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ヴァルタルとセシリアは、馬車を降り少し歩くと街の広場にある噴水へと辿り着いた。ヴァルタルは「逸れたら大変だ」と白々しい理由を付けてセシリアとちゃっかり手を繋いだ。瞬間嫌がられるかも知れないと頭に過ぎるが、杞憂に終わった。恥ずかしそうにして俯き加減になっている愛らしい彼女を見て、先程までの後悔や不安は吹っ飛んでいく。


「ヴァルタル様」


「どうした」


「何だか凄く視線を感じます……」


彼女の言葉にヴァルタルは辺りを見渡す。多くの人々で賑わっている広場の中、自分と彼女は異質な存在に思えた。多分周りからも同じ様に思われているので、視線を集めているのだろう。


「君が余りに美しいから、皆見ているんだよ」


冗談半分、本気半分と言ったところだ。

ロルフから広場にある噴水は有名なデートスポットだと聞かされた。確かに周りには恋人同士が多い様に思えるが、恰好からして平民だという事が分かる。ヴァルタル達の様に貴族は誰一人としていない。それは目立つに決まっている。


「今来たばかりだが、もう馬車に戻ろうか」


ロルフの提案した通り来てしまったが、やめておいた方が良かったと後悔した。ヴァルタルはセシリアの手を引きながら足早にその場から離れる。軽率だった。たまにヴァルタルは街にぶらりと来る事はあったが、女性を連れだって来た事はなかった。


どう見ても悪目立ちしている。殆どの人間は善人ばかりだが、悪人もいる。こんな昼間にこんな大勢の人間のいる場所で何かしてくる人間はいないとは思うが、もしもと言う事も考えられる。そんな事を考えながら馬車に向かっていた時だった。


「俺達に、何か用かな」


如何にも悪そうな男達数人に道を塞がれた。周囲の人間達は関わりたくないのか、あからさまに顔を背けながら視界に入らない様にしている。

ヴァルタルはセシリアを自分の背に隠し、男達の視界から遮る。


「用って程じゃないんだけどよ」


「そうそう」


「ちょっとそこまで、俺達に付き合って貰いたいだけだ」


真ん中にいる男は懐からナイフを取り出しちらつかせ、ニタニタと嫌な笑みを浮かべている。


「大人しくついてくれば、何もしないからさ。まあアンタの後ろの女には、少し遊んで貰うかも知れないがな。なんなら金目の物とその女置いて、アンタは先に帰っても構わないぞ」


男達の陳腐な台詞にセシリアは「ヴァルタル様……」そう不安そうに呟きながらヴァルタルに身体を寄せて来る。


可愛過ぎる……。


思わず頬が緩みそうになるのを、寸前の所で堪え「君は心配しなくていい」と声を掛けた。


「おい!聞いてるのか⁉︎」


何も答えないヴァルタルに腹を立てた男は、急に大きな声を上げる。かなり興奮している様だ。幾らなんでも短気すぎるだろうと呆れる。


「聞いているよ、だが断る。お前達にくれてやる物など何もない。無論彼女を置いて立ち去るなど、論外だ」


「女の前だからって粋がってるんじゃねぇよ‼︎」


「お前もこの間の奴等と同じ様な目に遭わせてやろうか」


この間……物騒な言葉にヴァルタルは眉根を寄せた。聞かなくても大凡察しがつく。普段からこうして裕福そうな人間を狙って金品を巻き上げているのだろう。


「なら、やってみるといい。お前達みたいな低俗な人間など恐れるに足りない」


ヴァルタルはセシリアを端にやると、護身用の短剣を抜いた。



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