世界の闇深い真実
伯爵の説明は和国に移った。私のゲーム知識を裏付ける補足のオンパレードを音声文字起こしアプリで記録できたらどんなにか新刊のネタとして役に立っただろう。
「和国は、二千年の間に軍事侵略をほとんど受けず、受けたとしても和国内の国家最高魔導士と国軍が返り討ちにしている。国土の中央は生まれつき魔力を持たない人間と生物が多く住むがゆえに魔法に頼らぬ電気を主力エネルギーとした機械文明が発達し、自然が少ない。逆に海に面した外側の国土は、和国の特徴とされている霊気をエネルギー源とした霊力文明や諸外国と戦うための魔法が発達しており、自給自足の生活が一般的だ」
霊気とは。
簡単に言うと、『その状態であり続けることで生まれるエネルギー』と定義されている。
和国では、兵器開発における高度機械技術の発展が資源の少ない内陸部に集中しているため、物質の変化や人通りによる空気の動きが多い内陸部には霊気の発生源が少ない。
海外諸国の軍艦と飛行兵器を迎え撃つ最前線になりうる湾岸部は、結界を複数重ねがけしておく状態を保ち続ける魔法陣を構築し、その結界のエネルギー源として待機中の霊気を吸収利用するというシステムを生み出した。そのため、魔法陣の拠点周辺それぞれが霊気の循環状態を保たざるを得ない状態になり、他の国々の保有量と比較するまでもなく霊気を潤沢に保ち結界を維持する環境が整ったのだ。
霊気発生には条件があり、最低でも百年間その状態を保ち続ける必要がある。ひとたび発生した霊気はより歴史の長い霊気に取り込まれることでなければ消滅しない。霊気には生命体の寿命を伸ばす効果が確認されており、生命維持を百年保った時点でその生物は精霊と呼ばれる神格に近い存在に昇華される。そして精霊の生息地は湾岸部に圧倒的に多い。
瘴気の発生地は調査によると、いずれも聖女の居住地もしくはその近隣。だが瘴気の発生は必ずしも起こるわけではなく、危険度と難易度の高さから、最高魔導士輩出数において世界トップの和国が調査や魔瘴獣の討伐を請け負うことになった。
和国は研究の結果、瘴気の源泉を和国湾岸部でのみ採掘される包瘴石という鉱物に封じ込め、被害地から瘴気の大部分を取り除く術『包瘴術』の開発に成功。以来、世界各地全ての被害地から瘴気が和国へ持ち帰られた。異世界人召喚の儀式が最初に行われてから百年後、最後の『包瘴術』が行われたのち、聖女召喚の儀式は禁術に指定され全世界で禁じられた。
そこまで説明した伯爵が指を弾くと、ディナーの終わったテーブルから全ての食器とカトラリーが消え、代わりに大きな世界地図が現れた。これも公式設定本で見覚えがある。『かつての世』の世界地図のようにゲームの世界の地理をストーリーに出ていない地名や川の名前までありとあらゆる創作設定を詳細に再現した特大サイズのスイプリ世界地図は、裏面にスイプリ世界史年表まで印刷されており、この世界地図の柄でタペストリーが販売されるまでに人気を博した。親友と二人でそれはそれは妄想の参考にさせていただいたものだ。
「ここ。この赤い点が、世界で最初に異世界人召喚の儀式が行われた場所だ。まずは、この世界地図の上に全ての儀式執行地を示す。続いてグレーの滲みが現れるが、これは瘴気の発生場所と瘴気蔓延にあたっての最大範囲だ。対処が遅れた地域ほど滲みが広がり、滲みの広さがそのまま被害の大きさという訳だ。この滲みを、今度は『包瘴術』を処したタイミングで銀色に輝く丸い印が上書きしていく。全ての流れを、よく注意して観察してほしい。始めよう」
