8、キス
「ガルルッ!!」
美魅は夏希の腕に抱きつき、蛍を威嚇していた。
まるで、蛍から夏希を守っているみたいだ。
「む、軽く傷つくな。」
蛍は美魅の隣を歩いていて、苦笑いしていた。
「うるさい!!夏希に変なことしたら私が許さないんだから!!」
「む、聞き捨てならんな。私は夏希に変なことをするつもりはない。ただ、一緒に登下校をしたいだけだ。」
ムスッと、蛍はちょっと怒った。
そんなやり取りを見ていた夏希は、恐る恐る美魅呼んだ。
「み、美魅ちゃん…。」
「何!?」
「っ、あのさ…そんなに天水さんを怒らしちゃダメだよ?」
「っ…うるさいうるさい!!いいから夏希は委員長に近づいちゃダメ!!」
「さっきからそればっかりだけど…何で?天水さんはいい人だよ?」
「っ…だって…。」
「だって?」
美魅は顔を真っ赤にして、震えた声で言った。
「夏希が、私以外の人と仲良くしてるなんて、嫌なの…。」
「っっ!!」
夏希も顔を真っ赤になってしまった。
「む、やはり2人は付き合っているのか?」
「ち、違いますよ!!」
夏希は必死に否定する。
「…。」
だが、美魅はずっと黙ったままだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「夏希、ちょっと来なさい。」
「えっ?」
学校に着いて、夏希は教室でゆっくりしていたら、美魅が夏希の目の前に現れた。
「ちょっ…待って!!」
美魅は夏希の腕を引っ張り、椅子から無理矢理立たせる。
そして、急ぎ足でどこかへ連れていこうと歩き出した。
「み、美魅ちゃん!?どこに行くの!?」
「……。」
美魅は夏希の言葉を無視して、階段を昇り始めた。
階段の先には、屋上しかない。
普段、屋上の扉は鍵が掛かっているはずだが…。
「えっ!?」
ガチャッと、普通に扉は開いた。
「ここの鍵、壊れてるのよ。覚えておきなさい。」
「は、はい…。」
美魅は夏希を連れて、当たり前のように屋上に入った。
「ふわ…。」
屋上に入った直後、優しい風が夏希を出迎える。
「うわぁ…風が気持ちい〜!!」
夏希は笑顔で空を見る。
「…ねぇ、夏希。」
「あ、はい?」
美魅はギュッと夏希の腕を握り、真っ直ぐ夏希を見る。
「昨日の事…なんだけど…。」
「っっ!?」
夏希の胸がドキッとなる。
昨日の出来事が頭の中で繰り返される。
「告白の答え…昨日と変わらない?」
「…はい。」
夏希は優しく、返事をしたつもりだった。
だけど、美魅の心はまた少し傷を負う。
「やっぱり…。だけど、私の気持ちも、変わってないよ?」
美魅は、軽く夏希を後ろへ押す。
夏希の後ろは壁で、夏希は美魅に壁に押し付けられた。
「み、美魅ちゃ──」
夏希の言葉は、美魅の“唇”によって、邪魔された。
「っぅ…!?」
美魅と夏希の唇が重なる。
夏希は突然すぎて頭の中が真っ白になる。
「…。」
そんな夏希に気づいた美魅、目が意地悪な目に変わる。
「っっ!?」
夏希の口の中に、美魅の甘い舌が入ってきた。
抵抗出来なかった夏希は、美魅の侵入を許してしまったのだ。
そうなってしまったらもう遅い。夏希は美魅のされるがままになってしまう。
主導権は美魅が握ってしまった。
「っん…んぅ…。」
「はぁっ…。」
数分間、美魅は夏希の口を犯し、解放した。
「は、はぅ…。」
力が抜けた夏希は、ズルズルと石の床に座る。
「クスクス…可愛い。」
息が切れて、ハアハアと息をしている夏希を見る美魅の目は…いつもと違う、男の目だった。
「夏希…。」
美魅は座っている夏希を抱き締める。
「ゴメンね、急にキスしちゃって…。しかもディープ。」
美魅はクスクスと笑う。
「私の口の中を、夏希の味で“消毒”したかったの…。」
「消毒…?」
「ううん、何でもない。気にしないで。
それと、私の事、嫌いに…なった?」
美魅の心が、ドキドキしているのが分かった。
「そんなこと言われたら…嫌いになれないじゃないですか…。」
「クスッ…ありがとう。」
「でも、もういきなりキスするの止めてくださいね!?今度したら、本気で怒りますよ!!」
「ハイハ〜イ。」
「ぅ…本当に分かってるんですか…?」
「分かってるわよ。夏希は、男の子にディープキスされて、ドキドキしている変態さんだって事。」
「なっ!?違っ…。」
「アハハハ!!」
美魅は笑って、屋上から出ていった。
「あ!!待って!!」
夏希も美魅の後を追いかけた。