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気分が悪い……。
あの夜会の日から数日が経つが、婚約者のルーカスと親友のベアトリスがイチャイチャしていた光景が頭から離れない。本当なら今日はルーカスとお茶の約束をしていたが、とてもじゃないが行く気分にはなれなかった。なので侍女のライラに断る様にと言伝を頼んだ。
セシリアは、何度目か分からないため息を吐き本を閉じた。一時間くらい経つが、一ページも進んでいない。
悩んでも、解決はしない。そんな事は分かっている。
ルーカスとは政略的な関係であり、恋愛感情はない。だがだからと言って浮気を容認は出来ない。
それに一番の問題は相手だ。せめて浮気相手が、自分の全く関係のない見知らぬ女性だったなら、此処までショックは受けなかったと思う。ベアトリスは、セシリアにとって大切な友人だ。その友人と浮気をするなんて……。
こういう時、やはり貴族令嬢ならば毅然とした態度で、知らないフリをしてやり過ごすのが淑女として当然なのだろうか……。
それにルーカスはセシリアに対して何時も紳士的に優しく接してくれるし、ベアトリスも何か困り事があると、親身になって話を聞いてくれる。そんな二人が自分を裏切るなんて未だに信じられない。
でも人間なんだし一度や二度くらい過ちを犯すものよね……そう思い、今回の事は忘れると決めた。
それから三か月の間、何度もルーカスやベアトリスとお茶をしたり、話す機会もあったが二人共に普段と変わった言動は見られなかった。もしかして、あれは夢でも見ていたんじゃないかと思えてしまうくらいだ。
そして今夜は、ルーカスと一緒に夜会に参加する事になっている。何時もならルーカスがセシリアの屋敷まで迎えに来てくれるのだが、準備を終え約束の時間になっても彼は来ない。
何かあったのかしら……。
セシリアが、ルーカスが事故にでも遭ったのではないかと心配していた時だった。待ち侘びたルーカスではなく、代わりに彼の侍従が屋敷を訪ねて来て「先に行っている」と言伝を受けた。ルーカスと婚約してから、初めての事だった。戸惑いながらもセシリアは一人馬車に乗り込み夜会へと向かうしかなかった。




