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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界転生したら、世界が色づきました…

作者: 蛹猫

この物語の序盤を読んで、気分が悪くなる方もいるかと思います。

無理せず、読み進められる方にだけお願いいたします。

初めての小説投稿、誤字脱字などないように気を付けますが、

暖かく見守っていただけると助かります。

優しい声と笑顔に包まれた我が家…

母親は専業主婦で、父親は大手エリートサラリーマン

大きな一軒家に綺麗な家、常に笑顔が絶えず理想の家庭だ。


「テストの点数がすごくいいじゃないか!」

「ほんとね…お母さんは、鼻が高いわぁ」

「えへへ、でも100点取れなかったのは残念かも…」

「満点もいいが、90点も取れるだけすごいぞ!」

「そうよ~お母さんは昔勉強が苦手でねぇ…」


明るい話声が、広いリビングに響き、暖かい食事が食卓に広がっていた。

食卓には、三人分の食事が置かれて栄養バランスも考えれていた。


沢山頭を撫でられて、頑張りを認められて美味しいご飯に暖かい家庭

本当に幸せそうな世界。


僕は、今日も万年床の薄っぺらくなった床のように冷たい布団にそっと耳を澄ませて弟の家族団欒を聞いていた。

昔から二人は、俺のこととなるともめていたが、弟の功績でそれはなくなった。

弟は、野球部で部活も勉強もしっかりと頑張っていた。


「それに比べて、いつもそわそわと落ち着きなく、学校でも注意ばかり受けて…」

「友達もできないし空気も読めない…言葉のままに受け止めるからお母さん疲れちゃったわぁ」

「今じゃ引きこもって不登校だしな」

「お父さん!お母さん!お兄ちゃんをそんなに責めないでよ…」


弟の寂しそうな表情をみて二人は

「優しい子ねぇ」

「弟は、兄と違って勉強もできる上に性格もいいときたもんだ」

と、困った表情をしながら、再び弟と会話を続けた。


僕は…どうして…生まれてきたのかな

人の話を最後まで聞くのが苦手だ。

いろんな刺激で、苦手が沢山で運動もできなくて

みんなのお話もよく分からないし物忘れも…

悲しい、孤独を感じる。

誰も理解してくれない。


冷たくて物が少ない小さな部屋で、今日も家族団欒を聞いている。

昔から、全然うまくいかない

学校も家も僕の居場所はない。

苦しくて本当に苦しくて寂しい…


窓から見える景色は、灰色の空に濃い灰色の鳥が飛んでいる。

部屋も何もかも灰色に見えて色を感じない。

いつから、世界に色が消えたんだろう…


また、それから何時間も時間がたちいつの間にか深夜になっていた。

部屋にカーテンはなく、綺麗な星々が輝いていた。

小さな足音が俺に部屋の前で止まって、そっと扉が開いた。


「兄さん…」


囁きのような声が、静かな部屋に響いた。


「体調大丈夫?これ、お菓子と今日の残りを少し持ってきたんだ。食べれるかな?」


ティッシュに包まれたクッキーは、手作りのようで

確かに昼間に甘くていい匂いがした。

夕飯の残りも小さなタッパーに詰め込まれていて、弟がこっそりと

詰めてくれているのが分かった。

弟は、毎日食事をこっそりと運んでくれていて、母親には育ち盛りということで、

弟用の夜食が準備されていた。

それを俺にもってきてくれている。

いつから、食事をまともにしていないのかわからない。

僕には、食事でも特定の条件ではないと口に合わず、些細な刺激にも弱い。

母親は、それに疲れてまともに食事を準備しなくなった。


『毎日同じものを作らされて…笑顔の一つもない。作り甲斐がない』


これが、母親の僕への口癖


「…いつもありがとう。頼りない兄でごめんなさい」

「そんなことないよ。お腹すいてるよね?食べれそうかな」


そっと、タッパーに箸を伸ばして食べれそうなものを探し、残りは弟が食べてくれた。

何もかも味がわからず、灰色にしか見えなかった。


「美味しいよ…これなら食べられそうだ」

「よかった。今日はね。僕テストでいい点が取れてね。お兄ちゃん一緒に勉強してみない?僕が教えてあげる」


穏やかに優しく微笑みながら話しかけてくれたが、勉強というとあの、辛いいじめがあった学校が、フラッシュバックしてしまった。

「…ごめん。学校のことは思い出したくないんだ…」

「ううん大丈夫だよ。辛いことを思い出させてごめんね」


弟は、両親に俺との接触を禁じられている。

俺の変な影響を受けてほしくないとのことみたいだ。

いない存在にしたいのかもしれないし、このままいなくなったほうがいいかもしれない。

昔は、人見知りで俺の後ろに隠れていた小さな弟は、俺より身長が伸びて、小学校も中学も順調に過ごせるようになっていた。

優しい性格な為、友達も多く家族から身内までも、誰からも好かれている。

こんな、何もできない眠っているだけの俺の心配もしてくれている。


俺と弟は、年子なのに…小学校のいじめが原因で、高校に入れず…17になっても学校を行かずに引きこもっている生活が続いていた。



感覚過敏で、シーツや服、食事、音でさへ…辛いがたくさんで、静かな部屋で過ごすことが当たり前になっていた。



「僕といつか、こんな家から出ていこう。家族なのに差があるのは辛いよね」

「…俺のことなんて気にしなくていいんだ。人として生まれてきたのが間違いだったのかもしれない」

「…そんなことっ…いわないで…」

「…」


細くて白い腕を伸ばして、弟の手を優しく握った。

本当に優しい。

俺のことをずっと心配して、かばってくれている。

深夜は眠いだろうに、俺に食事をこっそりと持ってきて食べれるものを

探してくれてる。


「…ごめんな」

「謝らないで、兄さんは悪いことなんてしてない」

「うん…でも、ごめんな」


弟は、俺より身長も高くて、野球部で鍛えられてた健康な体と

陽に当たらず、運動も食事もまともにしてないほっそりした白い肌の俺とは、正反対で

最初は、ひがんだこともあったが、毎晩様子を見に来てくれる姿をみて

自分の情けなさと孤独で、ひがみなんてものはなくなった。



「ゆうた…どうして、俺にかまってくれるんだ?ばれたらまた、怒られるんだぞ」

「……僕にとって唯一のお兄ちゃんだから…家族じゃん…」

「…グスッ」

「泣かないで、僕が働けるようになったら、この家から出よう。それまで我慢しよう」



どうして、こんなに弟は優しいんだろう。

ネットでよくある家族から辛く当たられると、兄妹も辛く当たるのが当たり前だと思っていたのに…


「そろそろ寝るね。おやすみ。また来るね」

「おやすみ…」


そっと両親にばれないように、ドアを閉めて静かに自室へ戻っていった。


「ごめんな…本当に…」


俺は、今日も悲しい夢を見ながら目を閉じる。


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