あ。涙点が無いじゃん。
お目に留めて頂きまして、ありがとうございます。
ちょっと長めですが、よろしくお願い致します。
ご機嫌よう。
術後4日め、遮光器土偶からインスマウス人寄りの顔面になった大高です。
前説。を読んで下さった方々が予想より多くて(当社比ですよ当社比)ちょっとびっくりしております。
誠に有難いことでございます。この先も、どうぞよろしくお願い致します。
さて今日は、『涙道閉塞症』とはどんな病気で、どういう自覚症状があって、どのような対処法があるのかなどをお話しようと思います。
*
皆様ご存じかとは思いますが、ヒトの目には涙点というものが存在します。
ピンと来ない方は、目頭の下瞼をちょろりと捲ってみて下さい。小さな穴が開いてません? 粘膜の際に針で突いたくらいの小さい穴がポッツリある、ソレですソレ。
この穴は左右とも上下にひとつずつあり(稀に上側には無い方がおられるらしいですが)、何の穴かと言いますと、文字通り涙の排出口として存在するそうです。
この穴から鼻の内部まで涙の通り道があって、常に余剰の水分を流し続けてくれている。
そのおかげで、ヒトは何事もない日常生活に於いて、何やら目が潤んで鬱陶しいなぁとはならない訳です。
そして何かの理由で許容量を超えて涙が分泌されますと、当然、内部に流しきれなかった分は外に溢れて来ることになる訳ですが、この溢れる原因が一時的に大量に涙が出ちゃったから、とかではなくて、何らかの理由で涙点が狭まったとか塞がったとか流す先の管が狭まったとか詰まったとか、そういう機能上の問題で常日頃から涙がだーだー外に流れ出て来る、というような状態にまでなりますと、『流涙症』という病名が付く。
で、『何処かが塞がってる』が為に『流涙症』になっている場合、何の手も打たずにいると、やがて問題の『涙道閉塞症』、文字通り涙の通り道が閉じて梃でも涙が鼻に抜けなくなってしまい、常に涙が顔面に流れっぱ、という事態に至る。
万人に当て嵌まる正しい説明じゃないかも知れませんが、大高はこんな感じで最終的に(主として執刀医が)面倒な手術が必要な状態にまで進行させてしまいました。
……いや、コトの始まりはね、たぶん単なる結膜炎みたいな事からだったと思うんですよ、いま思い返すとですけども。
ある朝起きたら、何事?! と言うくらい左目が真っ赤っかになってたことがあったんですよね。何となく痒いような腫れぼったいような、あーもー鬱陶しい、てかこれまさか脳の血管の代わりに目のが切れたんじゃないよね?? と不安になるくらい白目が物凄い状態になってたんですが、どうにも『目が異様に血走ってます』程度の理由で仕事に遅刻するを潔しとしなかった当時の大高(社畜思考だったんです)、午前休取って眼科に行こうとか天から思い付きもせず、当時絶賛治療中だった黄斑浮腫の関係で貰っていた抗菌系の目薬でも点しときゃいいや、で乗り切ってしまったことが、そうだなー、延べで四回くらいあったかなー。
で、暫く経ったある夜のこと、最近左目がしょっちゅう涙目だなあ、そろそろ業務に差し障って来たなあ、とか思いながらスキンケアしてまして。
本当に何の気なしに左の下瞼を捲ってみたんですよ。
そしたら、涙点が無くなってました。
―――あれ? ここって穴が開いてなかったっけ?? 何やら薄っすら痕跡はあるけど、つるんとしたただの粘膜になってるじゃん。
流石にびっくりしまして、即、右目も確かめたんですが、この時点では右にはちゃんと涙点がありました。
いやそうだよねココ穴が無きゃおかしいよね??? えーじゃあ左側のは何処いっちゃったんだよ。
こりゃ次に大学病院に行ったら、Y先生に訊いてみにゃ。
そう心に刻んだ大高、次の経過観察の時、忘れずちゃんと相談したんです。
先生、診て貰ってる左目なんですけども、なんか涙目になるなーと思ってたら涙点が無くなってるみたいなんですけど何ですかコレ、と。
「どれどれ。―――ほんとだ、無いね」
「なんで無くなっちゃったんですかね」
「何か変わったことありませんでした?」
「あー何でか白目がヤバいくらい赤くなったことがありましたねえ」
「それ地元の眼科とか行きました?」
「いや、貰ってる抗菌系の目薬注してたら治りました」
「―――うーん。そうか。一時的に塞がってるだけかもしれないから、ちょっと様子を見ましょう。目薬、余分に出しますから、気になる時は使って下さい。ドライアイ用のも追加しときます」
みたいな遣り取りを、確かしたと思います。で、目頭の辺りをマッサージすると復活するかもしれないから、とやり方も教えて貰いまして、そこから暫く、地道に揉んだり点したりしましてね。
確か二カ月かそこらは様子を見ていたと記憶しています。
しかして、大高の涙穴は、一向に復活する気配を見せませんでした。
それでY先生も『これはもう閉塞してますね』と仰いまして、おもむろに治療法を説明してくれた、のは良いんですが。
これが当時の大高には恐怖でしか無くてですね、しかもY先生たら笑いながら『やってもまた塞がることが多いんだけどね』とか仰るものですから、そらもう思いっきり腰が引けて『結構です涙目くらい我慢します!!!』って言っちゃったんですけれども。
えーと、どう説明すれば、あの時の大高の恐怖が伝わるだろうか。
―――お風呂の排水溝が詰まった時と同じ、と言えば良いかも知れない。
それでは皆様、うっかり排水溝のゴミ受けを石鹸カスかなんかで固着させちゃった上に髪の毛かなんか詰めちゃった場合の掃除をご想像下さい。
まず、固着している処を物理でこじ開けますよね。で、割り箸かなんかで詰まってるブツを排除してから、ホース突っ込んでガンガン水を通して、排水管の流れが良くなるまで押し流す。
どうでしょう、これとほぼ同じことを『涙点を起点に水の通り具合を逐一本人確認しながらやります』て言われたら、怖くないですか?