伯爵の端的な説明とともに世界地図の下部に年数の経過を表すカウンターが表示され、地図の上で記号だけのシュミレーションが始まった。まず、召喚術が行われた場所全てが赤く小さな正円の点に光る。続いて、そのうち瘴気が発生した場所がグレーの点に滲む。グレーの滲んだ点がカウンターの経過とともに一つ一つ消え、消えた部分に銀色に輝く小さな正円が上書きされる。
しかし、カウンターで十年も経たないうちに最初にできた銀の輝く点が失われてしまった。再びグレーの滲みが今度は同じ場所に現れる。二番目にグレーの滲みが現れた場所、三番目、四番目のと続くにつれ、グレーの滲みはとうとう全ての銀色の円を覆ってしまった。再び現れたグレーの染みは、場所によっては最初に現れたときよりも明らかに大きく色も濃くなっている。ある時を境にグレーの滲みが全て和国へ移り、和国内を移動。和国へ移ったはずのグレーの滲みのほとんどがまた元の場所から生まれる。現在の年になっていくらかの滲みは地図から完全に消えたが、地図の上に残る数に比べれば微々たるものだ。
「気付いたことがあれば、何でも質問してくれて構わない」
「もう一度、最初から見せてもらってもいいでしょうか」
「何度でも繰り返そう。どうやら確信に近付いているようだ、流石は前世で教師をされていただけある。辛いだろうが、すまないね」
伯爵が再び指を鳴らし、同じシミュレーションが再生される。ゲームをやり込む間はただの世界観でしかなかった舞台の歴史設定に、世界の闇が点から線へ繋がり幾重にも絡み合っていく。背中を冷たい汗が伝い、頭はただただ行き着く結論を拒絶する。確かめるべきだ。でも知りたくない。伯爵が語るこの世界の瘴気についての説明のうち、私が知っていた情報などこの世界をリアルに生きる人々にとってみればほんの表面でしかなかったのだ。
伯爵はなぜ、最初の『異世界人召喚の儀式』と二度目以降の『聖女召喚の儀式』を呼び分けているのか。なぜ和国と現共国の国土には召喚術執行を意味する赤い印自体が点灯しなかったのか。なぜ和国の中でのみ、グレーの滲みと銀の輝きが様々な地方へ転勤のように移動し、滲みの数が増えたり減ったり忙しなく変化するのか。
数度繰り返して頂いた末に最悪の正解へ辿り着いてしまった私には、伯爵からの質問など必要なかった。
「前世には、魔法も瘴気もありませんでした。八百万の神という多神教の概念が根底にある国に私は住んでいて、霊とか、パワースポットと呼ばれる百年以上続く神聖視される場所がいくつもありました。私もそこに行ったことがあります。境内に入った瞬間や御神木に近付いた瞬間、言葉に出来ない力の存在を感じていました」
「和国にも、同じく御神木と呼ばれ長寿を崇められる大木が存在する」
「和国が異世界からの召喚術を行わなかったのは、軍事力に不足なく、国内で不可侵条約を守っていたからですか」
「いかにも。国土の外周と中央という別れ方で異なる文明が独立して存在している特異な環境に関わらず、それぞれの領域が互いに文明のあり方を尊重し侵略を選ばずに続いてきた。相手側のエネルギー源をほぼ必要としない自活の術を発展させた結果、それぞれが奪いあう必要のない豊かさを得た。その豊かさから、必要の外のものに対しありのままで留め時のなりゆきに任せるという思想が広がり、霊気発生の条件が各地に満ちた結果、あらゆる意味で『長寿の国』になった」
「ありのままという美学が浸透している国なら、確かに異世界から異端極まる聖女を召喚するなんて考えはよろしくないですよね」
九つの小国は、公式設定本の情報によればそれぞれ偏りを極めた魔法属性による強魔力スポットを軸に据えた観光を外貨獲得の主な手段としていた。そのため、瘴気対策が国庫の大部分を占める財政難が世界各国の抱える社会問題となった際、収入が激減。「瘴気問題と無縁にも関わらず異世界人の神託を賜り国家を発展させるための金策がない」と周辺の大国に侮られ、異世界召喚術において大いに遅れを取ってしまう。
