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【書籍化】魔王様に溺愛されていますが、私の正体はあなたの天敵【聖女】です!  作者: 星見うさぎ


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23/37

23_そうじゃないと分かっている


 一方、自室ではなく執務室に戻ったルシアンは、時間が経ち夜が更けてもまだじっと考え込んでいた。


「ルシアン陛下? 一体ティールームで何があったのですか?」


 事情を知らないシャルルはそんなルシアンに困惑している。

 結局ルシアンの話したかったことを聞いてもらうことも出来ずに、セリーヌに拒絶されてしまった。

 しかし、セリーヌは知らないことがある。


「僕を拒絶するとき、セリーヌの心は泣いていた。セリーヌに何かがあったのは間違いないんだ」

「拒絶? 心が、ということは魔力の繋がりでそれが本心じゃないと分かっているということですよね?」

「ああ」


 人間であるセリーヌが、魔界で生きて行けるようにするためにルシアンの魔力を馴染ませている。儀式は中断したが、あの時結びの口づけはかわしていた。魔力はゆっくりではあるが徐々に馴染んでいるのだ。


 魔力が他者に馴染むと、そこに繋がりが生まれる。

 嘘や何を考えているかまで分かるわけではない。しかし、繋がった魔力から、強い感情だけはなんとなく感じ取れるようになる。


(セリーヌは僕を拒絶するとき、表情も変わらず迷いもなかった。……だけど、辛くて悲しいと心で泣いていた)


「どうするつもりですか?」

「どうしたらいいんだろうな……本心じゃないことは分かっても、強く拒絶する程の何かがあったことは確かだ。それが分からないことには……」


 セリーヌは本気でルシアンから離れようとしている。それは間違いのない事実だった。


(それだけはダメだ……セリーヌがそばにいてくれる幸せを知った今、彼女のいない時間など耐えられるわけがない)



「ルシアン様っ!!! セリーヌ様に何をしたのっ!?」


 セリーヌについていたメリムが勢いよく執務室へ飛び込んできた。


「メリム……」

「うう、うわーん! セ、セリーヌ様がっ、セリーヌ様が悲しいのなんてメリムやだよ〜!」


(僕だって、セリーヌには何の不安も恐怖もなく僕のそばで笑っていて欲しい)


 ぐすぐすと泣くメリムを、シャルルがそばで支える。


「今日、お花を見た後はセリーヌ様元気だったのに……」


 最初に自分を生贄だと思っていたセリーヌ。その誤解がとけてからは随分心を許してくれていたように思う。

 けれど、ルシアンの知らない何かがまだ彼女の中にあるのだろうか。



 そうして話している中で、最初に異変に気づいたのは魔力感知能力に長けたメリムだった。

 ピクリと肩を揺らし、呆然と顔を上げる。


「ルシアン様……何か……変なものがくる……」


 ついでルシアンとシャルルも同じものを感知する。

 バタバタと走る音が響き、大きくドアを開けて焦った顔を覗かせたフレデリカが叫んだ。


「ルシアン! 人間界とのゲートが開いてる!!」

「何……?」


 ゲートは通常、決められた日にしか開かない。

 人間がゲートの鍵にしている水晶に魔力を注ぎ、こちらが魔力で応えることで繋がるのだ。

 つまり、本来人間が一方的に開けられるものではない。


 ルシアンは三人を連れて急いで謁見の間に向かった。

 いつもゲートが繋がるのはこの場所だ。

 ほんの数ヶ月前、セリーヌが現れたのもまたここである。


 しかし、謁見の間には何の異変も見られない。


「たしかに妙な魔力は感じるのに……ただ、あまりに歪んでいて場所がはっきり分からない。魔力が暴れているのか?」


 無理やりゲートをこじ開けたからだろうか。魔力があちこちに乱れて飛び散ったように歪んでいる。

 そして、強い魔力の唸りを感じるのだ。


「歪んで場所が分からないのはそうだけど、暴れているかどうかは私には分からないわよ! ルシアンにも特定できないなら私とシャルルは無理だわ。メリムは!?」


 城内がどんどん騒がしくなっていく。城につとめる他の魔族たちも異変に気がつき始めたらしい。

 しらみつぶしに探すより特定した方が早いが、そうも言っていられないか?

 そう思っていたが、ルシアンは唐突に気がついた。


(違う……暴れているのはゲートから溢れた魔力ではない……二つある。だから僕には感知できなかったのか! この魔力は──セリーヌ!!)


「セリーヌ様のお部屋っ!」


 ルシアンが身を翻して走り出すのと、メリムが叫ぶのは同時だった。

 ゲートの魔力はセリーヌの部屋から漏れている。

 そして、暴れていると感じた魔力はセリーヌに馴染んだルシアンの魔力だった。


(くそっ、魔王城は安全だからと護衛もいないのは問題だった……!)


 魔王城にはルシアンはもちろん、メリム、シャルル、フレデリカにはほかの魔族たちでは到底太刀打ちできない。

 人間界よりよほど平和なこの場所には護衛騎士を職に持つものはいないのだ。


 転移しようにも、セリーヌの魔力が暴れていて、その彼女と魔力が繋がっているルシアンが今それを実行して正確な位置に移動できるかがわからない。

 最悪セリーヌに負担をかけかねない危険があった。


(せめて、儀式が最後まで終わっていれば……)


 結びの口づけで魔力はなじみ始めているが、完全ではない。儀式にはあとひとつ、ささやかだが重要な行為が残っていた。

 それが終われば馴染んでいる途中でもルシアンとの繋がりは完全なものになるのだ。


 しかし、今更そんなことを言っても仕方ない。


 乱れていて感知できなかった魔力も近づけば近づくほどはっきりしたものになる。


(今までゲートは謁見の間にしか繋がらないと思っていた、僕の甘さだ……!)


「セリーヌ!」


 勢いよくセリーヌの部屋の扉を開ける。


 部屋にいた二人の人物が振り向いた。



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