大高はめちゃくちゃ怖かったです。絶対ヤダと、即座に思いましたね。
だって、瞼ですよ瞼。何やってんのか患者本人に丸見えと言って過言でない状況下で、点眼麻酔だけでやるって言うんです。
しかもですよ、一旦これで改善されたとしても、再び塞がる可能性が高いので、そうなったらこの開通工事の繰り返しになるかも知れませんとか聞かされたら、いやもう勘弁してくれよ、てなりません?
しかもしかも、涙道閉塞症って、患ったままだとしても、基本、涙目で鬱陶しいだけなんです。
そりゃ若干は世間が歪んで見えにくく、少々の目脂くらいは出ますが、それ以外の不利益と言えば、海生哺乳類なみにだーだー涙が出て来るんでハンカチが手放せず、事情を知らない人からは突如泣き出す情緒不安定の人みたいに見られるとか、ファンデーションがすぐ撚れるとか凝ったアイメイクが出来なくなるとか目元の皺ケアに手間が増えるとか、そんなもんです。
だから大高、『細菌感染して涙嚢炎を起こしたり、目元の皮膚が爛れてきちゃったりするまでは、本人さえ我慢できるなら治療を焦らなくても大丈夫ですよ』というY先生のお言葉に縋って『涙如き我慢します!』と言い切り、その言葉通りここから約二年ほど放置しまして、ふと気付けば何時の間にやら右目の涙点までもが消え去りましたが、でもいいです我慢し続けます涙くらい、でとうとう行きつくとこまで行きついた訳ですが。
―――この、いっちばん最初の時点で開通させときゃ、少しはマシだったのかもしんねえなー、と、ちょっと思わない事もない今日この頃。
何故なら、後日判明した事ですが、当時の同僚のご母堂が過去に同じ涙道閉塞症を患い、早い段階でこの洗浄開通工事(工事って言うな)をなさったのだそうで、以降たいへん症状が軽減し、どうやら再発もしてないようだ、と聞き及びましてね。
あーやっぱり先延ばしにして良いことって世の中いっこもねんだなぁ、とか。
…………そうなんだよなこの時点で開通させときゃ、東日本で五指に入るらしい涙道専門医をして『手強いなーもー』とぼやかせるほどの長時間の手術に息も絶え絶え耐えずとも済み、その後一昼夜にわたって目が開かない上につくづく痛いというメにも遭わず、万人が認めるであろう完璧な遮光器土偶顔にもならず、良いだけ腫れあがった挙句に上半分が濃淡様々な内出血で実に華々しい顔面を晒してヨロヨロ公共交通機関を乗り継いで帰宅せずとも済み、そこから延々唸りながらアイシングし続けたにも関わらず未だにどう見ても斑に黄色いインスマウス人、みたいな事にならなかったのかも知れないなー、とか嘆じるくらい、えーと、手術がツラかったので。
ですからね、もし、同じ病を患い、同じ理由で開通工事(だから工事って言うな)に及び腰になっている方が居られましたらね。
声を大にして言います、早い段階で涙点から洗浄して貰いましょう!
あんだけ怖い怖い言っといて今さらナニ言ってんだオマエ話が違うやんけ、とお思いでしょうが。
今の大高、過去の己の耳を掴んでとくと言い聞かせたい気持ちで一杯です。
―――いいか、オマエがびびり散らしてやんなかった洗浄な、結局は地元で突発的にやらざるを得なくなるうえ、結果、手に負えないっつって大病院に回されて、笑えない手術を受ける羽目になるからな! そんでな、たかが洗浄時の苦痛なんざ、マジ4日前の手術の比じゃないんだからな!!!
ほんっっとうに全然まったく比ではないので、お悩みの方、速やかにさくっと洗って貰いましょう。大丈夫、ちょっとチクチクするだけで、プールで鼻に水が入るのと大差ありません。費用だって雲泥の差なんですから、さんざっぱら脅すような事を言った後でアレですが、先送りにするともっとずっといろんな意味で怖いメに逢わされますから…………!!
東日本五指の名医はマジ良い先生だと心から信頼しておりますけれども、それをしてあんだけ苦しかった事を思うとねえ、もう、―――洗っとけ、早い段階で、としか。
―――や、何ともお見苦しい処をお目に掛けました。
結構な長文にもなって参りましたので、本日はこの辺で失礼させて頂こうかと存じます。
次回は、先ほどちょろっと申しました『プールで水が』の辺りの事を、もう少し詳しく振り返る予定です。
若かりし頃、ラブクラフトが好きでした。
好きな割には寝落ちる事が多かったですが(笑)
あの舌噛みそうな禍々しい神サマたちも面白かったですが、井戸にとんでもないモノが落ちて来て一家がだんだんおかしくなっていく話、好きだったなあ。
こないだ初めてニコラス・ケイジ主演で映画化されていたことを知ったんですが、見るか否かを迷っております。どうしたもんかなあ……