そんな小国は、他国に恩を売る目的での異世界人召喚の準備を進めるようになっていた。短い間の辛抱だからと民に重税を課し国庫を削るリスクを負いつついよいよ召喚術の執行を目前にした矢先、無情にも異世界に干渉する術の全てが突然禁術に指定されてしまった。ただただ浪費によって財政が傾いただけの徒労に終わってしまった九つの小国は、王の命令により失った財源を取り戻すべく隣合う小国を襲撃。あとは知るところの流れで各国反乱軍が極秘に集まる会議を繰り返したのち、九国同時王城制圧に成功し終戦、君主制を廃止し共国として合併。
終戦後、復興への時間が異様にかかりすぎているのは、異世界人による文明発展の知識の教授が一度もなかったから。他の召喚術経験国に教えを乞うにも、ほとんどが瘴気の再発対応に精一杯で和国からの救援を待つ状態のため、新興国に復興支援を割く余裕はゼロ。寧ろ共倒れでの滅亡を待って瘴気のない土地を配分する領土拡大を目論んでいたのが頓挫した周囲の大国は、当てつけと言わんばかりに再びの開戦による完全滅亡を待つ傍観に徹している。戦前とは違い生き延びるために手を取り合い自活自助で細々と復興を進める民の辛抱が限界を迎えるのが先か、それとも大国のどこかが埒が明かないと開戦の火種を極秘裏に撒き、直接的に手を汚さない強引な侵略戦争を仕掛けるのが先か。
「瘴気にはたしか、意思がありますよね」
「そうだ」
「瘴気の本質は、召喚先で大切にされず酷使された末に無念のうちに亡くなった聖女の怨念。歴代の聖女は全員が日本人。和国は聖女の怨念をせめて安らかに眠れるように、これ以上この世界の生き物を彼女たちが苦しめて悪者にならないように、この世界の中で最も日本に近い文明を持つ自国内に聖女の怨念を移した包瘴石を持ち帰る。包瘴石は聖女の怨念と化した魂のお墓。そういうことなんですね」
瘴気には聖女の意思が残っている。故郷との理不尽な別離のうえ過酷な奉仕を強いられた末に心を閉ざした状態で亡くなったため、まず意思疎通自体が極めて難しい。公用語の英語よりも日本語のほうが、当然質のいいカウンセリングに近付ける。そのため、日本語と同じ言語である和国語をより流暢に操れるネイティブレベルの語学力をもった最高魔導士であることが前提になければ、そもそもカウンセリングの土俵にすら立てない。意思疎通ができない限り日本のどこの出身なのかわからないから、瘴気が落ち着く場所イコール異世界での故郷に最も近い環境と判断基準を設け、定期的に和国内の様々な場所に包瘴石を引越しさせ様子を観察する。
聖女への生前の仕打ちを償う姿勢のない場所ほど、それだけ残酷に聖女が飼い殺されてきた。あくまで怨念と化した魂の器としての役目しか持たせられない包瘴石は、結晶の構成の理由から怨念の全てを収められるほどの大きさまで育たない。浄化でも封印でもなく、大半とはいえあくまでも魂の一部を和国に持ち帰るだけなので、元の場所に残った分の魂は和国に持ち帰られた分の魂が救われない限り共に救われない。救われないままの状態が続けば、徐々に諸悪の根源である場所への恨みが強まり、再び元の規模の瘴気としてあるいはそれ以上の規模になって蘇る。
「包瘴石は霊気が一定の濃度を保つ採掘場で形成される希少な天然鉱物だ。既に和国の国土中心地では国立研究所が科学力を結集して人工の合成に成功したものの、あくまで作れるのは『サイズの大きな包瘴石』だけだ。作った包瘴石も、霊気を潤沢に浴びせなければそもそも魂を移せる状態にならない。まず採掘場への百年以上の保管が必要となる。人工包瘴石による完全包瘴の実験を始められるのは、最速であと九十年後だ」
