4
セシリアは顔を赤らめたり、青ざめたりと忙しい。今自分の置かれている状況にパニックになっている。
お、落ち着いて……落ち着きなさい、セシリア……。
自分に言い聞かせて、先ずは状況を確認する。今自分は、透けるくらい薄いネグリジェ姿だ。因みにセシリアの物ではない。こんな破廉恥なデザインは持っていない。次に、今自分は見知らぬ部屋のベッドで寝ている。因みに部屋の調度品は一目見ただけで、かなり高価な物だと分かる物ばかりだ。そして最後にこれが一番重要だ。セシリアは先程から見ない様にしていた自分の隣にゆっくりと視線を向けるが、直ぐに背を向けた。
「……」
まだ寝惚けているのかも知れない……そう思い、一度目を伏せ呼吸を整える事数十秒。セシリアは意を決して振り返った。
「……」
夢じゃない!現実だ……。
隣で気持ち良さそうに眠っているのはヴァルタルだった。因みに、服は着ていない。下はシーツに隠され見えないが……確認はしたくない。
どうしてこんな事になっているのか……。
確か昨夜は夜会に行って……ルーカスに婚約破棄された……それで目に入ったワインを無性に飲みたくなって……その後が、記憶がふわふわしていて曖昧だった。中庭に出た様な、そこでまたヴァルタルと出会した様な……。
うん、取り敢えず、逃げよう。……今はそれしかない。
ヴァルタルの事は正直よく分からないが、悪い人ではない気がする。だが相手は公爵令息だ。彼にとってはただの一夜限りの遊びかも知れないが、もしも何かあった時、分が悪くなるのはしがない伯爵家の娘に過ぎないセシリアだ。セシリアはヴァルタルを起こさない様に、出来るだけ静かにベッドから起き上がる。そのままゆっくりと床に足をついた瞬間だった。
「えっ……きゃ‼︎」
腕を掴まれたかと思ったら、勢いよく後ろに引かれた。
「どこ行くの?まだ朝早いんだから、一緒に寝ようよ」
ヴァルタルに背中から抱き締められた。素肌から直に彼の体温が伝わってきて、恥ずかしさに耐えられなくなりセシリアの動きと思考は停止した。
「セシリア、昨夜は可愛かったよ」
「……」
可愛かったって言われましても……全く記憶にございません、なんて言えない……。
「セシリア?」
「わ、私はこれでお暇させて頂きますので、ヴァルタル様はどうぞごゆっくり……」
愛想笑いをしながら逃げようとするが、彼は一向に離してくれない。寧ろ更に抱き締めている腕に力が篭った気がする……。
「そんな冷たい事言わないでよ、昨夜あんなに愛し合った仲なのに」
「あ、愛し合うって……」
「もしかして覚えてないとか、言わないよね?」
「いいえ!そんな、まさか!オホホ……っ‼︎」
その瞬間、頭に激痛が走った。完全に二日酔いだ……。
「セシリア、大丈夫かい」
「だ、大丈夫……です」
本当は全然大丈夫じゃない。頭がかち割れる……。
「ヴァルタル、様……?」
余りの痛さに身体を丸めるセシリアの頭を彼は優しい手つきで撫でてくれた。不思議な事に痛みが和らいだ気がする。
「昨夜飲み過ぎていたからね。少し我慢出来る?今侍女に言って薬を持ってこさせるから、それを飲めば直にに楽になるよ」
結局、頭痛の所為もありセシリアが自邸に帰ったのはその日の昼過ぎだった。




