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再び馬車に揺られながら、二人きりになるが互いに黙り込む。彼女は窓の流れる景色を眺めており、ヴァルタルは手足を組み目を伏せていた。もどかしくて仕方がない。ずっと想い続けていた彼女がこんなにも近くにいるのに、会話すら上手く出来ないなど情け無い……。


完全にデートは失敗だ。まだデートに誘うには早かった……いや、違う、そうじゃない。やはり順番を間違えたかも知れないと、後悔してくる。

あの夜、彼女を誰かに奪われてしまうのではないかと焦燥感に駆られ、彼女の身体を奪った。既成事実さえ作ってしまえば、そのまま彼女を手に入れられる……そんな風に考えた。本当に短絡的で莫迦だ。今更ながらにあの時自分を、殴りつけてでも止めたいくらいだ。


ヴァルタルは唇を噛む。彼女はこんな自分の事をどう思っているのだろう。デートの誘いは受けてくれたが、優しい彼女は自分に気を遣い、断れなかっただけかも知れない。それとも身体の関係になってしまった諦めから、ヴァルタルを選ぼうとしている可能性もある。どちらにしても、彼女からの愛が自分へ向く事はこれから先もないだろう。悲しいし、苦しくなるがそれでもいい、彼女が手に入るなら……まだそんな風に思ってしまう自分は愚か者だ。







◆◆◆



馬車の中は静まり返り、馬車がガタガタと揺れる音と馬が駆ける音だけが聞こえている。

セシリアは窓の外を眺めながらヴァルタルを盗み見た。先程から彼はずっと目を伏せたまま、黙り込んでいる。やはり自分なんかとデートでは愉しくないのかも知れない。しかも弟達が妨害してきた所為で、きっと気分を害したに違いない。馬車に乗り込む前に、謝罪をし「気にしていないよ」と言ってくれたが、彼の様子からして本心では怒っているのだろう。


「……」


やはり断るべきだったと、今更ながらに後悔する。彼からデートに誘って貰えて、つい浮かれて承諾してしまった。彼はセシリアの事を好きだと言ってくれたが、嘘な事は分かっている。真面目な彼は、生娘であったセシリアに手を出してしまった事に責任を感じている。だからこんな風に気を遣いデートに誘い、セシリアを必死に好きになろうと努力をしてくれている。しかも結婚をするとまで言ってくれている……。だが悪いのは自分だ、彼じゃない。酒が弱いと分かりながら自ら呑んで、自分の意思で彼の手を取ったのだ。彼に責任はない。


「ヴァルタル様」


「どうした」


セシリアが話し掛けると、彼は伏せていた目を開ける。銀髪の美しい髪が揺れ、吸い込まれそうな蒼眼と目が合い釘付けになってしまう。こんなに素敵な方と一夜でも過ごせただけで、一生の思い出だ。更にこうしてデートまで出来た。しがない伯爵家の娘には、もう十分過ぎるだろう。


「私の事でしたら、本当に大丈夫ですから。ヴァルタル様が、気に病まれて責任を感じる必要はどこにもありません。あの時は、お酒を飲み過ぎてしまった私が全ての元凶です。寧ろヴァルタル様は巻き込まれた被害者なんです!本来ならこんな風にして貰える立場ではないんです……。それに嫁ぎ先も、自分で頑張って探しますし、心配には及びません!ですから、もう私の事は、お忘れ下さい……っ⁉︎」


確りと言えた、そう思った瞬間何故か彼の腕の中にいた。セシリアはヴァルタルに腕を引かれ強く抱き締められたのだ。驚いて暫く何が起きたのか理解出来なかった。


「あ、あのっ……」


「俺は、全然大丈夫なんかじゃないっ。やっと君の側でこうして触れられるのに、忘れるなんて出来る筈ないだろう⁉︎」


苦しそうに顔を歪めるヴァルタルに、セシリアは戸惑う。どうして彼がそんな事を言うのか、何故そんな顔をするのか分からない……。


「君は思い違いをしているんだ。そうじゃない……違うんだ」


「ヴァルタル、様?」


自分を抱き締めている彼の腕に更に力が加わり、耳元に熱い息がかかる。思わずセシリアは身動ぎ、身体を震わす。ヴァルタルは構わずに、そのまま耳元で話し出した。




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