「どうして過去に聖女を召喚した国は、謝らないんですか。誠心誠意謝罪しようとすらしないんですか」
「もちろん、瘴気の真相を知り、言葉が通じずとも誠意だけでもと聖女の魂へ対話を試みた国はいくつもある。だがそのいずれも、対話を試みること自体を始めたのが召喚当時の関係者をすべて亡くした後だった」
世界的に広まっていたとはいえ非人道的政策の極みであることから、ほとんどの国では聖女召喚の儀式は長年に渡ってプロパガンダを国内に広めたうえでの集大成として行われていたのだ。瘴気の主成分は怨みの感情のため、聖女を苦しめた本人達へことさら強く作用し意図せず彼らの寿命を縮め呪い殺すに至る。総じて早死にする儀式関係者一同はその早死にの原因を悟れない訳がなく、二度と過ちを繰り返すまいと儀式に纏わる全ての証拠を抹消した。そして次世代の名声を失墜させぬよう緘口令を貫き、プロパガンダによる儀式の正当化を済ませてから苦しみ悶えて世を去る。その隠蔽の努力が功を奏し、当時は何も知らされていなかった次世代が極秘の調査で聖女伝説の真相を知り、先代の過ちを正そうと動くという流れがほとんどだった。
聖女の魂からしてみれば、憤るのは至極当然のことだ。少なくとも十年以上もの間都合よく祀りあげて無念のすべてを無視しあまつさえ美化した伝説に捏造しておきながら、いざ謝罪に来たと思えば当時の加害者の一切を欠いた他人揃いの集団。そのうえ伝わる形の言語を自分で使う努力をせず他国(和国)の民に通訳させるか、もしくはその通訳すらいない状態での仰々しい謝罪は国民へのアピールを兼ねた公務。そんなものの何が、聖女にとって魂の救いになるというのか。
前世でのそれぞれなりの平穏な生活を突然奪われ、人道支援の主格たれと自分の知るより文明が遅れた名前すら聞いた事のない国で飼い殺され、やっと肉体の苦痛から逃れ自由な魂になったのに、世界が異世界干渉の術を禁じたせいで前世に戻っての成仏も叶わないなんて。
ならば他の国のまだ生きている関係者に頼めばよかったのでは。そう考えてすぐにやめた。虐めは実際に受けた者でなければその苦しみはわからない。主犯格が顔も出さず『子供のしたことですからここはひとつ我々に免じて、彼にも将来がありますので』などとのたまう主犯格の親と教師に菓子折り持って形ばかり謝られたあの屈辱と虚無感は、この歳になったって今だに深く心の傷を抉る。あれと同じものを、聖女さんたちになど断じて味わせてなるものか。
「かつて和国において、平仮名は流れ字、片仮名は折れ字、漢字は象模字、ローマ字は浪漫字と呼ばれていた。鎖国を続け独自の文化を守り続ける和国は国民の気質も自ずと閉鎖的になる。閉鎖的ということは義理堅く身内同士の絆が強い傾向にあるということだ。聖女達の魂を真の供養へ導くにあたり、同じ言語をもつ場所から拉致され非業の死を遂げた聖女たちの魂を憐れに思った和国の民は、少しでも早く故郷への郷愁を思い出し魂を無窮の恨みから解き放つきっかけのひとつになるよう、自国語の文字の名前を全て日本で呼ばれるものと同じ名称に改めた。和国という国名だけは民の誇りの本質であるためどうしても譲れないが、文字の名前は文字自体の形さえ変わらず使っていけるのならば問題ないと。だから、この世界には漢という国もローマという名前の帝国の歴史もないにも関わらず漢字とローマ字という言葉が定着してしまったんだ」
ゲームの世界がフィクションから現実になるということの重みを、まだ自身はわかっていなかった。この世界に引きずり込まれ孤独に身体だけ滅びていった聖女の魂を思うと、涙すら出なかった。
「聖女だけが持つ第十の魔法属性『聖』は、どうして銀色をしているのかはご存知かな」
