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あの後、予定通りヴァルタルとセシリアは貴族御用達の店で食事をした。そして帰り際、店の側にある花屋で赤い薔薇を五本買って彼女に贈った。するとセシリアははにかみながら、それを受けとってくれた。少々予定外の事が起きたが、セシリアをデートに誘って良かった。
「へぇ~上手くいって良かったね」
翌日、ヴァルタルは登城しロルフに昨日の出来事を話し礼を言うと彼は一緒に喜んでくれた。
「ただ、広場だけは最悪だったけどな」
「そうかな?寧ろセシリア嬢に良いところ見せられて良かったんじゃない?」
ニヤニヤとしているロルフに、ヴァルタルはハッとする。
「まさか分かっていたんじゃないだろうな」
「最近、広場周辺で柄の悪い連中が追い剥ぎしているって噂になっててさ、衛兵も手を焼いてたみたいだから、一石二鳥かなって思ったんだよ」
まんまとやられた。ロルフは騎士団の仕事としてヴァルタルの雑務もこなしている。
昔から騎士団は国王の護衛に加え戦時など時に前線に立つ役割を担っていたが、今は平和な世の中になり戦などもない。その事から近年は、騎士団も衛兵の真似事みたいな事をやっているのだが、ロルフは街で起きた有事など上がってくる情報を纏めて管理をしている。差し詰めその中から引っ張り出してきた情報だろう。
「半信半疑だったけどまさか本当に当たるとか、強運の持ち主だね」
「全く嬉しくない。それに俺だけなら構わないが、彼女まで巻き込むな。もしも彼女に傷の一つでもついていたら、幾らお前でも赦さなかったからな」
だがロルフに言わるがままにセシリアを連れて行ったのは紛れもない自分だ。ロルフを余り責める事も出来ないと、内心反省をする。
「君が言うと冗談に聞こえないからやめてよね。それより、次はどうするの?大丈夫?」
「余り俺を見縊るなよ。既に次のデートの約束は取り付けてある」
ヴァルタルは得意げに鼻を鳴らし、帰り際の会話を思い出す。
『セシリア、また俺とこうやって会って欲しいんだ。ダメかな』
『私などで、宜しければ……』
頬を染めながら上目遣いで彼女は頷いてくれた。やはり、可愛過ぎる……と込み上げて来るものを抑えるのがそれはもう大変だった。
このまま彼女と距離を縮めていければ、順番は違えたが最初の失態も意味を成すだろう。
「ヴァルタル、顔がダラシないよ」




