日を迎える羽目に陥りますので、入院前の健康管理は常にも増して注意をしといたが良いですよ、というお話でした。


 いや、真面目な話、皆様、くれぐれもお気をつけ遊ばせね。ホントにね。




実際、この前フリがまた良い仕事をしてくれることになります。


次回、七転八倒の手術時の様子を振り返ります。



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