「特別な効果だという異質さが一目でわかるように、唯一聖魔法は金属の光沢が感じられる表現にしようと決まったと書いてありました」
「君のいた異世界には、この世界のような魔法が存在しない。ならば魔法が自分の力によって行使されているという実感は分かりやすいに越したことはないだろう。九属性の魔法はそもそも、余程の強大な出力でないかぎり発色しないものなんだ。私は風魔法の属性持ちなのだが、施錠魔法をかけるときには私の指から風魔法を使って空間に質量を偏らせ、その圧力で鍵を掛けているという仕組みだ。だが、空中に色のついた空気の塊は見えたことがないだろう? それが聖女にはない。どんなに微々たる発動量でも、行使エネルギーが発生すると必ずそれは金属色に染まる。どんなに無知な者が恩恵に預かっても、目に見えないのが当たり前であるはずの行使エネルギーが、聖女のものだけは可視化される。となればそれだけで有り難いものだと民は勝手に神聖視するし、どんなに効果が弱かろうとその特別性ゆえに自然と崇めるようになる。新興宗教への信仰とは得てしてそういうものだ」
「結局、聖魔法って何なんですか」
「『何とかして使えるようにならなければならない』という精神的重圧や命の危機を原料に生まれる現象のすべてが聖魔法だ。先程説明したように、この世界には精霊という存在がいる。精霊にとって居心地のいい環境である霊気が多いことから和国に多く存在しているだけで、他の国に全く精霊が存在しないという訳ではない。精霊は可触性のある肉体を持たない代わりに、生物の精神的重圧から生まれるエネルギーを栄養源にしている。精霊は不可視のため、必要とされない期間が長ければ長いほどにアイデンティティを保てなくなり、孤独が長ければ長いほど悪霊に堕ちる。精神的重圧という栄養をくれた生物への対価としてその生物が行使したい事象を代理で行い『この者を助けた』という実感を感じられることで、精霊は世界に存在していられる」
何て自分勝手な都合による政策なんだ。怒りが過ぎるとこんなにも冷静になれるものだったのか、人間というものは。
高度な機械文明に生まれたただの一般人でありながら、一夜にして神の遣いと崇められ、使ったことのない能力を何一つ救いのない発動システムで訳の分からないままに行使し、やっと世界に慣れて精神面が落ち着いてきたら精霊は味の落ちた自分から去っていく。精霊自体は無色透明なうえ発動条件など周りも自分も一切わからないまま精神論だけで行使してきたものだから、突然去っていった精霊達を引き留めるという概念そのものがない。聖魔法を再び使えるようになれと聖女を監禁し拷問や虐待を繰り返すか、聖魔法を使えないなら国の発展のために異世界の知識でもって貢献せよと国土各地へ連れ回し専門職でもない半端な記憶を搾り取る。
なぜ異世界ジャンル作品の聖女のほとんどが辛い過去をもつ日本人女性ばかりだったのか。
精霊へなるべく質のいい精神的重圧を与えられるように、魔法の存在がフィクション止まりでしかない世界に暮らしているという無茶振りの前提が必要だったわけだ。平均して男性よりも身体能力に劣る女性の性別でなければ庇護欲を掻き立てられず力になりたいと目にかけてもらえる機会すらない。元の世界に残した大切な存在への郷愁や、やり残したことへの後悔がより強いであろう若い独身であればあるほど、いつかは帰れるかもしれないという希望が全否定される絶望も帰れないという諦観も大きくなるだろう。逆に天涯孤独であろうと、それだけこちらの世界で何かを成さねば生きていけない以上は責任感からくる重圧は精霊にとってより一層栄養価の高いご馳走となる。
その条件に該当する日本人女性が、こんなにたくさん拉致され、無念の死を遂げてきたのだ。