悲鳴
心臓が、痛みを伴う程に激しく鼓動している。
「クソガキッ!」
男は泣き叫ぶ少女の躰を強引に引っ張り、その頭に銃口をつけた。
「ママーッ!」
「おい、お前っ! 五〇〇〇万用意しろ! 通報したらこのクソガキぶっ殺すぞっ! いいなっ!」
女の行員はゆっくりとカウンターに向かった。
隣の恵比寿をふと見ると、膝の上の拳を小刻みに震わせていた。
「もたもたしてんじゃねぇぞっ! さっさとしろっ!」
「ママーッ! ママーッ!」
「うるせぇんだよ、クソガキッ!」
この光景は、現実なのだろうか。
その時、恵比寿は大きく息を吸い込んだ。
「いい加減にしろっ!」
一瞬の静寂が生じた。
「あぁ?」
「何が楽しいんだっ! こんな事してっ!」
立ち上がった恵比寿の怒号に、耳を疑った。
大丈夫かよ、おい。
相手は本物の拳銃を持ってるんだぞ。
「貴様の自分勝手な欲望に我々が付き合わなきゃならない理由なんかある筈がないだろっ! 貴様にお金を渡さなきゃならない理由もないっ! 彼をこんな目に遭わせなきゃならない理由もないっ! 皆さんに怖い思いをさせなきゃならない理由もないっ! 彼女を泣かせなきゃならない理由もないっ!」
「あぁ? 生意気なんだよ、てめぇっ!」
男は恵比寿に向かって発砲した。
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