10、デパートへGO
「明日、デパートに行きましょ。」
「えっ?」
放課後、夏希と蛍と美魅の3人が一緒に帰っていると、突然美魅が笑顔で言った。
「行くのは駅前のデパートかの?」
「そうよ、さすが委員長。察しがいいわね。」
フフンと、鼻を鳴らして夏希を見た。
「で、行くでしょ?明日。」
「明日…か。確かに明日は土曜日で学校は休みですけど…。」
夏希的には、土日はゆっくりしたかったのだが。
「んー!?行かないの!?」
「行きます…。」
「フフーン、それでいいのよ。」
夏希の背中をバシバシ叩いて喜んでいる美魅。
その隣で、蛍が目を輝かしていた。
「わ、私も行ってよいかの!?」
「え?私は、そのつもりだったんだけど…。」
「本当か!?嬉しいぞ!!」
「っっ…特別なんだからね!?本当は、夏希と2人きりがよかったの!!」
すると、だんだんと美魅の顔が真っ赤になっていく。
「美魅ちゃんって、素直じゃないですよね〜。」
クスクスと笑っている夏希。
「うるさい!!バカっ!!」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
翌日、駅前。
「ふむ、美魅はどこじゃ?」
「駅前にある、噴水前って言ってましたけど…。」
夏希と蛍は、とても広い駅前の噴水の近くにいた。
夏希は、太股までの長さのジーパンを履いていて、真っ白な半袖のパーカーを着ていた。
綺麗な長い黒髪に似合っていた。
蛍はデニムのハーフパンツを履いていて、オレンジ色の半袖のTシャツを着ている。
「おーい!!コッチコッチ。」
すると、近い距離から美魅の声がした。
「あ、美魅ちゃん!!」
少し離れた場所から、美魅が駆け足で、こっちに来る。
美魅は、とても可愛い格好をしていた。
ピンクのワンピースを着ていて、可愛い女物のサンダル。長い髪を1つに纏めて、ポニーテールにしていた。
「2人とも遅い!!」
「ご、ごめんなさい。」
夏希は可愛い美魅に、ちょっと、ときめいてしまった。
「美魅は男だぞ。」
ボソッと、夏希に耳打ちをした蛍。
「わ、わかってます!!」
「ん?どうしたのよ2人とも?」
「う、ううん!!何でもないです!!」
「そう?だったらいいけど。それじゃ早速、行きましょ!!」
美魅は、さりげなく夏希の手を握り、駅前にある大きなデパートを指差した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「キャー!!これ可愛くない!?ねぇ委員長、どう思う!?」
「む、それを言うなら、こっちのほうが可愛いぞ。」
キャッキャと、デパートの中にある女の子の服屋。
美魅と蛍は、はしゃいでいた。
それを後ろから見ている夏希。男の夏希はついていけていない。
「…美魅ちゃんも男の子なのに…。」
今思えば、おかしいのだ。美魅は男なのに、何でこんなにも“女の子”なんだろうか。
美魅自身は、自分の事を男だと自覚しているのに。
「ちょっと夏希!!聞いてるの!?」
「えっ…?」
突然、美魅と蛍が目を輝かしてこっちを見ている。
「な、何ですか?」
「こっちに来なさい!!」
「え…えぇっ!?」
夏希は美魅と蛍に連れていかれた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「キャー!!可愛い!!」
「うむ。」
2人はまじまじと、試着室の中を見ていた。
試着室の中には…。
「あ…あの、何か間違ってる気がするんですけど。」
顔を真っ赤にし、白いワンピースを着た、夏希が立っていた。
「うむ、夏希は今日から、“夏希ちゃん”だの。」
「な、夏希ちゃん!?ボクは男ですよ!?」
「いいじゃない、今日はそれで過ごしなさいよ。」
意地悪な目で夏希を見ている美魅。その手には、夏希の服があった。
「な、何を言ってるんですか!?ってか、いつの間にボクの服を!?返してください!!」
「返すわけないじゃない。夏希は、今日1日その格好で過ごすのよ。」
「グッショブじゃ、美魅!!」
横で幸せそうに見ている蛍。一番喜んでいるように見えた。
「さっき、2人で服を選んでいたのは、この為だったんですね…。」
「そうよ、もうお金払っちゃったし。」
自慢気に胸をそらす美魅。
「えぇっ!?払っちゃったんですか!?」
「観念なさい!!」
「嫌だー!!」
デパートに、夏希の叫び声が、響いた。