第6話 影の告白 後編
窓の縁に手をかけた瞬間、夕方6時のチャイムが鳴り響いた。
その瞬間、背後から影が一気に広がり、全身を包み込む。冷たく、粘着質で、でもどこか淫らに肌を這う感触。
逃げようと足を動かすたび、触手が絡まり、体を押さえつける。体の奥で反応してしまう自分に、恐怖と嫌悪が入り混じる。
「琉依⋯⋯捕まえた⋯これで俺のもの⋯⋯」
甘く囁く声が耳元に響き、体が震える。
息を吸うたびに胸が圧迫され、触手が胸や腰、腕を絡め取り、逃げる力を奪う。
髪をかき分けられ、肩に触れるその冷たさは、人間ではありえない感触。背筋がぞくぞくと震え、全身が硬直する。
目の前の世界が歪む。廊下は伸び、影は生き物のようにうねりながら私を縛り上げる。
絶望が全身を包み込み、冷たい触手が指先まで這い回る。
体の震えと恐怖で頭が真っ白になる中、幼なじみ異形――湊の正体が確実に私を支配する。
「ほら、逃げられない⋯⋯」
触手が腰に巻きつき、胸の膨らみを押さえつけ、体の自由を奪う。
恐怖といやらしさで息が詰まり、声にならない悲鳴を漏らす。
心臓が喉元まで跳ね上がり、思考は逃走以外受け付けない。しかし、触手の冷たさと密着感が理性を少しずつ溶かしていく。
「他の4人は⋯⋯君にはわからない理由で潰された⋯⋯。でも、君は特別だ」
声が低く響く。体を押さえつける触手がさらに強く絡み、逃げる余地は完全に奪われる。
床に滴る影の冷たさと、絡みつく感触に全身が支配される。恐怖で頭がぐらぐらと揺れ、思わず目を閉じてしまう。
「永遠に、俺のもの⋯⋯」
その瞬間、体の自由が完全に奪われ、窓の縁にしがみついた足も、腕も、触手に絡め取られる。
全身が宙に浮き、空気が冷たく、粘着質にまとわりつく感覚に包まれる。
逃げようと力を入れても、触手の力は圧倒的で、体が完全に支配される。
目の前に光景が広がる。瓶に収められた魂――死神のコレクションの一部となった他の4人の姿が、頭の中で鮮明に浮かぶ。
南、真奈、辰一、優志――全員、理由があって潰され、今は永遠に閉じ込められている。
「君も⋯⋯ここに加わるんだ」
囁かれ、触手が体をさらに絡め取る。胸や腰に伝わる感覚は、嫌悪と欲望の混ざった奇妙な感触で、体が逃れようとするたびに反応してしまう。
理性が崩れ、恐怖と甘美が同時に押し寄せる。息は荒く、声は震え、絶望が全身を覆う。
そして、影が体を包み込み、最後の自由が奪われる瞬間、魂が冷たい瓶の中に吸い込まれる感覚が走る。
全てが閉ざされ、世界は静寂に沈む。外界の光も音も、存在しないかのように消え失せた。
窓の向こうの夕焼けが最後の希望だった。だが、もう手に届かない。
背後から囁く声だけが、永遠に私を支配し続ける。
「これで⋯僕のコレクションに加わった⋯」
声は囁きのようで、誰のものか分からない。湊なのか、異形なのか、それとも私の幻聴か。
濃く暗い空気の中、瓶に魂が吸い込まれるような感覚。意識が引き裂かれ、身体は冷たく宙に漂う。
外の光は遠く、時間は止まり、世界は影だけに覆われた。私の名前が呼ばれたのかも分からないまま、全てが暗闇に包まれる。
終わった――でも、胸の奥にはまだ、湊の愛が、影が、永遠に私を支配し続ける予感だけが残った。




