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七福神観察日記 ~作家志望の僕が実際に出逢ったあまりにも個性的過ぎる七福神の生態を綴ったノンフィクション小説~  作者: 葉月 陽華琉
第七柱 恵比寿観察日記 ~作家志望の僕があまりにも天然過ぎる恵比寿に呆れと疲れを覚えた話~
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説明

「DVDは画質がいいって事ですか?」

「いえ、画質がいいのはブルーレイの方です」

「あっ、そうか。ブルーレイの方か。ブルーレイは、音量も大きいんですか?」

「音量、ですか。音量は、変わらないです。ブルーレイもDVDも音量は調節出来ますし」

「へぇー。ブルーレイって韓流ドラマも録画出来るんですか?」

「ドラマに限らず、何の番組も録画出来ます。ブルーレイもDVDも」

「へぇー。何の番組もですか? サスペンスとか、医療ものとか、朝ドラとかも録画出来るんですか?」

「はい、出来ますよ」


「旅番組とか、相撲とか、天気予報とかもですか?」

「出来ますよ、勿論」

「へぇー。ホント、すごい時代になったなぁ。スマホってやつとか、デジカメってやつとか。あぁたも、弁財天君にいつも教わってるんですか?」

「いえ」

「へぇー。あぁたもすごいんですねぇ」

恵比寿は芋焼酎とカクテキを口に運ぶ。

何故、十数分も神様にDVDとブルーレイについて説明しなくてはならないのだろう。

それよりも早く取材がしたい。


「ところで、MDっていうのはどうなんですか? 画質の方は」

「いえ、MDは音楽とかを入れるものなので」

「入れる? 入れるというのは」

「録音するって事です」

「へぇー、録音するって事なんだぁ」

結局、居酒屋にいる殆どの時間をDVDとブルーレイの説明に費やす事になった。


 「最近は、特に優しい人間さんが多いと思いません?」

恵比寿は道路を歩きながら云った。

やはり未だに僕も七福神の一人だと思っているらしい。

否定せず、「そうですね」と返す。


 今度は僕が質問攻めにしてやる。

「あの、恵比寿さんのご利益は何でしたっけ」

「私のご利益? 何だっけなぁ。ちょっと弁財天君に訊いてみますね」

チノパンのポケットに手を入れた恵比寿は、「あっ、間違ってクーラーのリモコン持って来ちゃったっ!」と云いながら、テレビのリモコンを取り出した。


「商売繫盛、除災招福、五穀豊穣、大漁守護、ですよね」

ググった画面を見ながら確認すると、「ああ、そっかそっか」という他人事の様な呟きが返ってきた。

大黒天も自分のご利益を二つしか覚えていなかったが、更にそれを下回る恵比寿に唖然とした。

七福神のツートップがそんな事でいいのだろうか。


「今日は、運を送ったんですか」

僕がそう訊くと、恵比寿は、「勿論。今日は、四名の人間様に僥倖を」と返した。

「どんな事をした方に僥倖を送ったんですか」


「商業施設で迷子になって泣いてるちっちゃい子供さんを助けた女性と、入院中のお母さんの看病しながら小学生の妹さんの面倒と家庭教師のアルバイトを毎日頑張ってる大学生のお兄さんと、会社に遅れそうなのにお婆さんがドミノ倒ししちゃった自転車を起こすのを手伝った男性と、目の前で通行人が分厚い財布を落としたけど気付かないで歩いて行っちゃってそれを拾ってその方に渡してあげた女性と、学校休んだ同級生にノートを貸してあげた高校生の方」

五人じゃないか。

それに最後は判定が甘いのではないだろうか。


「あの、今度の土曜日、パトロールに同行させてもらってもいいですか」

「勿論」

それから、土曜日の午前十時に駅前で待ち合わせる事になった。


「二人でパトロールもいいねぇ。一人だと見逃す事もあるかもしれないし。二人だと心強い。まさに、河童の川流れですねぇ」

意味が解らない。

どういう事だ。

鬼に金棒的な事を云いたかったのだろうか。

使い方を間違えている。


「では、私はこの辺で」

恵比寿は軽く会釈すると、「あそこに住んでる友人にちょっと用事があって」と、アパートを指差して云うと、その人物の部屋番号と名前という、全く必要のない個人情報を何故か加えた。

「あっ、はい。では、土曜日の十時に」

不安なため、念を押すと、恵比寿は「はいはい、では」と、再び会釈してアパートに向かって行った。

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