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見るからに悪人だと分かる男達に道を塞がれ、セシリアは萎縮してしまう。すると直ぐにヴァルタルが背に隠す様にして庇ってくれた。彼は臆した様子は微塵もなく、男達と淡々と遣り取りをする。そんな時だった。


「なら、やってみるといい。お前達みたいな低俗な人間など恐れるに足りない」


ヴァルタルはセシリアを端にやると、護身用の短剣を抜いた。それは一瞬だった。向かって来た両端の男二人のナイフを短剣で弾き飛ばし、一人には腹に足蹴りを食らわせ、もう一人は胸ぐらを掴みそのまま地面に叩きつけた。残りの下っ端の男達数人もいとも簡単に倒してしまう。


「くそったれ‼︎」


リーダーと思われる男は、悔しそうな顔でそう叫ぶとセシリアに向かって来た。恐怖に声すら出なくなりただ立ち尽くしていると、ヴァルタルは表情一つ変える事なく、地面に転がっている男の落としたナイフを拾い上げリーダーの男にそれを投げつけた。


「ア’’ッ‼︎」


ナイフは男の脹脛に見事命中し刺さった。男は痛みに声を上げ、足を押さえながら悶え地面に転がる。彼はゆっくりと男に近付くと、未だ悶えている男の首元に短剣を突きつけた。突き刺さる様な鋭い冷たい瞳を見て、彼が正気じゃないと感じた。


「ヴァルタル様‼︎」


瞬間ヴァルタルは、セシリアの呼ぶ声に反応して弾かれた様に顔を上げた。こちらを見て短剣を下ろす。その姿に胸を撫で下ろした。





「すまなかった……」


あの後、誰かが衛兵を呼んでくれた様で男達は取り押さえられて連れて行かれた。セシリアとヴァルタルは無事馬車に戻って来たが、彼はずっと項垂れたままだ。


「どうしてヴァルタル様が謝られるんですか。助けて頂いて、感謝こそしても謝罪される覚えはありません」


「俺が何の考えも無しにあんな場所に連れ出した所為で、君に怖い思いをさせてしまった。それに、ついカッとなってしまった。適当に遇らって拘束するつもりだったが、君に危害を加えようとしたのを見て、自制が利かなくなり、危うく息の根を止める所だったよ」


ヴァルタルは、苦笑しながらサラリと恐ろしい事を言ってのけた。息の根を止める……セシリアはその言葉に顔が引き攣る。

それにしても凄かった。やはり若くして騎士団副団長に任命されるだけはあり、強い。平常時の温厚で優しい彼とは別人の様に顔付きすら変わり、一瞬にして男達を倒した。赤子の手を捻るという言葉があるが、それくらい力の差は歴然だった。

見ていて彼が少し怖いと感じた……だがその反面、格好いいとも思った。


「確かに驚きましたけど、ヴァルタル様がいてくれたので平気です。守ってくれて、嬉しかったです……とても格好、よかったです」


未だ心臓が高鳴るのを感じながら、恥ずかしくて彼の顔を見られず俯いてしまう。


「セシリア……」


「は、はい」


何を言われるのだろうかと、少しだけ期待をしてしまう。だが、彼からは意外な言葉をかけられた。


「お腹、空いていないか」



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