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ヴァルタルとデートの約束をした日、セシリアは朝から身支度に追われていた。前日に決めておいたドレスを着るが、鏡と睨めっこした挙句脱いだ。
「お似合いだと思いますが……」
「やっぱり、違うのにするわ」
その後も、着ては脱ぎを繰り返し中々決まらない。ルーカスとデートをする時は、こんな風にはならなかった。ライラが「こちらは如何ですか」そう言って選んでくれたドレスを着る事も少なくなかった。それなのに、今日の自分はらしくない。
「ライラ、私変じゃない?」
通常の倍くらいの時間をかけてようやく準備が終わったが、それでも変な所がないかと気になって仕方がない。鏡の前でクルクルと回りながら、全身を確認する。
「とても素敵ですよ。きっとヴァルタル様、お嬢様の美しさに骨抜きにされてしまう事間違いなしです」
「骨抜きって……」
穏やかに笑みを浮かべるライラだが昨夜まで「私もご一緒致します!」とか「絶対に、またうちの大事なお嬢様に手を出すつもりです!」などかなり煩く言っていた。何とか宥めて諦めて貰ったが、多分納得はしていなそうだ。
「デートするんだって?」
そろそろヴァルタルが来る時間だと時計を見た時だった。また勝手に弟のハンスとレナードが部屋に入って来た。
「関係ないでしょう。大体、どうして知って……」
セシリアはそこまで言ってハッとなりライラを見る。すると彼女はあからさまに顔を背けて、明らかに様子がおかしい。その様子から、ライラがこの二人に告げ口をした事が直ぐに分かった。普段なら絶対にあり得ないが、手段は選ばないと言った所だろうか。
そしてレナードがニヤリと意地の悪い笑みを浮かべて、最悪の一言を言った。
「面白そうだし、ついて行ってやるよ」
◆◆◆
ヴァルタルが緊張しながら、約束の時間にアンブロワーズ家の屋敷にセシリアを迎えに行くと、何故か彼女だけではなく、先日同様あの邪魔者達が一緒に待っていた。
「申し訳ありません。あの、この二人の事はお気になさらないで下さい」
彼女は心底困り果てた様にして謝罪をしてきた。無論そんな彼女を責める事など出来ないし、そもそも彼女は悪くない。ただ気にしないでくれと言われても、それは無理がある。
「まさか、君達もついて来るつもりではないだろうな」
セシリアを先に馬車に乗せ、ヴァルタルは振り返り邪魔者達を睨み付ける。
「まさか、そんな無粋な真似はしませんよ」
「そうそう。ただ、出かけ先が偶然一緒になるかも知れないだけで」
その言葉通り彼等は、ヴァルタルとセシリアの乗った馬車を、別の馬車に乗り追いかけて来た。




