決意
妙な渾名で僕を呼びながら、「彼女とかいんの?」、「芸能人だと誰が好き?」、「背高い娘とちっちゃい娘なら、どっちが好き?」、「ぽっちゃりした娘と細い娘なら、どっちが好き?」、「ロングヘアの娘とショートヘアの娘なら、どっちが好き?」などと次々に質問を投げてくる弁財天に、「いないです」、「どっちでもいいです」などと返しながら川沿いの道路を歩く。
弁財天は、白いポロシャツ姿の男と擦れ違った途端に「ちょっと、此処で待ってて」と云って急いで石段を下り、茂みに姿を隠した。
「オンソラソバテイエイソワカッ!」
茂みから出て来た弁財天は石段を上がって戻って来た。
「今のは、どういう」
「あっ、聞こえてた? 何か、ひっくっ! 何かハズいなぁ。今のは、ひっくっ! 今のはねぇ、アタシ達、ひっくっ! アタシ達七福神が人間ちゃんに運あげる時の呪文みたいなもん。七福神、其々違うの」
僥倖をあげたらしい。
「どんな運をあげたんですか」
「さっきのお兄さんねぇ、休日は児童会館で絵本の読み聞かせのボランティアしてるし、こないだもショッピングモールで迷子になって泣いてる子供助けたんだって。アタシ達七福神は千里眼っていうの持ってるからそういうの解るの。だから、ご褒美に福徳施与してあげたの。あっ、アタシもう行くね。そろそろバイト行かなきゃだから」
弁財天は細く小さなピンクの腕時計を見下ろしながら云った。
彼女のバイト先らしいコンビニは僕の自宅とは逆方向らしいため、その場で別れた。
七福神の紅一点、弁財天。
今度こそまともに取材が出来そうな気がする。
こうなったら、七福神全員に逢ってやる。
そして、この数珠つなぎ取材を成し遂げ、僕にしか書けない小説を世に出してやる。
ブックマーク、評価、そして、拡散をお願い致します。




