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これはかなり怪しまれている……。


「お酒を飲み過ぎて気分が悪くなって動けなくなっていた所に、丁度シュワール家の方が通り掛かって助けて頂いて、丁度屋敷が近いからと休ませて貰える事になって、休んでいる間に眠ってしまったみたい」


別に嘘は吐いていない。ただ少しだけ言い回しを変えただけ、という事にしておく。酒を飲み過ぎたのは事実だし、ショックでしゃがみ込んで動けなかったのも事実だ。シュワール家の屋敷が近いのも事実だし、休んで寝てしまったのも事実。よし、これなら誤魔化せる!と思ったのはセシリアだけで、先程からライラに怪訝そうな顔で疑いの眼差しを向けられている。


「そうだったんですね。私はてっきり、シュワール家の御子息と一夜を共にされたのかと思ってしまいました」


ゴホッ、ゴホッ‼︎


ライラの言葉に驚いたセシリアは、飲んでいたお茶が気管に入り咳き込んだ。もしかして、バレている……?


「お嬢様⁉︎大丈夫ですか⁉︎」


「だ、大丈夫よ」


違う意味では全然大丈夫じゃないけどね……。


ライラに真実が知られでもしたら、発狂でもし兼ねない。「うちの大事なお嬢様を穢した責任は、何があろうと取らせます‼︎」なんて言いながらシュワール家の屋敷に乗り込んで行きそうだ。


ライラはセシリアにとって母の様な姉の様な存在だ。セシリアの家族はアンブロワーズ伯爵である父と母、セシリア、弟の四人だが、両親は昔からセシリアには関心がなく、弟のハンスばかりを可愛がっていた。要するに、セシリアは両親から放置されて育ったのだ。なのでそんなセシリアの面倒をみてくれていたのはライラだった。その所為かライラはかなり過保護で口煩い。本物の母親より母親らしいと思う。


「取り敢えず理由は分かりましたが、次からは朝帰りなさらない様にお気をつけ下さい。もしもの時は私が直接迎えに参りますので」


「……はい」





ようやく長い説教が終わったと、息を吐く。ライラは次からは~と言っていたが、流石に次はない。昨夜のアレは謂わば事故と同じだ。ヴァルタルからは帰り際「責任は確り取らせて貰うから心配はいらないよ」と声を掛けられたが、社交辞令以外の何ものでもない。


ヴァルタル・シュワール、彼は社交界では有名人だ。シュワール公爵家令息だからというだけではなく、若くして騎士団の副団長を務めており、眉目秀麗、文武両道と完璧な人物で、貴族の年若い令嬢達からはかなり人気がある。そんな彼に、しがない伯爵家の娘であり地味で、ルーカス曰くつまらない自分は、普通なら彼と親しく話す事は愚か、認識すらされていないだろう。なので三ヶ月前の夜会でセシリアの名前を彼が知っていたのは少し驚いた。かなり前に一度だけ挨拶をした様な記憶は薄らあるが、それ以外接点はなかった。


セシリアは行儀が悪いがテーブルに突っ伏した。ライラがいたら無論怒られるが、今さっき部屋を出て行った。セシリアの世話以外にも彼女はやる事があるので、暫くは戻らないだろう。


「何だか、疲れた……」


まあ色々と考えた所で、記憶はないし思いも出せないし、済んでしまった事はどうにも出来ないので仕方がない。ただ生娘でなくなったと両親に知られる訳にはいかない。婚約破棄なんて比にならないくらい怒られるに違いない。興味がないならほっておいてくれればいいのに、こんな時だけは確り口を出してくる。因みにセシリアを心配している訳ではない。ただ単にアンブロワーズ家の有益の為という理由に過ぎない。


「早く忘れよう……」


それが一番だ。


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