もしも蛇口からラーメンが出るようになったら
ラーメン、それは世界を救う。
ある人は言った。ラーメンはうまい!
あるAIは言った。ラーメンは箸で食べない!
ある研究者は言った。ラーメン細胞はあります!
ある配信者が言った。ラーメンは蛇口から出る!
その結果、日本は荒廃した。
もちろん、ラーメンによって滅びたのである。ラーメンが蛇口から出るようになる法律、略して蛇ラーメン法によって日本の水道水は豚骨スープに置き換えられた。
なぜ豚骨スープなのかって?
博多ラーメンが好きだったからだそうだ。
背脂もモリモリのスープが水道から出てくるのに歓喜したものも初日にはいた。
しかし、2日目、3日目と時が立っていくにつれて、その恩恵以上に悪い部分が見えてきた。
問題その1。手が洗えないことだ。洗えば洗うほど手が豚骨に侵食され、いい匂いといえばいい匂いではあるのだが......
問題その2。スーパーからラーメンの麺が消滅したことだ。後にこれはラーメンショックと呼ばれることになる。豚骨スープが出ると聞いた富豪たちがこぞって麺を買い始めたのである。
問題その3。豚骨スープは美味しい。世界を救えるレベルではある。ただ、毎日食べられるものではない。
きっとうまくいき、全人類が泣きわめき踊り狂い喜びのたうちまわると思われた蛇ラーメン法は3日である意味その通りとなったのだ。
藪から蛇が出たようだ。ちなみに、これは全く意味として成り立っていない。蛇と掛けたかっただけである。
蛇、蛇、蛇。気づいたらラーメンが蛇に見えてきた気がする。
その状態を打ち破るべく、米農家が立ち上がった。俗に言うラーメンライス革命だ。
豚骨スープは何にでも合う、そのことが証明された結果生まれた究極のラーメンライスが、ラーメンチャーハンである。
調理手段は簡単。豚骨スープかけて卵入れて焼くだけ。
本当に美味しいから試してほしい。
このラーメンライス革命が世界、おっと規模がでかいぞ、日本を救う手段となり得ると思われた。ただ、そうもいかなかった。
根本的な問題、味変が人類には必要とされた。しかし、味変をするには濃すぎるのである。
豚骨スープは全てを飲み込むブラックホールのような存在である。
白湯とは違う。豚骨スープに辛みそを入れてもピリ辛豚骨スープだし、砂糖を入れても甘い豚骨スープだし、レモンを入れても酸っぱい豚骨スープ。
豚骨スープが常につきまとう。
ある人は禁忌に手を染めた。
豚骨スープもろ過したら水になるのではと思った。
確かに水はできた。しかし、ろ過装置はあまりにも濃い豚骨の力で壊れた。
そもそも、豚骨スープへの冒涜である。
その頃、1人の勇者が立ち上がった。
彼女はラーメンをこよなく愛し、ラーメンを口に咥えて登校し、学校の弁当をラーメンに、蛇ラーメン法以前からしていた。
彼女はある日ラーメン神から認められた。そして、ラーメンを独占する権利を得た。
その結果として、蛇ラーメン法は終結し、日本に再び平和が訪れた。
ラーメン神に認められた彼女はラーメンを幸せに分配した。
今のラーメン屋は全て分配された幸せなのである。
もし君の家庭で豚骨スープが蛇口から出ても驚かないで欲しい。それは幸せが訪れた証拠なのだから。