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七福神観察日記 ~作家志望の僕が実際に出逢ったあまりにも個性的過ぎる七福神の生態を綴ったノンフィクション小説~  作者: 葉月 陽華琉
第七柱 恵比寿観察日記 ~作家志望の僕があまりにも天然過ぎる恵比寿に呆れと疲れを覚えた話~
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制裁

「大丈夫ですかっ!」

僕は右肩を押さえながらもゆっくりと立ち上がる恵比寿の躰を支える。


「痛っ! どうせ、周りに感謝しないで生きてるんだろっ! 周りに感謝して生きてたらこんな事がする筈がないっ! それに、どうせ貴様はしょうもない人生を送ってるんだろっ! 周りに感謝の出来ない奴は、しょうもない人生しか歩めないんだよっ! 誰だって一人では生きられないからなっ!」

「何訳解んねぇ事云ってんだ、てめぇっ!」


 男が、再び恵比寿に向かって発砲した。


 一発。


 二発。


 三発。


 叫び声が飛び交う。

「いったっ!」

恵比寿はうずくまる。


「もうやめろっ! こんな事はっ!」

ゆっくりと立ち上がった恵比寿に、男は動揺しながら更に何度も発砲する。


「嘘だろ、おいっ!」

相当痛がってはいるもののゆっくりと再び立ち上がった恵比寿に、男は絶句状態だ。


 そうか……。

七福神は、不老不死だったのを思い出した。


「どういう事だ、おいっ! くそっ!」

男の拳銃が、弾切れになったらしい。


「貴様、普段からよく女性を殴ったり野良猫を殺してるそうじゃないかっ!」

「てめぇ、何で、そんな事知ってんだよ……」


「オンインダラヤユセイソワカッ!」

「はぁ? 何云ってんだ、お前……」


「貴様なんか、みずのとレベルで猫と同じ目に遭わせてやりたいけどね、みずのえレベルの厄で勘弁してやるから、何日も、何週間も、何ヶ月も、うんと苦しむがいいっ! 今まで苦しめてきた分以上になっ! そして、後悔するがいいっ! 貴様にはそっちの方がいいっ!」

「何、ごちごちゃと訳わか――」

男は、突然倒れた。

意識はなさそうだ。


「ママーッ!」

男の腕から解放された少女は、母親に抱きついた。


「手は相手を傷付けるものじゃないっ! 手は繋ぐものだっ! そんな当たり前の事が解らない貴様が、私は大嫌いだっ!」

息苦しそうに床に張り付く男に、恵比寿は怒号を浴びせた。


 それから、右肩を撃たれて意識が朦朧としている男の行員に近付き、「ちょっと失礼」と、その血まみれの肩を両手で掴んだ。

すると、行員の肩が、ふわっと白く光った。


「えっ」

恵比寿が手を離すと、行員の血が一切なくなった。

そして、彼の意識がはっきりと戻った。

他の客と行員がざわつく。


「いったいなぁ、もう……。初めて、銃で撃たれたけど、こんなに、痛いんですねぇ……。確かに、人間様も、死んじゃいますよねぇ」

僕は再び恵比寿の躰を支える。


「あいつ、そうだ、大事な事を忘れていました。皆様、すみません。申し訳ないですけど、皆様からこの銀行で起こった事の記憶を全て消させて戴きますね。そういう決まりになってまするので。では、失礼します」

恵比寿は両手を力強く握り、その隙間に息を吹く。


 すると、巨大なシャボン玉が、次々と現れた。

漂うそれ等は、行員と客、そして倒れる男の頭を包み込んでいく。

宇宙飛行士を彷彿とさせる姿の行員と客はあたふたしている。


「あっ、監視カメラもやんなきゃっ! あぁぶない危ないっ!」

恵比寿が監視カメラ一つ一つに同様の動作をしていき、それ等も、シャボン玉で覆われた。


「さて、彼を病院に連れて行くとしますかね」

恵比寿は男の上体を起こす。

「まぁ、どれぐらいこの状態なのか解りませんけどね。あぁ、痛い痛い痛いっ! 撃たれた所が疼きますねぇ……。あっ、そうだ。割らないと。このままだと意味ないですもんね」

男の躰を背負った恵比寿は、そう云って手を叩いた。

すると、全てのシャボン玉が一斉に割れた。


「よし、これにて、一念発起、ですね」

恐らく、一件落着の事だろう。

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