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七福神観察日記 ~作家志望の僕が実際に出逢ったあまりにも個性的過ぎる七福神の生態を綴ったノンフィクション小説~  作者: 葉月 陽華琉
第四柱  弁財天観察日記  ~作家志望の僕があまりにも美意識が高過ぎる弁財天とスケジュールがなかなか合わず、取材と執筆が暫く滞った話~
19/40

条件

「てか、すごいねぇ、本の数っ!」

弁財天は絨毯に腰を下ろし、本棚に目をやりながら云った。

取材させてもらう弁財天に何か飲み物を出さなくては。


「コーヒー飲みます?」

そう訊くと、「こんな時間にぃ?」と笑われた。

弁財天は「アタシね、いっつも持ち歩いてるの」と云いながら鞄の金ピカのファスナーを開けた。

「じゃーん」

弁財天は赤と青の二つの水筒を僕に見せると、「こっちが硬水で、こっちが軟水」と云いながらテーブルに置いたそれ等に人差し指を置きながら云った。


「硬水はね、脂肪の吸収を抑制する働きがあって、軟水は美肌効果があるの。だからね、飲み分けてるんだぁ。あと、体内のペーハー値が七・四だから、それくらいのお水を飲むようにしてるの。より吸収がいいから」

「あの、質問いいですか」

弁財天の向かいに座り、メモ帳を開きながら云った。


「うん。一日に飲む水の量とか? 二リットルだよ」

「いえ、あの」

「あっ、美人だと思う芸能人とか? うんとねぇ、森高千里ちゃんとかぁ、斉藤由貴ちゃんとかぁ、永作博美ちゃんとかぁ、深キョンとかぁ、綾瀬はるかちゃんとか」

「いや、あの……」

「あと、石原さとみちゃんとかぁ、北川景子ちゃんとかぁ、上戸彩ちゃんとかぁ、長澤まさみちゃんとかぁ、あと、ガッキーとかも美人だよねぇ。あと、戸田恵梨香ちゃんとか」

「いや、あの……」


「あと、有村架純ちゃんとかぁ」

「あの」

「白石麻衣ちゃんとかぁ」

「あの、違うんです」

「あと、橋本環奈ちゃんとかぁ」

「あの、そういうのじゃなくて」

「あと、今田美桜ちゃんとか」

「あっ、あの、七福神としての活動などについて幾つか質問させて戴きたいんです」

「あっ、いいよ。全然」

漸く、インタビューを始められる。


「まず、弁財天さんは」

「『弁財天さん』ってぇっ!」

弁財天は笑い出す。


「真里でいいよ、真里でっ!」

「真里さんはどんなご利益のある神様なんですか」

いちいち笑われてインタビューが中断するのを避ける為、仕方なく〝真里さん〟と呼ぶ事にした。


「恋愛成就と、学徳成就、あと、諸芸上達とね、福徳施与と、それから金運向上」

一応確認したが、やはりリサーチ通りだった。


「弁……、えっと、真里さんはどんな特殊能力を持ってるんですか」

「あっ、知ってるんだぁ、特殊能力の事」

弁財天はそれから「アタシの特殊能力はねぇ」と云うと、咳払いをした。


「絶対音感」

「えっ?」

「絶対音感。どんな音でも、聞いたら音階が解るの」


 動物と話せる能力、透明人間になれる能力、瞬間移動、そして、絶対音感。

何なんだ、その急な親近感は。

絶対音感なら持っている人間はいる上に、他の七福神の特殊能力に比べて実用性に欠ける。


 もし僕が弁財天なら、他の七福神の特殊能力は普通の人間にはあり得ない非現実的な能力であるにも関わらず、何故自分は絶対音感という、人間でもあり得る能力なんだと、四六時中憤りと劣等感を覚えていただろう。


「まぁ、アタシの絶対音感ってのが一番神っぽいかなってアタシは思ってる」

それはないだろ。


「あの、もし良かったら、元の姿を見せて戴けませんか」

弁財天は「嫌だ」と即答した。

「えっ」

「絶対嫌」

今までの七福神はすぐに見せてくれた故、断られるのは想定外だった。


「嫌、ですか」

「うん。嫌だ。だって、アタシのホントの姿、不細工なんだもん。四六時中この姿でいるから特に何もしてないし」

「何とか、見せて戴けませんか」

「嫌だ」

「どうしても、見せて戴く事は出来ないですか」

「うん。嫌だ」


「小説の取材の為に見せて戴きたいんです。お願いします」

「絶対に嫌だぁ」

「どうしても、見せて戴けませんか」

「い、や、だ」

〝弁財天〟とググり、出てきた絵の並びを見せながら「本当の姿ってこんな感じですか」と訊くと、弁財天は、「何それぇーっ! ひどぉーい! 全然違うんだけどぉー!」と、呆れながら大笑いした。


真の姿を見せてもらえないのな、せめて確認だけでもと思ったが、ネット上に出回っているこれ等の画像が実際とは全く違うとなると、尚更見てみたい気がした。


「あの、どうすれば見せて戴けますか。条件を出して下さい。僕に出来る事なら何でもします」

取材精神に火が着いた僕は思わず云った。

「んー、条件ねぇー……」

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